中国伝統医学を中心とする東洋医学では、季節を5つに分け、春・夏・土用・秋・冬の5つの時期にするべき養生があるとされます。
中でも春は冬の間に養生して溜めたエネルギーを発散する時期と考えられており、自然界でも植物の芽吹きや、動物の活発化などの動きが出てきます。
日本のように春を1年のサイクルの始まりとする場合は、人間の世界でも卒業、入学、就職、異動、引っ越しetc・・・様々なイベントが起こりますよね。
また、春は五行のうち「木気」をつかさどり、肝臓は春に癒すべき部位とされています。
春にかかりやすい病気として花粉症などによるアレルギーや、自律神経の不調による風邪など挙げられますが、実はいずれも肝臓と関わりがあります。
今回は、これらのストレスから肝臓を守り、春の不調を防ぐのに役立つハーブをいくつか紹介します。
春と肝臓のケアはどんなかかわりがある?
春はデトックスに最適な季節
冬は寒さで体の働きが悪くなりがちなため、体に老廃物や毒素が溜まりやすくなります。
そのため、東洋医学では春に冬に蓄積した不要物を体内から排出し、デトックスを行うことが重要視されています。
ここで「春」と毒素排出の役割を持つ「肝臓」が結びつけられるわけですね。
春は肝臓の機能も亢進するそうなので、負担がかかりすぎないよう適度に休ませケアしてあげる必要があるのです。
また、東洋医学では肝臓は自律神経と結びつけられており、肝臓のケアを行うことで自律神経の不調により起こる諸症状(不眠、不安、緊張、だるさ、頭痛など)も改善されるといいます。
肝臓への負担を減らし、春に起きがちなトラブルの予防を目指したいですね。
肝臓の働き
肝臓は人の身体の中で最も大きな臓器で、体に必要な栄養を保存したり胆汁を作ったり数にして500種類以上もの働きがあるといわれます。
また、肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、疾患にかかっても限界が来るまで表立った症状が現れない臓器としても良く知られていますね。
肝臓には主に以下のような働きがあり、体の健康維持に欠かせません。
- 脂肪を分解する
- 食べ物などに含まれる毒素を中和する
- 消化に必要な胆汁を分泌する
- 食べ物を栄養素に変換する
今回のテーマで重要なのは「食べ物などに含まれる毒素を中和する働き」です。
肝臓は食物中に含まれる毒性の低い物質につくり変え、尿や胆汁中に排泄して最終的には体外へ出るように取り計らいます。
肝臓のケアに役立つハーブ
アーティチョーク
肝臓の働きを活発化させ、胆汁の分泌を促すのにも活躍するハーブです。
フレッシュのアーティチョークは日本であまり見かけないですが、欧米では野菜として食用されることもあるそう。
苦味質といわれる苦み成分が肝臓の働きを活性化させるため、薬用酒や食前酒などの材料として使われることもあります。
アーティチョークのハーブティーは苦いお茶として有名で、シングルではとても飲めないのため、基本的には他のお茶とのブレンドが必要です。
- キク科アレルギーがある場合は注意してください。
- 胆石、胆道閉鎖などの胆のう障害や胆管障害がある場合は使用不可。
ターメリック
ターメリックは、和名でウコンのことを言います。
こちらも肝臓に薬効があるハーブとして有名で、特にカレーの色付けにも使われる黄色い色素が出ることでも知られていますね。この色素・クルクミンという成分が肝臓に働きかけて胆汁の分泌を促します。
いつものハーブティーにターメリックのパウダーを加えるほか、ご飯を炊くときに混ぜてターメリックライスを作ってみるのもアリ。あまり味や香りがないので、風味への影響はほとんど気になりません。
沖縄ではウコン茶というお茶も飲まれているので、興味があれば体験してみるとよいかもしれません。
ダンディライオン
ダンディライオンという名はフランス語で「ライオンの牙」という意味ですが、日本はセイヨウタンポポを指します。
ダンディライオンの根にも苦味質が含まれており、利胆作用や強肝作用を持ちます。根部をローストした後に作ったお茶は、コーヒーのような香りがするため「タンポポコーヒー」とも。
カフェインが含まれないので、コーヒー代わりに飲んでみるのも良いでしょう。
また、食物繊維のイヌリンが含まれるので、お通じを良くする働きもあります。デトックスに活躍してくれるハーブといえますね。
- 胆道閉塞、胆嚢炎、腸閉塞の症状がある場は使用を避けてください。
- キク科アレルギーのある人は注意。
ミルクシスル
ミルクシスルは肝臓の働きを強化するだけでなく、肝硬変や肝炎などの予防にも効果があるとされます。
ミルクシスルに含まれる成分シリマリンという成分が、傷ついた肝細胞を保護・再生して肝細胞を守ります。
肝機能にストレスがかかると疲労感やだるさ、消化不良といった症状が現れやすくなるのでこれらの症状を防ぐのにも役立ってくれるでしょう。強肝作用により毒素の排出を活発化させるので、デトックス効果も〇。
その他、アレルギーを抑制する働きもあるといわれるので、花粉症など春のアレルギーが気になる人も活用しやすいと思います。
- キク科アレルギーの人は注意。
- 2型糖尿病の人の血糖値を下げる可能性があります。
ゴツコーラ
抗酸化作用や血行促進作用で「若返りのハーブ」と呼ばれます。
基本的には上記の働きが有名ですが、肝臓を亢進させる働きもあるため、揚げ物を食べた後やお酒を飲んだ後などにハーブティーで摂取するのも良いと思います。
ゴツコーラはリラックス効果により、神経の興奮を抑えて気持ちを落ち着かせる作用も持ち合わせるので、不眠や緊張、イライラ状態に陥ったときにもおすすめです。
ハーブティーはあまりクセもなく飲みやすいので、他の強肝ハーブと組み合わせても良さそうですね。
ワイルドストロベリー
園芸用としても人気のワイルドストロベリーもハーブのひとつ。葉の部分がハーブとして扱われます。
主に炎症を鎮める作用が知られていますが、肝機能を活発化させる働きもあるとされ、飲みすぎや肝胆系の不調にも活用できます。
胃の炎症による痛みを鎮める作用もあるので、肝臓と同時に胃の不調も気になる時に取り入れてみると良いでしょう。
草木の素朴な味わいはハーブティーにも取り入れやすいので、入手する機会があったら使ってみてください。
まとめ
特にアーティチョークやミルクシスルは、肝臓ケアで良く取り上げられるハーブです。独特の苦みがあるのですが、「良薬口に苦し」でちょっと我慢して飲んでみましょう。
ハーブティー以外では、肝臓の働きを助ける旬の食材(キャベツ、枝豆、アスパラガス)などを食べて肝臓をサポートする方法もあります。
「肝」=「怒り」の感情!肝臓が悪くなるとイライラしがち?
東洋医学の五行思想では「肝」は怒りの感情と結びつけられているため、肝臓が悪くなるとイライラしやすくなるといいます。初めに書いた通り、自律神経の乱れと関係があるわけですね。
春先に感情がピリついていたら、肝臓にストレスがかかっているかもしれません。油の多い食事などは控えめにした方がよさそうです。
よく知られているハーブはもともと西洋由来の種類が多いので、季節ごとの養生方法に興味のある人は、東洋医学や薬膳なども学んでみるとよいと思います。