ダンディライオンの特徴・形状
- セイヨウタンポポのことで、根の部分がハーブになる
- 肝臓を強化し、デトックス効果がある
- 「タンポポコーヒー」がノンカフェインの飲料として親しまれている
ダンディライオンはキク科タンポポ属の多年草で、日本では「セイヨウタンポポ」の名で知られる植物です。
原産地はヨーロッパですが日本にも帰化しており、繁殖力が強いため環境省指定要注意外来生物に指定されているのだそう。
あまり薬草というイメージはないかもしれませんが、根の部分に様々な薬効が含まれています。
植物的な特徴
草丈は10~45cmで、地中深くまで伸びる根茎から、長さ8~30cmの葉が波状に広がります。葉は鋸歯状(ギザギザ)や羽状形で、生え際から緩やかに広がり先端は尖っています。また、この葉や茎を傷つけると白い乳液が出てきます。
花は黄色いロゼット型で、この頭花を構成する小花はすべて舌状花。
花期は決まっておらず、4~9月頃に、葉腋(葉の付け根)から生えてきた花茎の先端に花が咲きます。花が終わると白い綿毛の付いた種子をつけ、風と一緒に飛んでいきます。
セイヨウタンポポは開花時に花弁の下を覆う、緑色の総苞片が外側に反り返るのが特徴です。
効果・効能
ダンディライオンは世界各国で自然薬(ナチュラルメディスン)と呼ばれ、様々な薬効がありますが、肝臓の働きを強化する強肝作用や、利胆作用、むくみを解消する利尿作用に優れており、根の部分に多くの有効成分が含まれています。
胃の不調を改善し、肝臓の働きを良くする
苦味質が含まれるため、胃液や胆汁を分泌して胃・肝臓の働きを良くする効果があります。そのため、消化不良や胃もたれ、アルコールの摂りすぎや肝臓の不調に役立ちます。
デトックス効果
葉にはカリウムが含まれるため利尿作用があり、老廃物のデトックスに活用できます。さらに水溶性の食物繊維イヌリンによる緩下作用があるため、便秘で悩んでいるときにも良いとされます。
その他の働き
そのほか、催乳作用があり母乳の出を良くする働きや、発汗作用による解熱などの効果が認められています。
近年の研究では、酪酸などの成分が腸のバリア機能を向上させ、アレルギーやリウマチ、糖尿病を招くリーキーガットシンドローム (腸粘膜浸漏症候群 )改善に役立つというデータが出ています。
肝胆系の不調、便秘、消化不良、リウマチなど
主な作用
- 強肝作用
- 利胆作用
- 緩下作用
- 利尿作用
- 浄血作用
- 催乳作用
禁忌・副作用
- キク科アレルギーの人、妊婦の方は注意が必要です。
- 血圧を下げる効果があるため、低血圧の人は注意が必要です。薬剤を使用している場合は医師に相談してください。
- 胆道閉塞、胆嚢炎、腸閉塞の症状がある場は使用を避けます。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より
ダンディライオンの主な使い方
- 全草
ダンディライオンは主に料理、ハーブティーに使用されています。
料理
ダンディライオンは栄養素が豊富で、カリウム・ 鉄・カロテンなどのミネラル、ビタミンA・B・C・Dなどのビタミン類、テルペノイドなど多様な成分を含みます。食用としては主に花や若葉を使用し、サラダやパスタ、お浸しに使うことができます。
ハーブティー(タンポポコーヒー)
秋に大きくなった根を採集して良く洗い、刻んで乾燥させた後、軽くローストして淹れたティーは、コーヒーのような味がするため「タンポポコーヒー」と呼ばれます。
ノンカフェインのヘルシーコーヒーとして飲用され、コーヒーの代わりにして飲んだり、デトックスに用いると良いでしょう。利尿作用があるため、夜寝る前は飲用を控えます。
薬用
中国では、ダンディライオンの根を乾燥させたものを「蒲公英根」、乾燥させた葉を「蒲公英」と呼び、生薬として苦味健胃剤や利胆、緩下、催乳に利用します。西洋ハーブとしての利用法とほぼ同じですが、こちらでは全草を使います。
その他
葉から出る乳液はイボやウオノメ、タコなどに効果があるといわれます。草木染の染料に活用することができ、布を染めると全草は黄色~黄緑色に、根は深紅色になります。
味・香り
土や草のような香りに、やや甘み・苦みが感じられる。
ダンディライオンの基本情報
学名 | Taraxacum officinale |
英名 | Dandelion |
和名・別名 | セイヨウタンポポ(西洋蒲公英)、ダンデリオン |
科名 | キク科タンポポ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | ヨーロッパ |
使用部位 | 全草 |
主要成分 | フィトステロール(タラキサステロール)、苦味質(タラキサシン)、フェノール酸(カフェ酸)、ミネラル(カリウム、カルシウム、鉄)、トリテルペン、チコリ酸、シナビン酸、ビタミンB、C、カロテノイド、フラボノイド、タンニン、イヌリン、サポニン |
作用 | 強肝、利胆、緩下、利尿、浄血、催乳 |
適応 | 肝胆系の不調、便秘、消化不良、リウマチなど |
語源・由来
属名のTaraxacumはアラビア語のtharakhcakom「苦い草」やギリシャ語のtaraxoxに由来し、種小名のofficinaleは「薬用の」という意味があります。
英名のダンディライオン(Dandelion)は、葉の形が「ライオンの歯(ラテン語・フランス語)」に見えるためそう呼ばれるようになりました。
歴史・エピソード他
5000年以上の歴史を持ち、聖典『ヴェーダ』を中心とするインドのアーユルヴェーダ医学や、10世紀に確立したアラビアのユナニ医学で、ダンディライオンは肝臓や胆のうの不調、リウマチに用いられてきました。
ダンディライオンが初めて薬として記述されたのは、10世紀~11世紀ごろのアラビアの書物とされています。
ヨーロッパでは、古代ギリシャ時代にまだ知られておらず、民族移動の際に中央アジアから持ち込まれたと考えられています。ヨーロッパや中東では食用されており、苦味野菜のサラダなどに調理されていました。
ヨーロッパの医学者がその優れた効能を認めるようになったのは16世紀頃で、17世紀のハーバリストであるニコラス・カルペパーは「肝臓・胆のう・脾臓の閉塞と、黄疸や心気症に効果がある。年齢問わず尿道を開く。」と述べています。また、北米の先住民イロコイ族は腎臓病やむくみ、皮膚病にダンディライオンを利用したそうです。
フランスでは「ダンドリオン(dent de lion)」のほか、「ピサンリ(pissenlit)」とも呼ばれます。ピサンリには「寝小便」という意味があり、ダンディライオンの利尿作用が由来となっています。また、ヨーロッパでは「おねしょのハーブ」といわれます。
日本に伝わったのは明治時代で、札幌農学校の教師ブルックスが野菜用に、アメリカから取り寄せて栽培したのが始まりとされています。