キダチアロエの特徴・形状
- 苦味があり、薬として活躍するアロエの一種
- 肌の炎症や便秘を解消させる働きがある
- 紀元前から薬用や儀式に使われていた
キダチアロエはツルボラン亜科アロエ属の多年草で、茎や葉の内部にゼリー質を含む多肉植物です。
原産地は南アフリカやマダガスカルで、日本では九州、瀬戸内海、伊豆、千葉などの温暖な太平洋側地域で自生しています。
ハーブとして利用するのは主に葉肉やゼリー質で、アロエ・ベラに比べると苦味が強く、美容や薬用に役立てられるため「医者いらず」とも呼ばれます。
植物の特徴
草丈約1mから2mほどに育つ低木~高木で、木立アロエと呼ばれるように円柱状の茎が高く伸びます。近縁種のアロエ・ベラよりもやや小さい品種ですが、原生地では3~4mを超えることも。
葉は肉厚で先が尖り、葉の縁には鋸歯(ギザギザ)またはトゲがあります。葉は通常放射状に生えますが、扇状であったりと生育状況によってやや異なります。
12月〜2月頃になると、管状の花被(花びらとがく)に、総状花序(茎の周りに円柱形に花が咲く)の花が開花。キダチアロエの花は赤~オレンジ・黄色で、株の中心かつ高い場所に咲くという特徴があります。
効果・効能
キダチアロエは内服では便秘、胃潰瘍、糖尿病の予防などに用いられ、外用として火傷、日焼け、乾燥肌、水虫などの肌の炎症に効果があるとされます。
便秘の改善や胃の不調に活用される
アロエ特有の成分には強い苦味成分である「アロイン(バルバロイン)」や「アロエエモジン」があり、アロインは大腸を刺激して排便を促すため、緩下剤としても利用されます。一方、アロエエモジンには胃の粘膜を保護し、胃酸の分泌を増やして胃腸の調子を整える作用があります。
アロエのゼリー質にはペクチンなどの多糖類が含まれ、こちらも便秘の改善に役立ちます。さらにコレステロール値の上昇を抑えるため、動脈硬化の予防にも効果があるとされています。
ケガや肌の炎症に用いられる
また、「サルチル酸」が含まれており、葉の中にある透明なゼリー状の部分を患部に塗ることで、抗炎症作用や創傷治癒作用などの薬効がもたらされます。
また、同時に保湿作用を持つため、患部の修復と共に皮膚の保護をすることでも知られます。
その他の働き
それ以外ではアロエシンによる殺菌作用があるほか、インスリンの分泌を促して血糖値を下げる血糖降下作用などが知られています。
消化不良、便秘、風邪予防、日焼け、乾燥肌、水虫、切り傷など
主な作用
- 健胃作用
- 緩下作用
- 殺菌・抗菌作用
- 保湿作用
- 収れん作用
- 消炎作用
- 創傷治癒作用
禁忌・副作用
- 妊娠中、授乳中、子供は使用を避けます。
- 長期・多量摂取はしないようにしてください。
安全性・相互作用
安全性 | クラスA…相互作用が予測されない |
相互作用 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
キダチアロエの主な使い方
- 葉
キダチアロエは主に料理、美容に使用されています。
料理
キダチアロエはアロエ・ベラのようにヨーグルトに入れたり、葉のゼリー質を刺身のようにして食べることができます。
サラダや薬味、てんぷらなどにすることもできますが、苦味が強いため、甘みを加えると食べやすくなります。スムージーなどに入れてゼリー状にするのもおすすめです。
美容・その他
しぼり汁などを利用すれば、化粧水などの手作り化粧品に利用でき、保湿や美白、アンチエイジング効果が期待できます。
アロエの成分をアルコールで抽出すればチンキ剤として利用でき、切り傷や肌の炎症などに外用に使えます。生のアロエを外用で使用する場合は、熱湯をかけて消毒するなど雑菌が入らないように洗浄してから利用します。
味・香り
アロエ自体にあまり香りはなく、味もほとんどしない。ティーにするとやや青臭さが感じられる。
キダチアロエの基本情報
学名 | Aloe arborescens |
英名 | Krantz aloe |
和名・別名 | キダチロカイ(木立蘆薈) |
科名 | ツルボラン亜科アロエ属 |
分類 | 低木および高木となる多肉植物 |
原産地 | 南アフリカ、マダガスカル |
使用部位 | 葉 |
主要成分 | バルバロイン、アロエエモジン、アロイノシドA、B、アロエシン、ペクチンなど |
作用 | 健胃、緩下、抗菌、殺菌、抗腫瘍、抗ウイルス、消炎、保湿、血糖値降下、保湿、収れん、創傷治癒など |
適応 | 消化不良、便秘、風邪予防、日焼け、乾燥肌、水虫、切り傷など |
語源・由来
属名のAloeは古代アラビア語のalloeh「苦みのある」に由来し、 種小名のarborescensは「亜高木の、小樹木状の」という意味があります。アラビア語でアロエは「ロエ」と呼ばれたため、中国では漢字を音写した「蘆薈」と書き、日本では音読みして「ロカイ」と呼びます。
歴史・エピソード他
アロエ利用の歴史は古く、紀元前3世紀頃のインドやバビロニアで薬草として使われるだけでなく、栽培されて宗教儀式の薫香にも使われていました。古代エジプトの医学書『エーゲルス・パピルス』には万能薬としてアロエの名が記されています。また、高位の人物を埋葬する際に、ミルラと混ぜて防腐処理に使用されました。
有名な話としては、アレクサンダー大王の師である哲学者アリストテレスが、アロエが自生するソコトラ島を占領するよう王に進言したという話があります。さらにエジプト遠征の際にアロエを持参するよう伝え、兵士たの怪我の治療や病気予防に役立てました。
ギリシャ・ローマ時代、人々は口臭を消すためにアロエを噛んでいたそうです。また、軟膏の材料にも使われ、クレオパトラはアロエのゼリー質を肌に塗って強い日差しから皮膚を守りました。ドイツ中世に活躍したビンゲンの聖ヒルデガルドはアロエの力を評価し、咳や胃のトラブル、悪寒などの症状に良いハーブであると述べています。
日本への伝来時期は不明ですが、鎌倉時代または江戸時代以前に中国から伝わったそうです。 1709年(宝永7年)に書かれた貝原益軒の『大和本草』にも「味が苦く臭い、殺虫作用がある」と記されています。
1886年に制定された日本薬局方にも、緩下剤として登録されました。