ローズの特徴・形状
- ローズの原種の1つ「ロサ・ガリカ」をハーブとして使う
- 華やかな香りが明るい気持ちを取り戻してくれる
- ビタミンCが含まれ、美容効果も期待できる
ローズはバラ科バラ属の落葉低木で、多くはヨーロッパや西アジアなどを原産地とします。
メディカルハーブで利用されるローズは、「ロサ・ガリカ(Rosa gallica)」と呼ばれる種類。2万種類以上あるバラのうち、ガリカ種は品種改良されていない原種(オールドローズ)の1つで、そのうちでも最も古い系統とされています。
花の色・赤(ルブラ)を意味する「ロサ・ルブラ」や、薬用ローズを意味する「アポテカリーローズ」でよばれることもあります。(apothecaryは薬剤師の意味。)
植物的な特徴
ガリカ種はトルコなど西アジアの原産で、樹高1m~1.5mに育つバラで、バラ科としてはトゲが少ない特徴があります。
葉は濃い緑色で、羽状複葉(複数枚の小葉で、1枚の葉が構成される)、葉の形は先の尖った楕円形をしており、葉脈がはっきりしています。葉縁には細かな鋸歯(ギザギザ)もあります。
四季咲き性の花で、鮮やかなローズピンク色の花を一重咲きで咲かせます。花の大きさは6~8㎝くらい、花弁の数は10~20枚で、中輪の花は半八重咲きです。花後になる実は明るい赤色をしています。
効果・効能
ローズは神経を落ち着かせる鎮静作用、肌を引き締める収れん作用、女性ホルモンの調整作用などの効能があります。
気持ちが沈んでいる時にローズのティーや精油を利用すると、ローズの華やかな香りが神経の乱れを改善し、明るい気持ちに変えてくれます。
さらに、生理痛や生理不順、月経前症候群(PMS)、更年期障害など女性特有の症状を緩和してくれます。同時に、鎮静作用が上記の不調に伴う不安やイライラなどの神経性の不調を改善します。
また、ローズにはビタミン類が豊富で、特にビタミンCが多く含まれるため、疲労回復や抗酸化作用によるアンチエイジング、美肌づくりなどにも役立つでしょう。ビタミンCやEなどは、便秘の症状にも効果があります。
花びらにはポリフェノールの一種であるタンニンが含まれるので、収れん作用の他、抗菌・殺菌作用なども期待できます。口内炎やのどの炎症がある時などに有効で、胃腸など消化器の不調がある時には、細胞壁を刺激して消化を良くしたり、腸の働きを良くします。
神経過敏、便秘、下痢、出血、気分の落ち込み
主な作用
- 鎮静作用
- 収れん作用
- 緩下作用
禁忌・副作用
特に知られていません。
安全性・相互作用
安全性 | 『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』に花部は未収載 |
相互作用 | 『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』に花部はは未収載 |
ローズの主な使い方
- 花
ガリカローズは主にハーブティー、ローズ全般は精油・化粧品などに使用されています。
ハーブティー
ローズの花を使ったティーはやや赤みがあるクリーム色をしており、ガリカローズはローズレッドの名で販売されることもあります。
胃腸に働きかけるので、便秘、消化器の不調がある時に飲むと症状の改善が期待できます。精神的な疲労を感じる時に、香りを楽しみながら飲んでみるのもよさそうですね。ティーに花を浮かべると雰囲気がでてきます。
料理
花は食用でき、ジャムや菓子に加える他、料理の飾りつけにも使えます。
化粧品・美容
ガリカローズではないですが、ダマスクローズや、ローズオットーなど、ローズの精油や芳香蒸留水(ローズウォーター)は、華やかな香りや収れん性があるため、化粧品などにもよく加えられています。
美肌効果が強く、肌を美しくしなやかにしたい時におすすめです。
ハーバルバスやフェイシャルスチームでローズを使うと、保湿効果があり香りでリラックスできます。汎用性が高く、基材としてバームやクリームなどにも利用できます。
味・香り
かすかにバラの香りがあり、甘くて上品な味がする。
ローズの基本情報
学名 | Rosa gallica |
英名 | rose |
和名・別名 | レッドローズ、フレンチローズ、アポテカリーローズ |
科名 | バラ科バラ属 |
分類 | 落葉低木 |
原産地 | ヨーロッパ |
使用部位 | 花 |
主要成分 | 有機酸、タンニン、精油(シトロネロール、ゲラニオールなど) |
作用 | 鎮静、収れん、緩下など |
適応 | 神経過敏、便秘、下痢、出血、気分の落ち込み |
語源・由来
ローズの属名Rosaの起源はラテン語古名rosaを転用したもので、ケルト語のrhodd(ロッド)「赤」やギリシャ語rhodon(
歴史・エピソード他
ガリカローズは紀元前から栽培されていた品種で、2000年以上の歴史があるといわれています。古代の記録では、具体的な品種名がわかりませんが、紀元前2100頃に記されたという古代バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』にもバラが登場します。
もともとローズの起源はオリエント地域で、紀元前1500年頃には約4種の原種がああり、交雑した結果いくつかの品種が生まれたといわれます。古代エジプトでは既に薬用されており、ギリシャ時代には婦人科系の病気にローズが利用されました。
ローマ時代に人気を集める
1世紀ローマの医師ディオスコリデスは、ローズを目や耳の病気、頭痛などに薬用したといわれます。ローマ時代には広く香料としての利用も行われており、香油が作られました。当時はローマの属州である北アフリカ・オリエントなどで栽培がおこなわれたそうです。
また、ガリカローズの名はローマ時代にこのバラが自生していた地域(現在のフランスあたり)を「ガリア」と呼んでいた為、この名が付いたといわれます。
クレオパトラや第5代ローマ皇帝ネロもローズを愛し、花びらを床に敷きつめたり、部屋に飾ったりと客を歓待する際に用いたそうで、古代ギリシャ・ローマで、ローズはアフロディーテ(ヴェヌス)の象徴の一つとされていました。
中世以降
中世ヨーロッパではローズの香りが「人を惑わす」ため、当時のキリスト教ではあまり歓迎されず、修道院での薬用が中心だったようです。バラ水が食事の際の手洗いに利用したり、乾燥させた花びらを衣装箱に入れて香りづけに使いました。
十字軍の遠征以降に中近東のバラが紹介されると、ローズの人気が再燃し、美の象徴として絵画や文学作品に登場するようになりました。
ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌはバラを愛好し、画家のルドゥーテに「バラ図譜」を描かせたことで、植物画の最高傑作といわれる作品が生まれています。
日本
西洋の植物というイメージが強いローズですが、日本は8世紀ごろの『万葉集』でバラ科のノイバラが「うまら」「うばら」と呼ばれており、平安時代の『古今和歌集』『源氏物語』には、中国原産のチャイナローズと呼ばれる種類が「そうび」という名で記されてています。
その後も中国経由でさまざまな種類が伝来しており、江戸時代には中国原産の「コウシンバラ」「モッコウバラ」などが観賞用に育てられていました。
ヨーロッパ原産のローズが輸入され始めたのは明治時代以降で、明治政府の命によって、2種類のバラを交配して作るハイブリッド・ティーローズの第一号「ラ・フランス」が栽培されました。香りが良く、栽培されている農園には大勢の人が詰めかけたそうです。