ヒースの特徴・形状
- 荒れ地にも群生して咲く薄紫色の花
- ミネラル豊富な美白・美肌のハーブ
- パックやゴマージュにもおすすめ
ヒースはヨーロッパ~西アジアを原産とする、ツツジ科エリカ属(またはカルーナ属)の常緑低木です。「ヘザー」という名で呼ばれることもあります。
英語でヒースという言葉は、厳密にはイギリス北部、アイルランドなどにおける平坦地の荒地のことをいい、ヘザーはエリカ属の植物のことを指します。
メディカルハーブとして利用するのは、和名ギョリュウモドキ(学名:Erica vulgaris)、ジャノメエリカ(学名:Calluna vulgaris)の2種類で、科名は異なりますが、形が良く似ており過去に双方の名称が混乱したため、現在はErica属とCalluna属を総称して「ヒース」と呼びます。
ヒースには700種類以上があり、特にエリカ属はアフリカ原産種とヨーロッパ原産種に分かれますが、上の2種類はどちらもヨーロッパ原産です。
植物的な特徴
草丈は20~150cm、葉は厚みがあって1.5~5cmほどの大きさです。
花期は7~10月頃で、約2㎝ほどの紡錘形をした筒状(ベルのような形)をしたピンクの花を多数咲かせます。花が満開になると一面がピンク色になります。
効果・効能
花の部分にはミネラルが豊富に含まれており、主な作用にはフラボノイドによる利尿作用・発汗作用、タンニンによる抗菌作用や肌の引き締め作用などがあります。
デトックス・殺菌効果で、尿酸や膀胱炎など泌尿器形の感染症を改善するほか、結石の予防にも使われます。また、尿酸・乳酸の排出に伴い、良性前立腺肥大やリウマチ、痛風といった関連する症状を緩和します。
さらに、ヒースにはアルブチンという成分が含まれます。メラニン色素をつくり出す色素細胞(メラノサイト)に含まれるチロシナーゼの活性化を抑えるため、美白・美肌に役立とされています。
肌のシミやくすみが気になるときに摂取してみると良いでしょう。
美肌、尿道炎、膀胱炎、結石予防、リウマチ、関節炎、肌のシミなど
主な作用
- 美白作用
- 抗菌作用
- 尿路消毒作用
- 利尿作用
- 鎮静作用
禁忌・副作用
特に知られていませんが、酸性尿を引き起こす薬剤と一緒に使うと、抗菌力が下がる可能性があります。
安全性・相互作用
安全性 | 『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』には未収載 |
相互作用 | 『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』には未収載 |
ヒースの主な使い方
- 花
ヒースは主にハーブティー、美容に使用されています。
ハーブティー
体のむくみがあるときや毒素の排出、肌の調子を整えたい時などにおすすめのハーブティーです。
ヒースのティーは「美容液のようなハーブティー」と呼ばれ、美白や美肌に役立つ成分が含まれています。あまり味はないため飲みやすいですが、香りのあるハーブとブレンドしてもおいしく飲めそうです。
美容
ヒースの美容成分アルブチンは、植物性の化粧品などにも使われます。浸出液をローションにする他、パウダー状にしたヒースををパックやゴマージュにしたり、ハーブティーと合わせて活用すると相乗効果が得られるといわれています。
その他
ヒースの花から取れる色素は染料になります。木部は肥料や燃料になり、束ねてほうきや敷物の材料にされてきました。
味・香り
味はほとんど感じられず、ほのかに花の芳香がある。
ヒースの基本情報
学名 | Erica vulgaris、Calluna vulgaris |
英名 | heath、heather |
和名・別名 | ギョリュウモドキ、ジャノメエリカ、エリカ、ヘザー |
科名 | ツツジ科エリカ属 |
分類 | 常緑性低木 |
原産地 | ヨーロッパ~西アジア |
使用部位 | 花 |
主要成分 | フラボノイド(クエルセチン)、タンニン、ヒドロキノン配糖体(アルブチン、メチルアルブチン) |
作用 | 美白、抗菌、尿路消毒、利尿、鎮静 |
適応 | 美肌、尿道炎、膀胱炎、結石予防、リウマチ、関節炎、肌のシミなど |
語源・由来
学名のうち属名のEricaは、ラテン語でほうきという意味の「eric」が由来となっています。
種小名のvulgarisは「ありふれた、日常の」という意味です。
歴史・エピソード他
ヒースは耐寒性が強く荒れ地に咲く花で、他の植物が育たない不毛な場所でも群生するため、昔の文筆家にとってはヒースが咲く場所は「呪われた土地」のイメージがありました。
一方でヒースの野原は「懐かしい場所」というイメージもあり、ウェス・モンゴメリーの小説『風と共に去りぬ』ではヒースの丘が登場します。
ヒースが堆積し炭化したものはピート(泥炭)と呼ばれる石炭になり、その地に暮らす人々にとって大切な資源でした。ウィスキービールの香りづけに用いられており、伝統的な「スコッチウイスキー」にもヒースが用いられることがあります。
欧米では庭園の植物として用いられることもあり、ヒース・ガーデンと呼ばれるスタイルの庭が作られることがあります。
日本へは昭和初期に渡来しています。