ボリジの特徴・形状
- 茎や葉にはたくさんの白い毛が生えている
- 風邪や感染症の症状を改善するのに使われる
- 青い花はエディブルフラワーとして食べられる
ボリジはヨーロッパを原産とする、ムラサキ科ルリジサ属の一年草です。和名ではルリジサ(瑠璃苣)といい、風邪の症状に良いハーブとされています。
花はマドンナブルーと呼ばれる青色で絵具の材料になるほか、エディブルフラワーとして食用することもできます。
通常花の色は青ですが、白やピンクの種類もあります。
植物の特徴
高さ約60~80㎝で、植物全体に白い毛が生えています。茎上部で枝分かれし、葉には根から出る葉(根出葉)と茎葉の2種類があり、根出葉は長さ5~20cmの先の尖った楕円形、茎葉は根出葉に比べると小さくなり茎に互生します。
6~8月になると集散花序の青色をした花が咲きます。花は直径2㎝ほどで、花冠は5つに分かれるため干しの形に見えます。
萼が大きいのも特徴のひとつで、紫色の萼は花の表面からもはっきりと確認することができます。
効果・効能
ボリジはカリウムやカルシウムが豊富なハーブで、風邪や感染症の症状を改善するのに役立つ発汗作用、抗炎症作用、鎮咳作用などの効能を持つことで知られます。
発汗を促すことで熱を体外に出すため、解熱の働きをします。また、気管支炎からくる咳を抑えるほか、ボリジに含まれる粘液質が、のどのや胸の粘膜を保護して痛みを解消するといいます。
別の薬効としては抗うつ作用や心臓の強壮作用があり、気分の落ち込みが見られるときや動悸のある時に、心の落ち着きを取り戻して心機能を回復する働きが。これはボリジに含まれる成分が、アドレナリンの分泌を促すためとされています。
そのほか、血液を浄化する働きや鎮痛作用があるため関節炎などの痛みにも良いとされるほか、γ-リノレン酸などの成分などが生理痛や月経前症候群(PMS)を緩和させる可能性があります。
風邪、気管支炎、咳、高血圧、関節炎、生理不順、抑うつ、心臓の動悸など
主な作用
- 強壮作用
- 血液浄化作用
- 解熱作用
- 鎮痛作用
- 抗うつ作用
- 抗炎症作用
- 催乳作用
禁忌・副作用
- 作用が強く、肝毒性のあるピロリジジンアルカロイドが含まれるため、多量摂取・長期使用は避けてください。
- 妊娠中・授乳中の人、子供は使用を控えてください。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラス2a…外用での使用は避ける |
ボリジの主な使い方
- 葉、花、種子
ボリジは主に料理、ハーブティー、オイルに使用されています。
料理
葉や花は生食でき、サラダやデザート、スープの付け合わせなどに使うことができます。果実酒やビール、ワインなどの飲み物の香りづけにも利用できるほか、花を砂糖漬けにしてお菓子などのデコレーションすることもあります。
新鮮なボリジの花にはキュウリのような風味がありますが、乾燥させると失われてしまいます。
ハーブティー
発熱を伴う風邪がある時や、のどの痛みがある時に飲むと症状が緩和されます。また、気持ちを明るくする精神強壮効果があるので、憂鬱な時にも役立ちます。ハーブティーの味はさっぱりしているので、香りや味が欲しいときはフルーツ系の風味を持つハーブとブレンドすると飲みやすくなります。
オイル
ボリジの種子を圧搾すると、オイル(ボリジオイル、ボラージ・オイル、ルリジサ油)が得られます。キャリアオイルやサプリメントに使われ、γ-リノレン酸によるアトピーや関節炎の改善、肌に潤いを与えて保つなどの効果が期待できます。
その他
- 乾燥した葉・花を使った煎じ薬を熱さましに活用する。
- 葉のティーは皮膚を柔らかくするため、ローションやクリームに利用可能。
- 関節痛に対する効能があるので、入浴剤や部分浴(手浴・足浴)に使えます。
味・香り
ティーは草の香りで、ほんのり甘みのある飲みやすい味、花はキュウリのような匂いがある。
ボリジの基本情報
学名 | Borago officinalis |
英名 | Borage |
和名・別名 | ルリジサ(瑠璃苣)、ルリジシャ |
科名 | ムラサキ科ルリジサ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 南ヨーロッパ |
使用部位 | 葉、花、種子 |
主要成分 | γ-リノレン酸、ロスマリン酸、ピロリジジンアルカロイド、リコプサミン、タンニン、粘液質、カリウム、精油など |
作用 | 強壮、血液浄化、解熱、鎮痛、利尿、抗うつ、抗炎症、発汗、催乳など |
適応 | 風邪、気管支炎、咳、高血圧、関節炎、生理不順、抑うつ、心臓の動悸など |
語源・由来
属名のBoragoはラテン語のburra「毛皮の外套」が基で、ボリジの植物全体が毛におおわれているためこの名が付きました。officinalisは「薬用の」という意味です。
英名のボリジ(Borage)は属名のBorago(ボラゴ)がもとで、アラブ語の「汗の父」(ボリジの発汗作用に由来)を意味する言葉から来ているそうです。
歴史・エピソード他
ボリジは古代ギリシャ・ローマ時代から利用されてきたハーブで、古くから精神を強化する働きが知られていました。ワインと一緒に飲むと気分を高揚させるとされ、ホメロスの詩に登場する薬ネペンテスはボリジのことだといわれます。
古代ローマの医師ディオスコリデスは「心を明るくし、沈んだ精神を高揚させる」と述べ、大プリニウスは「喜びをもたらすもの」と呼び注目しました。
中世、騎士が闘志を高めるためにボリジのハーブティーを飲んだほか、十字軍の出陣に際して、騎士たちにはボリジを浮かべた杯が与えられたと伝えられます。
エリザベス朝では星形をした花のモチーフが人気を集め、刺繍の題材として人気を集めました。
1525年にイギリスで刊行された『バンクスの本草書』には、ボリジに腫瘍を消滅させる効果があると記載されています。さらに、イギリスには「ボリジのない庭は勇気のない心のようだ」という言い伝えがあります。
絵具の原料としても活躍
ボリジの花から取れる汁は「マドンナブルー」という絵具の原料になり、昔は聖母マリアが着る青い衣服はこの色で描かれていました。
高級なラピスラズリを原料とする青色も「マドンナブルー」と呼ばれることがあります。フェルメールやラファエロが使ったものもこの色。深く味わいのある美しい色が特徴的ですね。