プリムラ|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

プリムラ|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて
目次

プリムラの特徴・形状

  • 咳や痰を解消する働きがあり、風邪の時などに使われる
  • 花や若葉は食用され、サラダなどに加えられることも
  • 黄色い花は「鍵」に見立てられ、神話にも登場する

プリムラは地中海沿岸、アフリカ北部や西アジアを原産とする、サクラソウ科の多年草です。観賞用に改良された品種も多く、約500種が知られています。

和名ではキバナノクリンザクラ(黄花九輪桜)といい、英語の別名にはカウスリップ(cowslip)などの名称があります。

植物的な特徴

メディカルハーブで利用されるプリムラ・ウェーリス(学名:Primula veris)は、高さ15~25cmで、茎が太くて短いのが特徴です。

葉は長さ5~8cmの卵形~長楕円で、根の近くから生えて密集します。葉の表面にはしわが、裏側には毛が生えており、葉の縁は細かな鋸歯(ギザギザ)状になっています。くっきりした葉柄もあります。

春から初夏にかけて、茎の先に散形花序の黄色い花を咲かせます。花は筒状で花弁は5つに分かれ、花の中心に赤い斑点があります。一つの株から10~30個の花が付き、フリージアのような心地よい香りが漂います。

効果・効能

プリムラは咳や痰、口内の炎症、気管支炎などの症状に有効とされます。花が美しい植物ですが、ハーブとしてはサポニンとという成分が多く含まれる根や茎の部分を利用します。

このサポニンには鎮咳、去痰作用のほかにも、免疫賦活作用が含まれます。

免疫機能をつかさどるナチュラルキラー細胞を活性化して、がん細胞やウイルス、細菌から体を守る働きを高める働きがあるため、インフルエンザなどの感染症や風邪に強い体づくりに役立ちます。

さらにタンニンによる抗菌作用や収れん作用などの作用もあるため、口内や消化器の浄化をしつつ症状を改善できます。乾燥させた根はサリチル酸メチルエステルによる、湿布剤のような独特の匂いがあります。

適応

気管支炎、咳、風邪など

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 鎮咳作用
  • 去痰作用
  • 抗菌作用
  • 免疫賦活作用

禁忌・副作用

まれに胃の不快感や吐き気が起こることがあります。

安全性・相互作用

安全性クラス2d…過敏性がある人の使用は注意が必要です。
相互作用クラスA…相互作用が予測されない
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

プリムラの主な使い方

使用部位
  • 根、茎、(花)

プリムラは主に料理、ハーブティーに使用されています。

料理

花や若葉は食用でき、花には少し柑橘系の味があり、葉には苦味があります。春の野菜としてサラダや砂糖漬け、ドレッシングの材料やワインの風味づけなどに利用されます。

イギリスでは、花をたくさん採取して自家製の「カウスリップワイン」を作る文化があります。ワインという名ですが厳密にはシロップで、それを発酵した飲料のことを指します。

ハーブティー

やや苦味があるので、はちみつなどを入れると飲みやすくなります。風邪や咳が続く時はウスベニアオイなど粘液質の豊富なハーブ、エルダーフラワーなど解熱作用のあるハーブ、とブレンドすると相乗効果がが得られます。

味・香り

根や茎は独特の匂いと苦味があります。花はほんのり柑橘系の味がします。

プリムラの基本情報

学名Primula veris
英名cowslip、paigle、key flower、fairy cups
和名・別名キバナノクリンザクラ(黄花九輪桜)、西洋サクラソウ、カウスリップ、キーフラワー、フェアリーカップ
科名サクラソウ科サクラソウ属
分類多年草
原産地地中海沿岸、アフリカ北部、西アジア原産
使用部位根、茎
主要成分トリテルペン系サポニン(アグリコンとしてプリペロゲニンA、Bなど)、フェノール配糖体、タンニン
作用鎮咳、去痰、抗菌、免疫賦活など
適応気管支炎、咳、風邪など

語源・由来

学名のうち属名のPrimulaには「最も早いもの」という意味があり、ラテン語primusを転用したものです。verisには「春」という意味があります。プリムラは、春の早い時期に開花するためこの名が付きました。

英名のカウスリップ(cowslip)は古英語の “cu-slyppe” が基になっており、「牛糞のあるところならどこにでも生える」という意味があるそうです。和名のキバナノクリンザクラ(黄花九輪桜)は、同じ属のクリンソウ(九輪草)に似ていて黄色い花が咲くことが由来になっているといわれます。

歴史・エピソード他

プリムラはローマ時代から知られていた植物で、大プリニウスの『博物誌』にも記載があります。古くは神経系の症状や不眠症の薬として利用されていました。

12世紀ドイツのハーブ療法家である聖ヒルデガルトは、プリムラを心臓の上に置くと気持ちが温まる効果があり、うつ状態に良いハーブとして紹介しました。

黄色い花が「鍵」に見える?

プリムラの密集する黄色い花が鍵の束に見えることから「鍵」にまつわる神話や逸話が残されており、ゲルマン文化圏~北欧では美と豊穣の女神フレイヤに捧げられ、フレイヤの宝物殿の鍵を開ける力があるとされました。

キリスト教圏では、イエスの弟子・十二使徒の一人ペトロがイエスから天国の鍵を預かった後、天国の入り口で鍵を管理していたところ地上に落としてしまい、その場所に生えたのがプリムラといわれます。そのため、英語では「key flower」や「key of heaven」などの別称があり、ドイツ語でも同様の名称があるようです。

また、釣り鐘型の花には小さな妖精が住むとされ、花弁にある赤い斑点は妖精が触った跡といわれます。ウィリアム・シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』にも、妖精と関連付けてプリムラが登場します。

その他、「ピーターラビット」シリーズの『セシリ・パセリのわらべうた』でも、カウスリップワインを作る描写があります。

参考文献

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