ペパーミントの特徴・形状
- 清涼感のある香りが人気の、育てやすいハーブ
- 気分をスッキリさせ、消化不良や吐き気などの症状を改善する
- 脳を活性化させて集中力をUPさせる
ペパーミントは、ヨーロッパを原産とするシソ科ハッカ属の多年草です。
ガムやタブレットのようなスーッする爽やかな香り(メントール)を持ち、手軽に育てられるキッチンハーブとしても良く知られていますね。
ウォーターミントとスペアミントの交配種で、全草から爽やかな香りが漂います。日本ではセイヨウハッカ、コショウハッカなどの名前で呼ばれます。ペパーミントの「ペパー」も、英語のpepper(胡椒)です。
植物的な特徴
草丈は30~90cmに育ち、繁殖力が強く根茎が増え広がります。通常葉は緑色ですが、茎と同じように紫色を帯びることもあります。ペパーミントの葉は先の尖った楕円形をしており、長さ4~9cmほどの長さで縁に鋸歯(ギザギザ)があります。葉は茎に対生し、上から見るとひし形のように見えるのが特徴です。
7月~9月頃になると、茎先に長さ5~8cmの穂状をした輪散花序(葉の節に複数の花が密集する)が咲きます。この花は2唇形で4つの花びらを持ち、藤色~桃色で一つ一つは4~5mmほどの大きさです。
効果・効能
ペパーミントは心身のリフレッシュに役立つハーブで、特に吐き気、消化不良、胃痛、飲みすぎなど消化器系の不調を改善するのに役立ちます。
さらに、中枢神経系を落ち着かせる作用もあり、神経性の頭痛や腹痛がある時にも有効です。ペパーミントには体を温める温熱作用と、体を冷やす冷却作用の両方があり、神経性の下痢や便秘がある時や心身症にも効果が期待できます。
精神を落ち着かせるという意味では、不安の解消や不眠にも良いでしょう。
駆風作用が腸内ガスの排出によいほか、鎮痙作用で腸内の痙攣を鎮めるため、腸過敏性症候群にも適用されます。ペパーミントはタンニンが含まれるため抗菌力が高く、口内や消化器の浄化、風邪・感染症予防にも活用できます。歯痛がある時の痛み止めとしても役立ちます。
また、ペパーミントに含まれるメントールなどの香りが脳を活性化させて眠気を覚ますため、勉強時の集中力UPにもうれしい効果があるとされます。
心身のリフレッシュ、吐き気、頭痛、消化促進、過敏性腸症候群、鼓腸、歯痛、集中力UPなど
主な作用
- 賦活のち鎮静作用
- 鎮痙作用
- 駆風作用
- 利胆作用
- 健胃作用
- 抗菌・抗真菌作用
- 抗ウイルス作用
- 抗炎症作用
禁忌・副作用
- 胆石の症状がある場合は使用を避けます。
- 精油は皮膚刺激があるため、肌に塗ると湿疹やかゆみが出ることがあります。
- 人によっては喘息の悪化、呼吸器の痛みなどの症状が現れることがあります。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
ペパーミントの主な使い方
- 地上部(主に葉・茎)
ペパーミントは主に料理、ハーブティー、精油、薬用に使用されています。
料理
香りが強いので、肉や魚料理の臭み消しに使うと爽やかな風味になります。ビネガー、リキュールなどに加えるほか、フレッシュのペパーミントはアイスや飲み物、デザートの飾りになります。ペパーミントの香りはお菓子などにも使われます。
ハーブティー
ペパーミント単体だと清涼感が強いので、近縁種のアップルミントやジャーマンカモミールなど香りのあるハーブとブレンドすると飲みやすくなります。食後にお腹が張っている時や、不快感を感じる時に飲むとよいでしょう。勉強時のお供にもおすすめです。
精油
水蒸気蒸留してつくる精油(エッセンシャルオイル)は、爽やかな香りで気分をスッキリさせてくれます。この香りは消化不良や風邪、気管支炎などの症状に良いとされるほか、喘息や歯痛、ニキビなどにも効果があるといわれています。
その他
味・香り
スーッとする香りで、爽やかな清涼感のある味わい。
ペパーミントの基本情報
学名 | Mentha x piperita |
英名 | Peppermint |
和名・別名 | セイヨウハッカ、コショウハッカ |
科名 | シソ科ハッカ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | ヨーロッパ |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | タンニン、ペクチン、フラボノイド(アピゲニン、ルテオリン)、フェノール酸(クロロゲン酸、カフェ酸、ロスマリン酸)、精油(メントール、メントン、1.8シオネールなど) |
作用 | 賦活のち鎮静、鎮痙、駆風、利胆、健胃、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗炎症 |
適応 | 心身のリフレッシュ、吐き気、頭痛、消化促進、過敏性腸症候群、鼓腸など |
語源・由来
属名のMenthaはギリシャ神話のニンフの名前から命名、または古いラテン語名に由来します。種小名のpiperitaは「コショウに似た」という意味があります。
歴史・エピソード他
「ミント」の由来はギリシャ神話から
「ミント」の名はギリシャ神話のエピソードに由来しています。ローマの詩人オウィディウス(紀元前43~17)が著した『変身物語』によれば、
「冥界の神ハデスがニンフの「メンテ―」を愛していたところ、ハデスの妻であるペルセポネの嫉妬にふれ、呪いでメンテ―は草の姿に変えられてしまう。ハデスはメンテ―を憐れんで芳香のあるミントに変えた。」
といういわれがあり、ミントには恋の熱を冷ます効果があると信じられました。
ペパーミントが登場するのは17世紀以降
ミント類は紀元前から薬用されてきたハーブの1つですが、近代まではスペアミントやハッカ、ウォーターミント、ホースミントなど近縁種が中心でした。
ミント類は古くからエジプト、イスラエル、ギリシャ、ローマ等各地で利用されており、浴用香料や食物・飲み物の香りづけになど使われていました。古代ローマ時代には、客をもてなす際にミントの葉でテーブルをこすって香りを漂わせたそうです。
中世ヨーロッパでまだペパーミントは知られていませんでしたが、当時から魚料理や肉と一緒に食べるとよいことや、消化を良くする働きが知られていました。中世のイギリスでは、ローマ人がミント類を持ち込んだ後現地で人気を博し、9世紀に修道院の庭で栽培されていました。
ペパーミントの名が文献に登場するのは17世紀で、ペッパー(胡椒)の味がするミントとして紹介されました。イギリスで栽培される始めるとヨーロッパ各地に広がりました。ストローイングハーブ(ハーブを床に敷きつめ、踏んで香りを漂わせる)の1つとしても用いられています。
ミント類が日本に伝わったのは江戸時代
日本に江戸時代にスペアミントがオランダハッカという名で渡来し、明治時代になってから北海道の北見で生産が始まりました。中国でのミント類は唐代の本草書『新修本草』に記載があり、7世紀頃には薬草として知られていたことがわかっています。