ヒソップの特徴・形状
- 和名は「ヤナギハッカ」。ミントのようなスーッとした香りがある
- 抗炎症作用・抗菌作用でのどの炎症などを抑える
- 薬草系リキュールの原料になっている
ヒソップはシソ科ヤナギハッカ属の半常緑低木で、地中海から中央アジアのアルタイ山脈まで広く分布するハーブです。
和名をヤナギハッカといい、ミントのような清涼感のある香りを持つのが特徴。ハチを集める蜜源植物でもあり、ヒソップから取れる蜜からは芳醇な香りを持ったハチミツが作られます。
植物的な特徴
草丈40~60cmに育ち、植物からは爽やかな香りと苦みが漂います。基部は木質化し直立、枝分かれが多く、茎には2.5cmほどの披針形をした細長い葉が対生します。葉は深緑色で光沢があります。
6月~9月になると茎先に青~紫色、またはピンク色をした小さな花がたくさんつきます。花は総状花序(小花が円柱形に並び、穂のように見える)で、唇形です。葉の緑色とのコントラストが美しく、園芸用としても人気のあるハーブです。
効果・効能
ヒソップは気管支やのどの炎症がある時に活用したいハーブで、抗炎症作用・抗菌作用で患部の状態を改善する効果があるとされます。特に葉では、抗菌効果を持つ抗生物質の一種・ペニシリンを生じるカビが繁殖することが解明されています。
感染症などウイルスが原因となる風邪の症状にも良く咳や痰、鼻づまりの症状を抑えるといいます。
風邪の初期症状がある時に活用しやすいハーブで、発汗・利尿に役立つフラボノイド類が含まれるので、発熱がつらいときの解熱にも役立ちます。
他の作用としては、消化不良を解消し、胃腸の状態を整える整腸作用があるとされるほか、リウマチ・関節痛の痛みを緩和する働きもあると考えられています。
気管支炎、喘息、のどの痛み、痰、リウマチ、関節痛など
主な作用
- 抗菌作用
- 抗ウイルス作用
- 抗炎症作用
- 去痰作用
- 解熱作用
- 発汗作用


禁忌・副作用
- 妊娠中、授乳中の人、乳幼児、てんかん、高血圧の症状がある人は使用を避けます。
- 長期、多量摂取は行わないようにしてください。
安全性・相互作用
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
ヒソップの主な使い方
- 葉
- 花
ヒソップは主に料理、ハーブティー、精油に使用されています。
料理
新鮮な葉はタイムに似た爽やかな芳香があり、料理の香りづけや肉・魚の臭みけしに活用されます。
やや苦みがあるのが特徴で、刻んだ葉をソーセージやシチューなどに加えることもできます。それ以外では、中東のスパイスミックス・ザアタルに加えられることがあるようです。
花穂は、リキュールや薬草系リキュールの一種で「リキュールの女王」と呼ばれるシャルトリューズや、同じく薬草系リキュール・アブサンの原料にも加えられているようです。
ハーブティー
風邪の引き初めや、のどの痛みがある時、鼻づまりがある時などにヒソップを取り入れてみるとよいでしょう。スーッとした香りがあって鼻やのどをスッキリさせます。あまり味は強くないので、別のブレンドに加えて飲むこともできます。
駆風作用があるとされるので、腹部の膨満感がある時に腸内ガス排出を手助けしてくれます。関節の痛みがある時は、血行促進作用のあるハーブなどとブレンドできます。
精油
水蒸気蒸留法で葉や花から精油が抽出できます。ヒソップの精油は香りが強く、シャープな香りに花特有の甘い香りが加わります。化粧品の香料のほか、オーデコロンにも活用されています。
その他
ハーバルバスでヒソップの葉を入れると関節の痛みが和らぎます。ハーブティーはうがいに使うと口内の抗菌に役立てることができます。
味・香り
ティーは爽やかなミントのような香りがあり、あまりクセがない味。
ヒソップの基本情報
学名 | Hyssopus officinalis |
英名 | Hyssop |
和名・別名 | ヤナギハッカ(柳薄荷) |
科名 | シソ科ヤナギハッカ属 |
分類 | 半常緑低木 |
原産地 | ヨーロッパ東南部~中央アジア |
使用部位 | 葉、花 |
主要成分 | タンニン、フラボノイド、苦味質、配糖体、精油 |
作用 | 抗菌、抗ウイルス、抗炎症、去痰、解熱、発汗 |
適応 | 気管支炎、喘息、のどの痛み、痰、リウマチ、関節痛など |
語源・由来
属名のHyssopusはヘブライ語のezobh「聖なる木」が転じたもので、種小名のofficinalisは「薬用の」という意味があります。属名をそのまま読むとヒソップになります。
和名のヤナギハッカ(柳薄荷)はヒソップの葉が柳の形に似ており、ハッカに似た爽やかな香りがあるためこの名が付きました。
歴史・エピソード他
ヒソップは古代エジプト時代に宗教的な儀式の際に使われたハーブで、その後のギリシャ・ローマ時代にも神殿などの浄化に用いられました。ユダヤ教やキリスト教では聖水をまくときにヒソップを使う習わしがあり、ユダヤ教では過越祭で清めのハーブとして食されるそうです。
聖書にも「ヒソプ」というハーブが登場し、「ヒソプをもって我を清めたまえ」という文言が記されています。ただ、イスラエル周辺にヒソップは自生しないため、聖書のヒソプはマジョラムなどべつのハーブという見方が行われています。
中世には消化機能に対する薬効が認められ、肝臓や胃のトラブルに良いとされたほか、スープ、ピクルス、ミートパイなどの苦味付けに加えられていました。吊るして魔除けに用いる他、床に蒔いて香りを利用するストローイングハーブにも使われたといわれます。
また、ヒソップは15~16世紀ごろに修道院で薬用酒として作られ始め、発展したリキュールの香りづけにも使われました。中でもベネディクト派修道会のベネディクティンや、カルトジオ会のシャルトリューズといった銘酒が知られており、数多くのハーブと共にヒソップが加えられています。
日本にヒソップが伝わったのは明治時代ですが、当時は一般化せず普及したのは近年です。

