バレリアン|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

バレリアン|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて
目次

バレリアンの特徴・形状

  • 独特の臭い香りを持つが、猫はこの香りを好む
  • 神経の緊張を和らげ、不安や不眠を解消する
  • ヨーロッパ中世には修道院や薬草園で栽培されていた

バレリアンはヨーロッパを原産地とする、オミナエシ科カノコソウ属の多年草です。

ヨーロッパでは古くから不眠症や不安神経症に利用されており、約150種類が世界中に生息しているそうです。

バレリアンは腐敗集のような独特の香りを持ち、これはバレリアンに含まれるイソ吉草酸という成分によるもので、人間からすると悪臭ですが、猫が嗅ぐとマタタビのように陶酔を起こします。

植物的な特徴

草丈60㎝~1m以上に育つ植物で、茎は上部で枝分かれします。葉は奇数の羽状複葉(小葉が連なり鳥の羽のような形をした葉)で茎に互生し、葉縁には鋸歯があります。

花期は6~8月、薄桃色、青紫色、白色をした花を円錐状の集散花序(初めに茎の先端に花が咲き、次々と周囲に枝をはやして花をつける)で咲かせます。5つの花弁があり、星形のかわいらしい花です。

効果・効能

バレリアンには、中枢神経の興奮を鎮めて気分をリラックスさせる強い鎮静作用があります。

そのため、不安や神経性の頭痛、片頭痛、更年期障害や生理前症候群(PMS)の際に気分が落ち込んだ時などに役立ちます。

神経が昂っていると眠れなかったり、睡眠が浅くなることがあるため、不眠の症状があるときにも有効です。また、筋肉の緊張を和らげるため、緊張性の腹痛、胃痛、肩こりや生理痛などの痛みを鎮めます。

バレリアンのメカニズムは完全には解明されていませんが、バレリアンの有効成分が、脳の興奮を鎮めるγ-アミノ酸(ギャバ)の代謝に関わるためと考えられています。

夜寝る前にハーブティーを飲むと効果的ですが、利尿作用もあるため飲みすぎには注意が必要です。

適応

神経性の就眠障害、神経の興奮、ストレスからくる不安、緊張性の肩こり、腹痛など

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 鎮静作用
  • 鎮痙作用
  • 利尿作用
  • 駆風作用
  • 去痰作用

禁忌・副作用

  • 妊娠中または授乳中の人、子供は使用に注意。
  • 催眠系の薬剤との併用、肝機能不全の人は使用しないようにします。
  • 眠くなるため車に乗る前も飲用を避けます。

安全性・相互作用

安全性クラス1…適切な使用において安全
相互作用クラスB…相互作用が起こりうるハーブ(鎮静剤との併用は注意が必要です。)
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

バレリアンの主な使い方

使用部位

バレリアンは主にハーブティー、薬用に使用されています。

ハーブティー

バレリアンティーは苦みのあるお茶なので、ブレンドした方が飲みやすくなります。パッションフラワー、リンデン、ホップなど鎮静作用があるハーブや、リンゴの香りがするジャーマンカモミールなどが組み合わせやすいです。

入眠前だけでなく日中、頭痛や不安があるときにも飲用できます。

その他

ティーが飲みにくい場合はサプリメントなども利用できます。バレリアンに含まれる精油は香水の原料に使われることがあります。

味・香り

独特の腐敗臭がある。苦いお茶のような味。

バレリアンの基本情報

学名Valeriana officinalis
英名Valerian
和名・別名セイヨウカノコソウ、纈草(けっそう)、吉草(きっそう)
科名オミナエシ科カノコソウ属
分類多年草
原産地ヨーロッパ、北アジア、北アメリカ
使用部位
主要成分吉草酸、テルペン類、アルカロイド、バレポトリエイト、精油
作用鎮静、鎮痙、利尿、駆風、去痰など
適応神経性の就眠障害、神経の興奮、ストレスからくる不安、緊張性の肩こり、腹痛など

語源・由来

属名のValerianaはローマ皇帝ヴァレリアヌスに捧げられた名で、ラテン語で「元気である」「強くなる」という意味があります。種小名のofficinalisは「薬用の」という意味です。

歴史・エピソード他

バレリアンは、古代ギリシャ・ローマ時代から不眠や不安に効く薬草として知られており、古代の医師はこの植物を「プー(Phu)」と呼びました。

古代ギリシャの医師ヒポクラテスが薬用に用いたほか、ローマ時代の医学者ガレノスが不眠症の治療薬に利用しています。

中世では修道院の薬草園で育てられたハーブの1つで、盛んに栽培されたそうです。さらに、魔除けの効果があると信じられ、魔女や悪霊から家族を守るため、家や納屋の入り口にバレリアンとマジョラムを吊るす習慣がありました。

17世紀のハーバリストであるニコラス・カルペパーは「乾燥させて飲むと排尿を促す。戦時汁も同様の効果があり、わき腹の痛みを取り、月経を促し解毒剤となる。」など、バレリアンの薬効について書き記しています。

また、ヨーロッパでは昔ネズミ退治にバレリアンが使用され、ドイツの伝説「ハーメルンの笛吹き」の話では、バレリアンを使ってネズミをおびき寄せたといいます。

日本には江戸後期(1800年頃)にはオランダから渡来しました。日本の在来種で近縁種のカノコソウは、生薬名を「鹿子草」「吉草根」「纈草根」といい、バレリアンと似た用途で使われます。

参考文献

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