サフランの特徴
- アヤメ科の植物で、赤くて細い雌しべをハーブ・スパイスとして活用する
- 最も高価なスパイスといわれる
- 3500年以上前から栽培され、イランではうつ病の伝統薬として利用
サフランはアヤメ科クロッカス属の耐寒性多年草(球根植物)で、クロッカスの赤く細長い雌しべのことを指します。
メディカルハーブとしての効能を持つため、別名では薬用クロッカスと呼ばれますが、観賞用としても人気のある植物です。
古代から貴重でとても高価なスパイスとして知られており、1キロのサフランを収穫するのになんと約16万個の花が必要なのだそう。黄色い色素が出るため、パエリアの色付けに使われていることでも有名ですね。
サフランの原産地は地中海沿岸といわれており、現在小アジア地方、スペイン、イランなどで生産が行われています。
植物的な特徴
草丈は10~15cmで、10月中旬~12月上旬にかけて、4~5㎝ほどの薄紫色の花が咲きます。
花は6枚の花弁があり1つの株に最大4つが付き、1つの花に3本ずつある鮮やかな赤色の柱頭を摘み取って、乾燥させたものがスパイス・ハーブの原料になります。また、花自体にも蜂蜜のような甘い香りがあります。
花期の葉は細い線型で白い筋が入っていますが、花が終わると20~30㎝ほどに育ちます。サフランは寒さに強く、厚さや湿気に弱い性質があります。
効果・効能
サフランの主な効果・効能
痛みを抑える働きがある
薬用ハーブとしてのサフランは、主に神経の興奮を鎮めて精神を安定させる鎮静作用、胃腸などの痙攣を抑える鎮痙作用、生理不順を改善する通経作用が知られています。
特に生理痛、更年期障害など女性特有のトラブルに用いられ、月経を促進しつつ痛みを抑えてくれます。
体を温める働きがある
また、血管を拡張し血液の流れを良くすることで体を温める作用があるため、冷え性や血液の滞りからくる痛み・皮膚のトラブル(しみ、くま、ニキビ、肌あれなど)にも役立ちます。発汗作用があるため、風邪の時にも良いでしょう。
リラックス、胃の不調にも効果的
その他、サフランの特徴である黄色の色素成分クロシンには、抗うつ作用があるとされ精神安定剤、鎮静剤、睡眠薬、抗うつ薬として用いられています。
苦味配糖体のピクロクロシンには唾液や胃液の分泌を増加させる働きがあるため、消化不良など胃もたれの症状があるときは効果が期待できます。
栄養素も豊富!
サフランは栄養も豊富で、疲労回復に役立つビタミンB1や、脂質の代謝を助け、皮膚、粘膜、髪、爪など細胞の再生を促すビタミンB2が含まれています。サフランに含まれるリコピンには強い抗酸化作用があるため動脈硬化予防などにも利用できます。
血行促進、冷え性、痙れん・喘息の際の神経の興奮、月経不順、月経痛、更年期障害など
主な作用
- 通経作用
- 鎮痛作用
- 鎮静作用
- 健胃作用
- 発汗作用
- 鎮痙作用
- 血行促進作用
禁忌・副作用
- 通経作用があるため、妊娠中は使用しないようにします。
- 色素成分で皮膚や舌が黄色くなることがあります。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない |
サフランの主な使い方
- 雌しべ
サフランは主に香辛料、料理、ハーブティー、薬用に使用されています。
香辛料・料理
サフランの雌しべは乾燥させることで、香辛料として利用できます。サフランといえば「サフランライス」に代表される黄金色ですが、これはサフランに含まれる色素成分のクロシンによる効果です。クロシンは水溶性のため油では溶けませんが、サフランを水またはぬるま湯に浸すと抽出されます。
魚や肉、お米、ワインなど様々な食材が黄金色になる高級スパイスとして、インド料理のサフランライス、フランス料理のブイヤベース、スペイン料理のパエリア、イタリア料理のミラノ風ドリアなど世界各国の料理で利用されています。
サフランはお菓子にも利用されることが多く、ケーキやパイ、プティングなどの料理でも風味づけに用いられます。
ハーブティー
サフランのハーブティーは体を温める作用が知られており、食べ物の消化を助ける働きがあります。風邪気味の時や、生理不順の時などにもおすすめです。トルコにある香料で栄えた街・サフランボルでもサフランティーが飲まれています。
薬用
漢方では生薬の「番紅花(ばんこうか)」がサフランにあたります。基本的な利用法はメディカルハーブと同じで、風通しのよい室内で陰干しにして乾燥させた柱頭を鎮静、鎮痙、通経などの目的で薬用します。中国では西紅花、藏紅花という名で流通しています。
味・香り
刺激と苦さのある風味で、花の上品な香りを持つ。
サフランの基本情報
学名 | Crocus sativus |
英名 | saffron |
和名・別名 | バンコウカ(番紅花)、咱夫藍、洎夫藍、洎夫蘭 |
科名 | アヤメ科クロッカス属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 地中海沿岸、小アジア地方、スペイン、イラン |
使用部位 | 雌しべ |
主要成分 | ピクロクロシン、クロシン、カロテン、リコピン |
作用 | 通経、鎮痛、鎮静、健胃、発汗、利尿、鎮痙、血行促進 |
適応 | 月経不順、月経痛、更年期障害、血行促進など |
語源・由来
属名のCrocusは、ギリシャ語のkurokos「糸」が由来で、サフランの特徴である細長い柱頭を表します。sativusは「栽培された」という意味があります。
英名のサフラン(saffron)の語源は諸説あり、12世紀の古フランス語 safran、ラテン語safranum、ペルシャ語 zaʻfarān(ザアファラーン)、古い言葉のzar-parānとさかのぼるといわれています。
歴史・エピソード他
サフラン栽培が始まったのは3500年以上前と歴史が古く、古代エジプトの薬学書『エーゲルス・パピルス』にはサフランの薬効が記されています。
薬用だけでなく食用としても数千年以上前から利用されており、数千年前のペルシャ語の資料に記録されるほか、紀元前7世紀に編集されたアッシリアの植物誌にも記載されました。古代ペルシャでは神々へ捧げものとしても使われたそうです。
クレタ島または中央アジアに自生していた、Crocus cartwrightianusが原種といわれており、紀元前1700年頃に描かれたというクレタ島クノッソス宮殿のフレスコ画にも、女の子やサルがサフランを収穫する様子が描かれています。
また、クレオパトラはサフランが持つ黄金色と美容に役立つ性質を評価し、入浴の際にサフランを加えたといわれます。
ローマ滅亡後、ヨーロッパでのサフラン栽培は一度途絶え、中世以降は中東のイスラム教国の重要な交易品となりました。13世紀頃に巡礼者、商人、騎士によって再導入されたといいます。
サフランは古代から薬用、食用、香水、染色など幅広く活用されていたものの、希少なため数々のニセモノが出回っていました。16世紀のフランスでは、「サフランに混ぜ物をした場合は極刑にする」というお触れが出たほどです。
ペルシャ(イラン)から世界に広がったようで、紀元前3世紀頃には既に中国でその存在が知られていました。日本には江戸時代に薬として伝わり、その後、1886年から栽培が始めれたそうです。