シナモン|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

シナモン|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについても解説
目次

シナモンの特徴・形状

  • 甘さとスパイシーな香りが各種料理・お菓子作りで活躍する
  • 胃の不調を改善させたり、血行を良くする働きがある
  • 古代エジプトの聖なる香り「キフィ」の材料の1つ

シナモンはインド、マレーシア(セイロン島)、スリランカを原産地とするクスノキ科ニッケイ属の常緑高木。

和名では「セイロンニッケイ」とも呼ばれ、通常シナモンといえばこの「ウェルム種(Cinnamomum verum)」のことを指します。

ホールのシナモンは樹皮を薄く剥いでから巻いて乾燥させるため、販売時にはタバコのように細い円柱の形をしています。

植物的な特徴

樹高は10~15mほどで、赤みを帯びた厚い樹皮を持ちます。

葉は長さ15~20cm、先の尖った楕円形または涙型をしています。また、綺麗な緑色の葉には光沢があり、枝に互生して葉に3本~5本の筋が入るのが特徴です。

初夏の6月頃になると葉の付け根に花序が現れ、直径1センチほどの薄黄色をした小花を円錐花序(枝が複数に細かく分かれて、その先に花が咲く)で咲かせます。

果実は1cmくらいの大きさで紫色をしており、1つの果実につき1つの種子を含みます。

効果・効能

シナモンは主に消化器の活性化や、血行を良くしたい時、風邪の症状があるときに役立つハーブです。

シナモンに含まれる苦味質は胃液の分泌を活発化させ、食欲不振や消化不良を解消する作用を持ちます。

同時にシンナムアルデヒドという精油成分が毛細血管の働きを良くする作用を持つため、冷え性や血液の劣化による体の酸化防止にも効果を持ちます。リウマチなど関節痛があるときは、痛みの緩和に役立つかもしれません。

また、タンニンや精油成分のオイゲノールによる殺菌・抗ウイルス作用に加えて、口腔の粘膜を保護する作用があるため、のどの痛みなど風邪の症状があるとき、感染症予防にも良いとされます。血行改善による発汗作用も期待できるので、熱を体外に出したい時にも有効です。

シナモンの樹皮を使用したハーブティーは、吐き気や腹部の膨満感があるときに飲むと症状が緩和されます。また、シナモンの樹皮を水で抽出したエキスには、血糖値を下げる作用があるとされます。

適応

胃もたれ、胃の不調、冷え性、リウマチ、関節炎、風邪など

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 抗ウイルス作用
  • 抗菌作用
  • 健胃作用
  • 発汗作用
  • 駆風作用

禁忌・副作用

  • 妊娠中の人は使用に注意が必要です。
  • 降圧剤を服用中の人、糖尿病の人は多量摂取を避けてください。

安全性・相互作用

安全性クラス2b…妊娠中に使用しない
相互作用クラスA…相互作用が予測されない
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

シナモンの主な使い方

使用部位
  • 樹皮

シナモンは主に香辛料・料理、ハーブティー、薬用に使用されています。

香辛料・料理

スーパーなどでも良く売られているシナモンのスパイスは、独特の甘みや辛みがあり、シナモンロールやクッキー、パイなどの洋菓子類、ジャムなどのの材料に加えて香りづけに使用できます。

コーヒーや紅茶に入れるとややスパイシーな味わいになります。

ハーブティー

樹皮をティーにして飲むと、消化器の働きを活発化させて消化を促す働きがあります。食べ過ぎた後に胃もたれがあるとき、気分が悪いときに飲むと症状が改善されます。

味・香り

甘い香りで、辛みと甘みが混じった独特の味。

シナモンの基本情報

学名Cinnamomum verum
英名True cinnamon tree、Ceylon cinnamon tree
和名・別名セイロンニッケイ
科名クスノキ科ニッケイ属
分類小型常緑樹
原産地インド、マレーシア、スリランカ
使用部位葉、樹皮
主要成分粘液質、タンニン、プロアントシアニジン、クマリン、シュウ酸カルシウムなど
作用抗ウイルス作用、抗菌作用、健胃作用、発汗作用、駆風作用
適応胃もたれ、胃の不調、冷え性、リウマチ、関節炎、風邪など

語源・由来

学名のうち属名のCinnamomumはギリシャ語のcinein「巻く」とamomos「申し分のない」という言葉が組み合わさったもので、芳香を讃えてこの名が付いたそうです。種小名のverumはラテン語で「本物の」という意味です。このウェルム種は「真のシナモン」と呼ばれることがあります。

15世紀から使われているシナモン(cinnamon)という名前は、ギリシャ語のキンナモーモン(κιννάμωμον(kinnámōmon)がラテン語→中世フランス語に転じた名称です。

歴史・エピソード他

ヨーロッパでの歴史

シナモンは紀元前から積極的に使用されていたハーブの1つで、紀元前3000年頃のエジプトでは、殺菌・防腐効果を活用してミイラの保存に役立てられていました。

主にインドから輸入されていた為、西アジア~地中海の古代世界では非常に高価で、統治者や神への贈り物として珍重されていました。エジプト発祥の薫香「キフィ」は聖なる香りとして知られていますが、シナモンも調合料に加えられています。

古代ギリシャ時代には薬用としても活用されていたようで、医学の祖ヒポクラテスはシナモンを薫香療法に用いました。古代ローマ時代にはクローブ・ペッパーと合わせて3大スパイスとされ、ローマのグルメ愛好家・料理人アピシウスも調理に用いたそうです。

ドイツ中世の聖ヒルデガルトは、シナモンを強い力のあるハーブとして紹介し、現代と同じように痛風やリウマチ、呼吸のトラブルや風邪などに良いと述べています。

古くはシナモンの原産地はアラビアとされ、「シナモン鳥と呼ばれる鳥が未知の土地からシナモンのスティックを集めて巣を作り、それを策略を使って(苦労して)奪う」という話が伝わっていました。実際には値を釣り上げるためのほら話だったようですが、1310年まで語り継がれていたといわれます。

商人たちは利益を得るため原産地を知らせませんでしたが、16世紀にマゼランがフィリピンで「ウェルム種」と「ミンデナイエンセ種(mindanaense)」を発見しています。

アジアでの歴史

シナモンは中国にも早くから伝わっていたようで、中国最古の薬学書『神農本草経』にも記載があります。

日本では正倉院の宝物に「桂心」が伝わっており、奈良時代にはクローブやコショウなどと一緒に伝来していたことがわかっています。ちなみにこれは中国原産のカシア種で、樹木としてのシナモンは江戸時代にニッキが伝わったことに始まります。

カシア種とシーボルディー種

シナモンといえば通常上記のウェルム種を指しますが、それとは別に中国やインドシナが原産の「カシア種」、中国南部~ベトナム原産を原産とする「シーボルディー種」の2種類があります。いずれも香辛料や生薬の材料に使われるため混同されがちです。

カシア(C. cassia)

日本でよく使われているのはこのカシア種です。中華料理のスパイス「五香粉」や、カレーに使われるスパイス「ガラムマサラ」にも加えられ、漢方では「桂皮(ケイヒ)」という名で、薬用されています。

精神疲労や不安を取り除く作用があり、体を温めて消化器の機能の不調を改善します。

シーボルディー(C. sieboldiie)

和名で肉桂(ニッケイ)と呼ばれる種類で、こちらも古くから伝統医学に用いられてきました。

他の近縁種と同じく温熱作用、発汗作用、健胃作用などの薬効があります。寒さに弱く温暖な気候で育つ植物ですが、日本でも自生しています。

 

参考文献

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