コルツフットの特徴
- タンポポのような黄色い花が咲く
- 咳や痰を解消させる働きがあるとされる
- のどを守るハーブだが、大量摂取は避けること
コルツフットはキク科フキタンポポ属の多年草で、和名では「フキタンポポ」の名前で知られるハーブです。
原産地はヨーロッパ、アジア西部・北部とされ、中国〜ヨーロッパまで広く分布していますが、北半球にしか自生しません。
形や色がフクジュソウ(福寿草)に似ていることから、数の減ったフクジュソウに代わり正月用の花としてに利用されています。
日本には明治時代に渡来し、観賞用に利用され一部が野生化しているそうです。
植物的な特徴
根茎が長い地下性の植物で草丈は30㎝ほど、黄金色をしたうろこ状の茎には白色の毛があります。1月~3月ごろに茎の節から10㎝ほどの短い花径が立ち上がり、葉が育つよりも花が先に咲きます。
花は黄色くロゼットのような形をしていて、舌状花(花びらが数枚平行につく)と筒状花(キク科の花に見られる特徴で、花冠が筒状になっている)の特徴を持っています。
葉は3~12cmほどの大きさで、鐘のような形でフキの葉に似ており、鋸歯(ギザギザ)状をしています。茎から互生し、葉の裏側にも白い毛が生えています。花は3月・4月に、葉は5月・6月に採集します。
効果・効能
コルツフットは主に咳や痰、気管支炎、喘息などの呼吸器系の症状に用いられてきました。特に鎮咳・去痰作用が良く知られており痰が絡む咳に有効です。
含有成分の1つに粘液質の一種・ムチンがあり、粘膜保護作用で気管支の粘膜を覆い、外部からの刺激を減らしてくれるため、この作用によって気道を浄化します。
また、コルツフットには苦味質が含まれるため健胃作用があり、胃液を分泌して胃もたれや消化不良の症状を改善する働きもあります。そのほかフラボノイドによる利尿作用や発汗作用があるため、風邪などの時に体内の熱を外に出したり、毒素を排出するのにも役立ちます。
多量摂取は避けること
ちなみにコルツフットには、ピロリジジンアルカロイドという成分が含まれています。通常量の使用であれば副作用の問題はないとされていますが、肝毒性があり多量摂取すると肝臓がんなど疾患につながるといわれています。※アメリカでは内用が禁止・ドイツのコミッションEでは葉のみ利用できます。
気管支カタルの際の乾咳・慢性の咳・口腔及び咽頭の炎症
主な作用
- 刺激緩和作用
- 粘膜保護作用
- 鎮咳作用
- 去痰作用
- 利尿作用
- 健胃作用
- 強壮作用
禁忌・副作用
- 妊娠中・授乳期間中の使用は控えてください。
- キク科アレルギーがある人は注意が必要です。
- 多量・長期連用で肝毒性が現れる可能性があります。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない クラス2c…授乳中に使用しない クラス2d…定められた分量以上に使用しない。長期連用は不可 |
主な使い方
- 葉
コルツフットは主にハーブティー、薬用に使用されています。
ハーブティー
コルツフットのティーはのどの粘膜を保護し、空咳を鎮める作用を持ちます。咳が続くことでのどの痛みが取れない場合は、鎮痛作用のあるハーブとブレンドするとのどの痛みが緩和します。
薬用
咳などの症状には葉部が利用されますが、花を利用した湿布は湿疹、刺傷、咬傷、皮膚の炎症を治療するために、外用で皮膚にあてることがあります。つぼみは中国医学で「款冬花(かんとうか)」と呼ばれ、咳が出て呼吸困難なときや慢性の咳症状を緩和するのに用いられます。
味・香り
あまり香り・味に特徴はなく、やや渋みやとろみがある味
コルツフットの基本情報
学名 | Tussilago farfara |
英名 | coltsfoot |
和名・別名 | フキタンポポ、蕗蒲公英 |
科名 | キク科フキタンポポ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 中国〜ヨーロッパ |
使用部位 | 葉部 |
主要成分 | 粘液質、イヌリン、タンニン、フラボノイド、ピロロジジンアルカロイド |
作用 | 刺激緩和・粘膜保護・鎮咳・去痰・利尿・健胃・強壮 |
適応 | 気管支カタルの際の乾咳・慢性の咳・口腔及び咽頭の炎症 |
語源・由来
学名のうち属名のTussilagoは 、ラテン語のtussis「咳」とago「駆逐する」を組み合わせた言葉で「咳を追い払う」という意味があります。コルツフット(coltsfoot)という英名は「仔馬の足」という意味があり、葉の形が馬蹄に似ていることから名づけられました。
歴史・エピソード他
紀元前から薬草として用いられてきたハーブで、西洋の薬草療法・漢方薬の両方で鎮咳薬として利用されてきました。利用法も東西で共通する点が見られますが、中国では主に花とつぼみを、ヨーロッパでは葉を使います。
古代ギリシャ、ローマ時代から使用記録が残されており、古代ギリシャの医師・ヒポクラテスは、コルツフットの根を蜂蜜と牛乳に混ぜて肺の治療に処方したといいます。
ローマ時代の医師ディオスコリデスは著書『マテリア・メディカ』には、で「コルツフットの葉を細かく砕いて患部にあてると、炎症を治せる。」「乾燥した葉をいぶしてその煙を吸い込むと、乾咳によい」と述べました。
中世にはungula caballina「馬蹄」と呼ばれ本草書に登場するほか、中世ドイツの聖人・ヒルデガルトは皮膚病の治療に役立つハーブとして紹介しています。コルツフットは18世紀のフランスで、効果が高く評価されたハーブであったため、当時の薬屋は看板にこの植物の絵を描いて宣伝したそうです。
中国では「款冬花」が2世紀ごろの本草書『神農本草経』に登場するほか、宋代の『図経本草』に花をいぶした煙を竹筒から吸引し、咳や痰の症状を鎮める方法が記されています。
日本でも葉部は「ファルファラ葉」として『第3改正日本薬局方』に記載されていました。現在でも、咳止めのドロップやハードキャンディーに成分が利用されることがあります。