キャラウェイの特徴・形状
- 深く切れ込みのある葉を持ち、小さな白い花が咲く
- 楕円形の種子がハーブ・スパイスとして活躍
- 胃や腸など、消化器系の不調を改善させる
キャラウェイは地中海沿岸、ヨーロッパ、西アジアを原産地とする、セリ科ヒメウイキョウ属のハーブ・スパイスです。
植えてから二年目に花が咲く二年草で、和名では「ヒメウイキョウ(姫茴香)」と呼びます。
古代エジプトの医学書にも登場する歴史の古い植物で、古代からスパイスとして料理に使われていました。
植物的な特徴
草丈30~50㎝ほどに育つ植物で、茎は直立し羽状複葉(鳥の羽のように、複数の小さな葉で一枚の葉が構成される)の葉が互生します。この葉はさらに裂けていて人参の葉のような形をしています。
5月~7月になると茎先に複散形花序(一つの茎からたくさんの枝が生え、その先に花が咲く)の白い小さな花が咲きます。その後に結ぶ果実がキャラウェイシード(厳密には種子のように見える小さな果実)で、香辛料として食用できる部分になります。
キャラウェイシードは3~7mmほどの楕円形をした小さな実で、淡い黄褐色になったら茎ごと収穫し10日ほど置いて完熟してから乾燥させます。
キャラウェイの効果・効能
アニスシードやフェンネルシードと似た作用を持つとされていますが、キャラウェイは特に消化器系に効能を持つハーブです。
胃の調子を整える
キャラウェイの成分には苦味質が含まれており、唾液を分泌させるため消化促進や健胃に優れた作用をもたらします。そのため、食べ過ぎた後の胃もたれや、おなかの張りがつらいときティーなどで摂取すると症状の改善に役立つかもしれません。
また、腸管の筋肉壁に作用して腸の痙攣を抑える働きもあります。
腸内ガスを排出し、抗菌に役立つ
さらに、タンニンによる駆風作用・抗菌作用・収れん作用があることも知られています。腸内ガスの排出に役立つほか、口内炎などの症状を改善し口腔の清潔を保ってくれます。
その他の働き
そのほかキャラウェイには、母乳の出を良くする催乳作用や、月経促進作用があるとされます。穏やかな利尿作用もあり、デトックスのサポートにも役立ちます。
痰を切る働きもあるので、痰が絡む風邪の症状があるときにも取り入れることができるでしょう。
胸やけ、嘔吐、鼓腸などの胃腸障害、子供の疝痛、口臭、デトックスなど
主な作用
- 消化促進作用
- 浄化作用
- 催乳作用
- 収れん作用
- 抗菌作用
- 去痰作用
- 利尿作用
禁忌・副作用
過剰摂取は避けるようにします。
安全性・相互作用
安全性 | クラスA…相互作用が予測されない |
相互作用 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
キャラウェイの主な使い方
- 種子
- 葉
- 根
キャラウェイは主に料理、ハーブティー、お酒に使用されています。
料理
キャラウェイシードは主にスパイスとして利用し、キャベツなど消化しにくい食べ物と組み合わせると消化が良くなります。そのためドイツ料理では、よくキャベツ料理やザワークラウト、ライ麦パンに加えられています。
また、海外の料理店では、口臭予防に口直しのためにキャラウェイ単体で提供されることもあるようです。
若葉は生食でき、パセリのように刻んでサラダやスープに入れたり飾り付けに使われます。さらに、あまり見かけませんが根の部分も野菜として食用できます。
甘みがあるためお菓子に加えられることも多く、ケーキやビスケット、パンなどにもおすすめです。
ハーブティー
キャラウェイのティーは消化促進、胃もたれの解消、口臭防止に効果があるため、食後の一杯におすすめです。
あまり味がないので味・香りが欲しい場合はほかのハーブとブレンドするとよいでしょう。使う直前に軽くつぶすと成分が抽出されやすくなります
その他のドリンク
キャラウェイの種子を圧搾して得たキャラウェイオイルは、ドイツでリキュールやシュナプス(ドイツの蒸留酒)、シルバー・ブリットなどのカクテルに用いられています。イタリアでもリキュールなどに使われます。
味・香り
クセのない味でやや甘くさわやかな香り。
キャラウェイの基本情報
学名 | Carum carvi |
英名 | caraway |
和名・別名 | ヒメウイキョウ(姫茴香) |
科名 | セリ科ヒメウイキョウ属 |
分類 | 二年草 |
原産地 | 地中海沿岸、ヨーロッパ、西アジア |
使用部位 | 種子 |
主要成分 | 苦味質、タンパク質、タンニン、脂肪酸、たんぱく質 |
作用 | 消化促進、浄化促進、催乳、収れん、口腔清涼、抗菌、去痰、利尿 |
適応 | 胸やけ、嘔吐、鼓腸などの胃腸障害、子供の疝痛、口臭、デトックスなど |
語源・由来
学名のうち属名のCarumは、キャラウェイの古代ラテン語careumが変形したもので、 種小名のcarviは古代小アジアのcarviaという都市名に由来するとされています。
キャラウェイの名は、アラビア語でkarāwiyā; (カラーウィヤー)と呼ばれていたことに由来します。また、同じセリ科のディルもヒメウイキョウ(姫茴香)と呼ばれることがあります。
歴史・エピソード他
キャラウェイの歴史は古く、エジプトの医薬書『エーベルス・パピルス』にアニス、コリアンダー、ニンニクと共に記載があります。世界に広がり始めたのは紀元前3000年頃で、地中海貿易で栄えたフェニキアの商人たちによってヨーロッパ諸国に運ばれました。
古代ギリシャ時代は主に香油が用いられ、医師・薬理学者・植物学者であったディオスコリデスは、キャラウェイを強壮剤として言及し「顔色の優れない女の子」にキャラウェイのオイルを使用するようアドバイスしました。
古代ローマではローマ軍の兵隊食として根を利用し、カエサルはキャラウェイを「カラ(cara)」と呼び大切にしたそうです。もっとも古くからスパイスとしてつかわれていた植物の1つで、古代ローマ・ローマ帝国時代の調理法・料理のレシピ『アピシウス』(4世紀末~5世紀初頭)にもキャラウェイが調味料として紹介されています。
カール大帝はキャラウェイを皇帝菜園で栽培させ、中世の本草書にも幾度となく登場するほか、アラブ世界では「カラウヤ」として知られており、モロッコでも栽培が行われました。
中世からドイツで良く用いられるハーブ・スパイスで、ビンゲンの聖ヒルデガルトは、特に消化が良くなるとチーズに勧めていました。特に肺の病気にかかっている人には「有益で健康に食べられる」と述べ、また、嘔吐や吐き気に良いとしてキャラウェイを勧めています。
イギリスでもエリザベス朝の時代に調味料として用いられており、その後しばらく忘れ去られていましたが、ビクトリア女王の治世中にドイツ産の品々が流行するとキャラウェイの利用も復活しました。
日本には明治初期に渡来し、カルルスせんべいなどに加えられていたそうです。
スピリチュアルなエピソード
伝説ではキャラウェイには人や物を引きとどめる力があるといわれており、家畜に食べさせて家屋から離れるのを防いだり、夫婦・恋人同士で食べることで長く添い遂げられるといわれてきました。
キャラウェイシードを入れた品物は盗難に買うことはなかったといいます。人を結びつけるという意味で惚れ薬の材料に用いられることもありました。
ドイツの民間伝承では、子供たちを魔女から守るため両親は子供のベッド下にキャラウェイシードを置いたそうです。