チャービルの特徴・形状
- レースのような切れ込みの多い葉が特徴
- 消化不良や胃の不調を改善させてくれる
- フランス料理に欠かせない「美食家のパセリ」
チャービルは西アジア、中央アジアを原産地とするセリ科シャク属の一年草で、甘い芳香を持つためスパイスとしてイタリア料理などによく使われています。
和名ではウイキョウゼリ(茴香芹)、フランス語では「セルフィーユ(Cerfeuil)」と呼ばれます。
植物的な特徴
草丈20㎝~60㎝で葉茎はきれいな緑色をしています。葉はひし形の羽状複葉で、1.0〜1.5㎝ほどの小葉はレースのように細かく切れ込みます。
開花期は6月~7月頃で、複散形花序(茎先に複数の枝が生えてその先に花が咲く)の白い小花を多数咲かせます。果実は約1cmの細い楕円体~卵型です。
春3~4月か秋9~10月のいずれかに種をまいた後、株が20cm程度に育ったら収穫が可能です。収穫時期は花の咲く前がよく、花後に果実がなると葉が枯れてしまうため、花を咲かせないよう摘み取ることで長期間葉を収穫することができます。
効果・効能
チャービルはビタミン類(B、C)、ミネラル類(鉄分、マグネシウム)、β-カロテンなどの栄養素が含まれており、新陳代謝を活発化させ、消化の吸収を助ける働きがあります。
特に消化不良や胃腸のトラブルに有効で、胃もたれや腹部の不快感があるときに取り入れると症状の改善が期待できます。ビタミンBやクマリンには血行を促して浄化する働きがあり、高血圧などの症状を予防します。また、利尿・発汗作用を持つ成分・フラボノイドを含むため、デトックスにも役立ちます。
チャービルは精油も複数含まれています。精油成分のミルセンやα-ピネンは神経の興奮を鎮める作用があり、睡眠の質を改善して安眠へ導きます。
気分をリラックスさせたい時にチャービルのティーを飲んだり、精油の香りを嗅いでみると良いでしょう。
消化不良、食欲増進、胃もたれ、むくみなど
主な作用
- 利尿作用
- 血液浄化作用
- 消化促進作用
- 発汗作用
- 抗酸化作用
禁忌・副作用
- 妊娠中
や授乳中は多量摂取を控えます。(スパイスとしての利用はOK) - 肝毒性のあるクマリンが含まれるため、多量摂取は控えます。
- 有毒のドクゼリに似ているため、摘む際は注意が必要です。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない |
チャービルの主な使い方
- 地上部(葉・茎・果実)
チャービルは主に香辛料・料理、ハーブティー、薬用に使用されています。
香辛料・料理
チャービルは甘く爽やかな芳香のあるハーブ・スパイスですが、加熱すると香りや効能が弱まります。
そのため、調理に使う際は料理の完成直前に加えるのがおすすめです。また、同じような理由で乾燥させずに生の方のまま使うのが望ましいとされています。
フランス料理の調味料・フィーヌゼルブに使われており、パセリやバジルなどに比べるとやや高級なハーブです。フランス料理ではオムレツやサラダ、スープなどに利用され、魚や肉、ジャガイモ、豆など食材を選ばず使うことができます。
チャービルの根
チャービルも種類によっては根も食用できます。こちらは「芋」扱いとなり、「ルートチャービル(ルート:根)」と呼ばれます。
葉用のチャービルよりも根が大きく育つのが特徴で、ニンジンのような甘みがあり、フランス料理のスープやシチューなどに使われることがあります。ルートチャービルの葉は毒性があるため、食用はできません。
ハーブティー
葉のハーブティーは血液浄化、血圧降下に効果があるとされます。チャービルは消化不良を解消する働きがを持つため、食後気分がすぐれないときや不調を感じる時に飲むと不快感が鎮まります。
パセリやミントよりも繊細な香りで清涼感がありますが、飲みにくい場合は味のあるハーブとブレンドすると飲みやすくなります。
薬用
民間療法では血液浄化剤、血圧降下剤として用いられることがありました。酢で浸出したものはしゃっくりを治すのに有効と考えられています。チャービルのローションは石鹸にして利用できます。
その他
チャービルはほかの植物の近くに植えると、アリ、アブラムシ、ナメクジなどの害虫を避ける「コンパニオンプランツ」としての性質があります。
味・香り
爽やかな甘みがあり、上品さを感じる香りがある。
チャービルの基本情報
学名 | Anthriscus cerefolium |
英名 | chervil |
和名・別名 | ウイキョウゼリ(茴香芹)、セルフィーユ |
科名 | セリ科シャク属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 西アジア、中央アジア |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | ビタミンB、C、β-カロテン、鉄分、マグネシウム、フラボノイド類、精油(β-フェナンドレン、ミルセン、サビネン、β-オシネン、α-ピネン、クマリン)など |
作用 | 利尿、血液浄化、消化促進、発汗、抗酸化 |
適応 | 消化不良、胃腸の疾患、風邪、 |
語源・由来
属名のAnthriscusは「花が多い、咲き乱れた」という意味で、同じセリ科植物のツノミマツバゼリのギリシャ古名anthriskonから来ています。種小名のcerefoliumはラテン語の「ロウ質の」という意味があり、軟らかく滑らかな葉や茎の質感が蝋(ロウ)のように感じられるためこの名が付いたそうです。
歴史・エピソード他
チャービルは古代ギリシャ時代には使用されていたといわれますが、文献に初出するのは古代ローマ時代で、食用、薬用に利用されていました。
1世紀のローマの学者プリニウスや17世紀のハーバリスト・ニコラスカルペパーは胃を温める作用について言及し、カルペパーは「胃を程よく温め、ケガや打ち身で固まった血液を溶かす。食事や飲み物と一緒に取ると排尿を促し、腎結石を排出し、月経を促す。」と述べています。
ローマ時代、チャービルは優れた利尿剤・しゃっくり止めとして利用されていました。中世には魔力を持つ「希望のハーブ」として、体の不純物を浄化すると信じられたそう。中世の頃に、フランスのロワール地方の貴族が北欧から持ち帰り、栽培が始まったといわれています。
チャービルの香りはミルラ(没薬)に似ていることから、イエス・キリストが誕生したときに当方の三博士から送られた「黄金・乳香・没薬」 に結び付けられました。「新しい生命」の象徴とされ、ヨーロッパの地域によっては、聖木曜日(復活祭直前の木曜日)にチャービルの葉を使ったスープを飲むことが伝統の1つになっています。
デリケートな香りですが、フランス料理では人気が高く「美食家のパセリ」と呼ばれます。