ミスルトゥーの特徴・形状
- 他の木に寄生して生長する宿り木の一種
- 心臓や循環器系の降圧に使われてきた
- 古くは神聖視され、ギリシャ神話やケルトの儀式にも登場する
ミスルトゥーはビャクダン科(ヤドリギ科)の寄生植物で、ヨーロッパ西部・南部アジアなどが原産地。和名ではセイヨウヤドリギと呼ばれます。
基本的に地上には根を生やさず、オーク、マツ、リンゴなどの木に生える幹に宿生根を下ろして生育します。
寄生した木の樹液から養分を得ていますが、葉緑素を持っているため光合成で自ら栄養分を蓄えることもできます。セイヨウヤドリギの株は団塊状に育つため、遠くから見ると丸い塊が気にくっついているように見えます。
植物的な特徴
枝は30~100cmほどで、枝に長さ2~8㎝の革質の葉が対生します。
3~4月になると直径2~3㎝ほどの黄緑色の花が咲きます。花後に小さな白または黄色の実が熟し、種子には数個の種子が結実します。
効果・効能
ミスルトゥーは心臓や循環器系の降圧に用いられるハーブです。そのため、高血圧や合併症予防、動悸や息切れ、頭痛などの改善に効能があるとされます。
ミスルトゥーに含まれるフラボノイド類は、穏やかな降圧作用を持ちます。そのため、ミスルトゥーは他のホーソンやレモンバームなど血圧の降圧作用を持つハーブとブレンドされることがあります。伝統的にはけいれん発作、頭痛、更年期障害などの症状に用いられていました。
また、ミスルトゥ-に含まれるレクチン類や多糖類などによるがん予防効果期待されていますが、まだ研究が十分ではないため具体的な効能ははっきりしていません。
ミスルトゥーが持つ作用の詳しいメカニズムはよくわかっていないようですが、様々な含有成分による免疫賦活作用があるとされています。
高血圧、高血圧に伴う合併症予防など
主な作用
- 免疫賦活作用
- 細胞毒性作用
- 降圧作用
禁忌・副作用
- 妊娠中の人、タンパク過敏症や、結核など慢性的な感染症の人は使用しないこと。
- 悪寒、高熱、アレルギー反応などが起こることがあります。
- 長期間の使用は避けましょう。
- 果実や葉をそのまま口から摂取すると、アレルギー反応などが起こることがあります。
安全性・相互作用
安全性 | クラスA…相互作用が予測されない |
相互作用 | クラス2b…妊娠中に使用しない。 クラス2d…定められた分量以上に使用しない。長期連用は避ける。 |
ミスルトゥーの主な使い方
- 地上部(葉・茎など)
ミスルトゥーは主にハーブティー・サプリ・エキス剤に使用されています。
ハーブティー他
日本ではあまり見かけませんが、海外ではハーブティーやエキス剤・サプリメントなどで摂取されています。民間療法では秋に分枝を収穫して乾燥させた後、刻んでお茶にします。
神経性の軽い心臓障害や、血圧降下、頭痛、めまいなどの症状に効果があるとされます。子宮刺激作用があるといわれるため、妊娠中は摂取を避けるべきハーブです。
味・香り
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ミスルトゥーの基本情報
学名 | Viscum album |
英名 | mistletoe |
和名・別名 | セイヨウヤドリギ |
科名 | ビャクダン科(ヤドリギ科) |
分類 | 寄生植物 |
原産地 | ヨーロッパ~西部・南部アジア |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | フラボノイド、多糖類(アラビノガラクタンなど)、レクチン類、ポリペプチド類 |
作用 | 免疫賦活、細胞毒性、降圧 |
適応 | 高血圧(補助療法)、がんなど |
語源・由来
属名のViscumはラテン語で「宿り木」という意味があり、 種小名のalbumは「白い」を意味します。
歴史・エピソード他
ミスルトゥーは古くからヨーロッパでは神聖な木として宗教的に利用されるほか、魔術から身を守る力があると信じられてきました。
女性がミスルトゥーを持ち歩くと妊娠しやすくなる、ミスルトゥーをベビーカーの中に置いておくと妖精が子供を盗まないなど数多くの話が伝わっています。
各地の神話や伝説にも登場し、ギリシャ・ローマ神話では、トロイア側の武将で半神の英雄アイネイアスがミスルトゥーの「金色の根」で冥界への門を開けたという伝説があります。
1世紀ローマの歴史家プリニウスが著した『
12世紀ドイツのハーブ療法家・聖ヒルデガルトはミスルトゥーを痛風や肺の病に良いとし、中世には軟膏にも利用されていたそう。19世紀ドイツの神父・自然療法家であるセバスチャン・クナイプは血液循環の不調にこのハーブを勧めています。
人類学者ジェームズ・フレイザー(1854年~1941年)の著作『金枝篇』の金枝はヤドリギのことを指します。ちなみにクリスマスの飾りに使われるのはアメリカヤドリギで、セイヨウヤドリギ(ミスルトゥー)とは種類が異なります。