ホップの特徴・形状
- ビールの原料になる、雌雄異株の植物
- 不安や緊張を鎮めて、リラックス効果をもたらす
- 苦味があり、胃液を分泌させて消化不良を解消する
ホップは、アジア西部を原産とするアサ科カラハナソウ属の多年草です。ビールの原料として有名ですが、様々な薬効がありハーブとしても利用されます。
主に、ホップの「毬花(きゅうか)」と呼ばれる松かさのような部分が活用されています。
植物的な特徴
ホップはつる性植物で、左巻きのつるが約10mの長さに伸びて地面に広がる特徴があります。
根茎は地下にあり、茎や葉はトゲを持ちます。葉は長さ4~12cmの楕円形で、掌状に3~7の切れ込みがあって、葉の縁に鋸歯(ギザギザ)を持ちます。
雌雄異株の植物であるため、オスかメスかで花の形がやや異なります。雄花序には茎先に、黄色の小さな花が集まった円錐状の花序が付きます。この花はクリのイガのような独特の形をしています。
もう一方の雌花序には、葉の付け根より上に毬花が付きます。雌しべの基部に胚珠(はいしゅ)をつけた鱗片が多数ついており、厳密には花ではありませんが、この毬花がビールの苦みになります。
効果・効能
ハーブとしてのホップは、消化促進や食欲不振、抗菌、女性の症状に役立つ効能があります。
ホップにはフムロン、ルプロンと呼ばれる苦味成分が含まれます。この苦味には鎮静作用があり、中枢神経系の高ぶりを鎮めて神経性の不安や不眠を改善します。
苦味による健胃作用があるので、胃もたれや胃の不調時にハーブティーを飲むとむかつきが落ち着くかもしれません。
また、女性ホルモンに似た働きをする成分が含まれるため、「女性のためのティー」と呼ばれます。生理不順や生理痛、月経前症候群(PMS)、更年期障害など女性特有の症状を緩和するほか、同時に鎮静作用が作用するため、上記の症状に伴う精神の乱れにも有効です。
そのほかの薬効としては、タンニンなどによる抗菌作用や収れん作用、アスパラギン酸・フラボノイドによる利尿作用などが挙げられます。余分な水分を体外に出して、むくみを解消します。
ホップはビールの原料になるため、上記の効能がビールにも少し含まれるといわれています。
消化不良、不安、緊張、月経前症候群、生理痛、更年期障害、むくみなど
主な作用
- 滋養強壮作用
- 鎮静作用
- 健胃作用
- 消化促進作用
- 女性ホルモン様作用
- 抗菌作用
- 利尿作用
禁忌・副作用
子供への使用は避けてください。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
ホップの主な使い方
- 雌花(毬花)、蕾
ホップは主にビール、ハーブティーに使用されています。
ビール
ホップはビールの香りや泡の原料になり、保存性を高める働きがあります。雌花(毬花)、蕾にレモンや砂糖などを入れてシロップにするほか、シェリー酒(ワイン)等に入れて浸すと食前酒になります。
ハーブティー
苦味が強いため、他のハーブをブレンドしたり、はちみつなど甘味を加えて飲むのがおすすめです。夕食後に飲むと胃の働きを良くしてくれます。
その他
乾燥したホップはハーブピロ―にすると、不眠症の解消に役立ちます。さらにラベンダーなど鎮静系・リラックス系のハーブを加えると相乗効果が期待できます。
味・香り
ギンナンのような香りで、ビールにも使われる苦味が特徴。
ホップの基本情報
学名 | Humulus lupulus |
英名 | hop(オランダ語) |
和名・別名 | セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)、ホップ(勿布、忽布) |
科名 | アサ科カラハナソウ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | アジア西部 |
使用部位 | 雌花(毬花)、蕾 |
主要成分 | フムロン、ルプロン、タンニン、ケルセチン、苦味質、アスパラギン、フラボノイド、アミノ酸など |
作用 | 滋養強壮、鎮静、健胃、消化促進、女性ホルモン様、抗菌、防腐、収れん、利尿など |
適応 | 消化不良、不安、緊張、月経前症候群、生理痛、更年期障害、むくみなど |
語源・由来
属名のHumulusはラテン語の「大地」に由来し、蔓が伸びて地面に広がる性質ががあるためこの名が付きました。また、他の植物にも絡みついて邪魔するため、lupulus「小さな狼」という種小名が付いています。
歴史・エピソード他
ホップの歴史は古く、紀元前10世紀頃にコーカサスでホップがビールに加えられていたと伝えられますが、その後途絶えてしまいました。
古代エジプトでは薬草として用いられており、ホップがビールの香味付けに使われるようになったのは11世紀頃です。それ以前のビールには、アニス、ミント、シナモン、クローブ、ヨモギ、ホップなどを混ぜて作る「グルート」という香味料がよく利用されていました。
修道院でビールが作られ始める
中世、ビールは「ビールは液体のパン=パンはキリストの肉」という考え方から修道院で作られていました。古い記録としてはドイツのコルヴァイ修道院で、西暦822年から使用されていたという歴史があります。
11世紀ごろにドイツのルプレヒトベルク女子修道院で、グルートの代わりに初めてホップが用いられます。その後、12世紀初頭にドイツのビンゲン修道院でも作られるようになり、ヨーロッパに広まったといわれます。また、修道院で断食をするとき、ホップは栄養補給に使われることがありました。
ホップの防腐性や雑菌を防ぐ効果、爽やかな風味が評価され、以降はホップビールが主流となりました。1516年、バイエルン公ヴィルヘルム4世が「ビールの醸造には大麦、水、ホップのみを使用する」という「ビール純粋令」を発布しています。
ホップの栽培はヨーロッパでは14世紀~15世紀ごろに普及したとされ、日本には明治初期の1877年(明治10年)、北海道開拓の際に苗を持ち込んだのが始まりといわれています。