ローズヒップの特徴・形状
- 和名でイヌバラと呼ばれる、バラの果実(偽果)を使う
- ビタミンCが非常に多く含まれており「ビタミンCの爆弾」呼ばれる
- 便秘解消にも良い働きがある
ローズヒップは、和名でイヌバラと呼ばれるロサ・カニナ種(Rosa canina)の偽果のことを指します。偽果から果実(種子)を取り除いて乾燥させたものなどをハーブとして利用します。
ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアを原産地とする、バラ科バラ属の常緑低木でバラの原種の1つです。
植物的な特徴
高さ1~5mほどに育つ低木ですが、半つる性で他の木などに絡みついて伸びる性質があります。茎にはバラ科らしく細かいトゲがあります。
葉の色はエメラルドグリーン、5〜9枚の小葉で構成される羽状複葉で、葉の縁には鋸歯(ギザギザ)があります。ロサ・カニナは春咲きで、5枚の花弁を持つ、直径4~6㎝の白~ピンク色をした一重咲きの花が咲きます。
その後、秋になると果実であるローズヒップが結実します。果実は1.5~2 cm、やや黄色味のある赤色で白毛があり、触れると皮膚にかゆみが出ます。
効果・効能
ローズヒップはビタミン類やミネラル類の豊富なハーブで、特にビタミンCの含有量は100gあたり426mgといわれ、レモンの20~40倍の量になります。
ローズヒップの植物成分にはフラボノイド、ペクチン、果実酸、タンニンなどが含まれており、これらの成分が様々な効果をもたらします。
ローズヒップの作用をざっくり紹介
主に美肌、ホルモンバランスの調整、緩下、抗酸化、抗菌などの作用を持ちます。
①肌の調子を整える
ビタミンCはメラニン色素の防ぎ、肌のコラーゲン生成に役立つことから、紫外線による肌のシミ、シワ、美肌などに良い効果をもたらします。肌の潤いを保ちたい時に活用すると良いでしょう。
②ホルモンバランスを整え、アンチエイジングに役立つ
また、ビタミンCにはホルモンバランスを整える働きもあるといわれています。そのため、妊娠中や生理中に良いといわれています。また、ビタミンEやフラボノイドが含まれるため、老化を防ぐ抗酸化作用もあります。
③便秘解消に役立つ
さらに、ローズヒップは緩下作用を持つペクチンや果実酸などが含まれるため、便秘の症状がある時にも有効です。フラボノイドの穏やかな利尿作用に加えて、体内のデトックスにも役に立ちます。
④その他の効果:風邪予防、血行促進、眼精疲労解消
風邪の時にも良く、タンニンなどが持つ抗菌・抗ウイルス作用が風邪の悪化を防ぐほか、発汗による解熱にも〇。
偽果の赤い色はリコピンやβ-カロテンなどのカロテノイド色素で、血行促進、眼精疲労の解消などの働きが期待できます。
炎症や発熱などビタミンC消耗時の補助・感染症予防・便秘、ホルモンバランスの調整、月経痛、緊張、不安
主な作用
- 利尿作用
- 緩下作用
- 収れん作用
- 保湿作用
- 鎮静作用
- 抗菌作用
- 通経作用
禁忌・副作用
長期・多量摂取すると下痢の原因になることがあります。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
ローズヒップの主な使い方
- 果実
ローズヒップは主にハーブティー、料理、スキンケアなどに使用されています。
ハーブティー
ローズヒップティーは運動後やビタミンC不足、風邪予防におすすめです。緩下作用があるので、便秘気味の時に飲むとおなかの調子が良くなるでしょう。
疲労回復にはクエン酸を含むハイビスカス、便秘には整腸作用のあるジャーマンカモミールやフェンネル、緩下作用のあるダンディライオン、腹部のガスが気になるときはペパーミントなどがブレンドできます。
料理
果実は生食できますが、独特の味でかなり酸っぱいです。そのため、砂糖を加えてジャムやシロップ、ソースにしたり、乾燥させて利用する方が食べやすくなります。
クッキーやケーキ、マーマレードなどの洋菓子や、酢漬けなどに加えられます。
その他
ローズヒップのオイルには、不飽和脂肪酸のリノール酸やリノレン酸が含まれます。日焼けやシミなどの肌トラブル、スキンケアに有効です。美肌効果を期待したローズヒップ化粧水は、美白やくすみの解消、肌の透明感を保つのに使われます。
味・香り
フルーティーな香りで、ほのかに酸味がある。
ローズヒップの基本情報
学名 | Rosa canina |
英名 | rose hip、dog rose |
和名・別名 | 植物名:セイヨウイノバラ、ドッグローズ |
科名 | バラ科バラ属 |
分類 | 常緑低木 |
原産地 | ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア |
使用部位 | 偽果 |
主要成分 | ビタミンA、B、C、E、ペクチン、カロチノイド(リコピン、β-カロチン)、フラボノイド、果実酸など |
作用 | 利尿、緩下、収れん、保湿、鎮静、抗菌、抗うつ、通経、子宮強壮 |
適応 | 炎症や発熱などビタミンC消耗時の補助・感染症予防・便秘、ホルモンバランスの調整、月経痛、緊張、不安 |
語源・由来
学名のうち属名Rosaの起源はラテン語古名rosaを転用したもので、ケルト語のrhodd(ロッド)「赤」やギリシャ語のrhodon(ロドン)「バラ」が由来とされます。
種小名のcaninaは「犬」の意味があります。
英語の別名でもドッグローズ(dog rose)と呼ばれますが、由来は以下のように諸説あり、詳しいことはわかっていません。
- 狂犬病に効くと信じられていたため
- 剣を意味する英語のダックが変化したため
- 無価値なものにつけられる「イヌ(否ぬ)」からつけられたため
歴史・エピソード他
ローズヒップは、その形がラグビーボールや手りゅう弾に似ていることから、「ビタミンCの爆弾」と呼ばれるハーブです。
17世紀イギリスのハーバリストであるニコラス・カルペパーはローズヒップについて「完熟したものを砂糖漬けにすると食用としておいしいだけでなく、腹部を穏やかに固め、頭から胃への粘液の流入を防いで乾かし消化を助ける。(『カルペパーハーブ事典』より)」と述べています。18~19世紀には狂犬病の治療に用いられました。
第二次世界大戦中に、ヨーロッパの海域でドイツ海軍の潜水艦Uボートが脅威になると、イギリスは海上封鎖を行いました。
その結果、国外からオレンジの輸入がストップしたため、ビタミンC補給のためにローズヒップの採集が行われました。子供たちにはローズヒップのシロップが配られて、楽しみの一つになっていたそうです。
現在、ローズヒップやそのオイルは南米チリやアルゼンチンなどが産地として知られていますが、大航海時代にスペイン人が持ち込み、アンデスに自生したのが始まりだといわれています。