リコリスの特徴・形状
- 根に含まれる甘味成分が甘味料などに使われる
- 胃腸の炎症を抑えたり、整える働きがある
- 砂糖よりもカロリーが低く甘みが強い
リコリスはヨーロッパ南部~アフガニスタンを原産とする、マメ科カンゾウ属の多年草です。
和名では甘草と呼ばれ、根に含まれる甘味成分が食品の甘味料や漢方薬に利用されています。この甘味はなんと砂糖の50倍もあるそう。
日本ではあまり見かけませんが、サルミアッキなどリコリス菓子の材料になります。
植物的な特徴
高さ40~100㎝ほどに育つハーブで、全草に毛が生えています。葉は小葉が複数枚集まって構成される羽状複葉で、茎に互生します。葉の形はは先の尖った楕円形で全縁、「葉っぱ」らしい形です。
花期は6月~7月になると、花茎が伸びて葉腋(葉の付け根)に、薄い紫色の蝶形花を咲かせます。
散形花序なので、茎周りに小さな花が密集します。また、花弁は6枚で、雄しべと雌しべが長く突き出るのが特徴。花後につく果実は蒴果です。
効果・効能
リコリスには甘味成分の「グリチルリチン」と呼ばれる成分が含まれており、他の成分と共同して消炎、抗アレルギー、抗ウィルスなど様々な作用をもたらします。
消炎作用に加えて胃の粘膜を保護する働きがあるため、胃炎や胃潰瘍などの胃の不調や十二指腸潰瘍にの症状を改善するのに役立つとされます。さらに、この粘膜保護作用が食欲不振や下痢などの不快な症状を緩和してくれます。
また、鎮咳、去痰作用があるので喘息や気管支炎など、咳が出る症状を抑えて呼吸を楽にしてくれます。リコリスは花粉症などアレルギーによる諸症状にも対応します。
グリチルリチンにはホルモン様作用もあり、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの一種・アルドステロンに似た働きをします。このホルモンは体内で血圧維持やストレスに対処するので、うつ病などの予防にも役立つと考えられます。
そのほか、イソフラボンなどフラボノイド系成分が多く含まれるので、利尿作用や抗酸化作用もあるといわれます。
食欲不振、下痢、咳、のどの痛みなど
主な作用
- 消炎作用
- 鎮咳作用
- 去痰作用
- 抗アレルギー作用
- 抗ウイルス作用
- エストロゲン様作用
禁忌・副作用
- 妊娠中・授乳中の人は使用を避けます。
- 肝臓疾患、高血圧、腎不全の症状がある場合も使用しないでください。
- 長期・多量摂取でむくみや筋肉の弛緩が起こることがあります。
安全性・相互作用
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない クラス2d…医療従事者の監督下以外での多量摂取・長期使用は避ける。服用期間は6週間が限度。 |
相互作用 | クラスB…相互作用が起こりうるハーブ。 |
リコリスの主な使い方
- 地下茎、根
リコリスは主にハーブティー、薬用酒、料理、観賞用に使用されています。
食品
甘味料として飲み物や漬け物、醤油や和食の味付け、のど飴に使われます。海外ではサルミアッキなどのリコリス菓子や、ルートビアなどの甘味料に使われます。
また、リコリスはカロリーが低く、リコリスに含まれる甘味成分「
ハーブティー
甘味があるので、他のハーブとのブレンドがおすすめです。
胃の不調には消炎・鎮痙作用のあるジャーマンカモミールや、胃酸を抑えるメドウスイート、気分をスッキリさせるペパーミントなどがブレンドできます。痰・咳のある時は、粘膜保護作用のあるマーシュマロウなど組み合わせやすそうです。
薬用
根部は漢方薬の「甘草(カンゾウ)」として、葛根湯、甘草湯、安中散など多くの漢方処方に含まれており、日本に流通する漢方薬の約7割に含まれています。
主な薬効は鎮痛、抗炎症、胃痛、鎮咳去痰、解毒で、十二指腸潰瘍にも適応されます。
味・香り
甘みが強いが、ほのかに渋みや苦みも同時に感じられる。爽やかでさっぱりした味。
リコリスの基本情報
学名 | Glycyrrhiza glabra |
英名 | liquorice, licorice |
和名・別名 | スペインカンゾウ(スペイン甘草)、セイホクカンゾウ(西北甘草)、ヨーロッパカンゾウ |
科名 | マメ科カンゾウ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | ヨーロッパ南部~アフガニスタン |
使用部位 | 地下茎、根 |
主要成分 | サポニン、イソフラボン、フラボノイド、クマリン、カルコン |
作用 | 消炎、鎮咳、去痰、抗アレルギー、コルチコイド様・エストロゲン様、抗ウイルス、矯味(甘味) |
適応 | 食欲不振、下痢、咳、のどの痛みなど |
語源・由来
学名のGlycyrrhizaはギリシャ語のglycys「甘い」とrhiza「根」を組み合わせたもので、「甘い根」という意味があります。種小名のglabraは「無毛の」という意味です。
歴史・エピソード他
中国・日本での歴史
リコリスは中国や日本でも長く親しまれてきた薬草で、中国漢代の本草書『神農本草経』(2世紀頃)には強壮・解毒などの薬効が記されています。また、張仲景による中国最古の医学書『傷寒論』(3世紀初め)に掲載されている、数多くの処方でもリコリスが多用されました。
日本には生薬として奈良時代(8世紀頃)に中国から伝わり、正倉院に納められました。江戸時代、リコリスは甘味料として重要視され、幕命によって栽培されていました。
山梨県の甲州府にある「甘草屋敷」は、幕府御用達の甘草を作っていた場所で、ここでは年貢が免除されたそうです。
明治維新以降、外国から砂糖が輸入されると甘草の生産量は減っていきました。
ヨーロッパでの歴史
リコリスは西洋でも歴史の古いハーブで、大量の根がエジプトのツタンカーメン王の墓から発見されているそうです。
古代ギリシャ時代にはテオフラストスがリコリスについて触れており、古代ローマ時代の医師ディオスコリデスは著書『マテリア・メディカ(薬物誌)』で、抗炎症作用、のどの痛みを抑える作用ががあることを示しています。
中世では、12世紀ドイツの修道女である聖ヒルデガルトが著書『フィジカ』の中で、リコリスを声がれ、うつ、消化促進によいハーブとして紹介しています。