リンデン|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

リンデン|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて
目次

リンデンの特徴・形状

  • 和名は「西洋ボダイジュ」。黄色い花からは甘い香りが漂う
  • 神経の緊張状態を鎮めて、リラックス効果をもたらす
  • 発汗・利尿作用がありデトックスにも良い

リンデンはシナノキ科シナノキ属の落葉性高木で、ヨーロッパが原産地のハーブです。

ハーブとして利用されるリンデン(学名:Tilia ×europaea)は、近縁種のフユボダイジュとナツボダイジュの交雑種で、ハチミツの蜜源樹でもあります。

リンデンが通称ですが、フランス語由来のティユール (tilleul)の名で呼ばれることもあります。

植物的な特徴

樹高10~30mに育つ木で、大きいものは高さ50m、幹周が5mに及ぶといいます。葉先が尖ったハート形の葉は、葉脈がはっきりしており、直径6㎝~15㎝・幅6~12㎝ほどの大きさです。枝に2列で互生し、葉の縁には鋸歯(ギザギザ)があります。

初夏から夏の6月~8月頃になると、葉の付け根から淡い緑色の細長い苞葉がつき、やがて垂れ下がった花柄に多数の小さな花が咲きます。花の色はクリーム色で花弁は5枚、花序は長さ約10~15cmの長さがあり、甘い香りが漂います。

花後につく果実はくすんだ緑色で、8㎜くらいの丸型または卵型をしています。

効果・効能

リンデンは花と葉、木部(樹皮)で薬効がやや異なります。

  • 花部・・・鎮静作用
  • 葉部・・・鎮静、発汗、利尿作用
  • 木部・・・利尿作用

花と葉を含めたものを「リンデンフラワー」、木部を「リンデンウッド」と呼ぶようです。

リンデンの花の効果・効能

リンデンの花部には、ファルネソールという精油成分が含まれます。この香りが神経の乱れを落ち着かせて心をリラックスさせる作用を持ちます。

不安や緊張、神経性の頭痛や腹痛のあるとき、不眠症などの解消に良い効果をもたらしてくれるでしょう。

また、緊張が落ち着くと圧迫されていた血管が拡張されます。結果として血行が良くなるので、高血圧や動脈硬化の予防にもつながると考えられます。

リンデンの葉の効果・効能

リンデンの葉部が持つ発汗・利尿作用は植物成分のフラボノイド類によるもので、風邪や感染症時の解熱や、むくみ、余分な水分のデトックスに役立ちます。

そのほか、リンデンには鎮咳・去痰作用のあるサポニンや、消化器の粘膜を保護する粘液質など様々な成分が含まれています。

通常の使用量であれば特に副作用もなく、幅広い年代に使用できるハーブの1つです。

適応

風邪、咳、消化器の不調、高血圧、不安、不眠、片頭痛など

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 発汗作用
  • 発汗作用
  • 鎮静作用
  • 鎮痙作用

禁忌・副作用

特に知られていません。

安全性・相互作用

安全性クラス1…適切な使用において安全
相互作用クラスA…相互作用が予測されない
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

リンデンの主な使い方

使用部位

リンデンは主にハーブティーに使用されています。

ハーブティー

リンデンフラワーのハーブティーには甘い香りが、心の疲れを癒してくれます。

鎮静作用が強いため就寝前に飲むとよいハーブティーで、睡眠が浅いときにおすすめです。風邪の引き初めや、風邪でのどの痛みがあるなどにも良いでしょう。

不眠や神経性の疲労であれば、鎮静系のハーブであるパッションフラワー、バレリアン、風邪の引き初めであれば、抗菌作用があり気道を浄化するペパーミントなどがブレンドしやすいです。

料理

乾燥した花や苞葉は、粉にしてお菓子やパンの材料に加えると、リンデンの香りが楽しめます。

その他

乾燥させた花を入浴剤に用いると甘い香り・鎮静作用でリラックスできます。美容にも良く化粧水に使える他、花部を使ったティーは子供の吹き出物などに効果があるとされます。

リンデンの樹皮は繊維になり、かごや網、縄などの工芸品に使うことができます。

味・香り

ほのかに花の香りがあり、クセがなくすっきりした味。

リンデンの基本情報

学名Tilia ×europaea
英名common lime
和名・別名セイヨウシナノキ(西洋科の木)、セイヨウボダイジュ(西洋菩提樹)、ティリア
科名シナノキ科シナノキ属
分類落葉高木
原産地ヨーロッパ
使用部位花、葉
主要成分フラボノイド配糖体(ルチン、ヒペロシド、ティリロシド)、タンニン、粘液質(アラビノガラクタン)、サポニン、カフェ酸、クロロゲン酸、フェノール酸、精油(ファルネソールなど)
作用発汗、利尿、鎮静、鎮痙、保湿(外用)
適応風邪、咳、消化器の不調、高血圧、不安、不眠、片頭痛など

語源・由来

属名のTiliaはボダイジュのラテン語古名で、ptilon「翼」に由来します。羽や翼のような形をした苞葉からこの名がつけられました。種小名のeuropaeaは「ヨーロッパの」という意味です。

リンデンという名はドイツ語のLinde「シナノキ」が由来といわれます。

歴史・エピソード他

リンデンはギリシャ神話にも登場し、「千の用途を持つ木」といわれるほど多くの部位が使用される植物です。木材として家具の他、アコースティックギターを作る際の材料などに使われます。

ギリシャ神話でのリンデン

有名なエピソードに、全能の神ゼウスと息子のヘルメスが、旅人に身を変えてある村を訪れた時の物語があります。

2人は貧しい老夫婦からもてなしを受け、ゼウスはその恩に報いるため、老夫婦に願望を聞きます。

夫婦は「2人が死んでも離れ離れにならないこと」を願いました。

ゼウスはそれを聞き入れ、やがて死ぬときに夫はオークの木に、妻はリンデンの木に姿を変え、共に丘の上にそびえ立ち末永く一緒に暮らした、と伝えられます。

シューベルトの歌にも登場する

中世ヨーロッパでは自由の象徴とされ、シューベルトの歌曲集『冬の旅』5曲目には、『菩提樹(Der Lindenbaum/デア・リンデンバウム)』が収録されています。

失恋した若者が、かつてリンデンの木陰で愛をはぐくんだ思い出が歌われていますね。

ドイツに限らず、ヨーロッパでは散策道などのそばに、リンデンが街路樹として植えられることが多いようです。

参考文献

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