ラズベリーリーフの特徴・形状
- 和名は「ヨーロッパキイチゴ」。葉の部位を使用する
- 出産準備や出産後の疲労回復などに活用されてきた
- 神様のフルーツとしてギリシャ神話にも登場する
ラズベリーリーフはラズベリー(ヨーロッパキイチゴ)の葉のことで、女性特有の疾患や、お産に関わる薬効を持つため「女性のためのハーブ」「妊婦さんのハーブ」と呼ばれます。
香りに甘味があり、やや強い酸味があるのが特徴で、フランス語でラズベリーを意味する「フランボワーズ」名でお菓子やジャムによく用いられます。
植物的な特徴
バラ科キイチゴ属の落葉性低木で原産地は小アジア、高さは1~1.5mほどに育ちます。
直立する茎に、3枚の小葉で1枚の葉を構成する羽状複葉が互生します。葉の縁には細かな鋸歯(ギザギザ)が、枝にはトゲがあります。
花期は4月~6月で、5弁の白い花が咲きます。その後、6月~11月にかけて直径1.5cm~3cmほどの果実が付きます。果実の色は熟し具合によって、白→赤→黒紫色へ変化していきます。
効果・効能
ラズベリーリーフは、ヨーロッパで伝統的に妊娠後期や出産準備、出産後の疲労回復、母乳の出を良くする用途で使われてきました。
子宮や骨盤の周囲にある筋肉を和らげる働き(子宮筋調整作用)などがあり、陣痛の痛みを緩和させたり、子宮収縮を助けるそうです。これはラズベリーリーフに含まれる成分のフラガリンによるものといわれ、月経前症候群(PMS)や生理痛の改善にも役立てられます。
出産後に摂取すると母乳の分泌を良くし、体の回復を促す効果があるといわれます。
また、タンニンによる優れた収れん作用があり、軽い下痢やのどの痛み、風邪、扁桃腺やインフルエンザに関わる諸症状の改善・予防にも役立ちます。
タンニンには抗菌作用もあるので、口内炎や歯肉炎にも薬効があるといわれます。
ラズベリー果実の効能・効果
ラズベリーの果実に含まれる植物成分のエラグ酸は、肌でメラニンの産生を促すチロシナーゼを抑える働きがあります。
さらにビタミンCも含まれるので、相乗効果で美肌・美白への効果が期待されています。
また、抗酸化作用のあるエラグ酸、ビタミンC・E、アントシアニンなどが含まれるのでアンチエイジングにも効果的。その他、アントシアニンが含まれるため、眼精疲労にも良いといわれています。
月経前症候群、月経痛、母乳分泌、陣痛、粘膜の炎症、下痢など
主な作用
- 収れん作用
- 強壮作用
- 子宮筋調整作用
禁忌・副作用
- 妊娠初期の多量摂取は避けてください。
- 妊娠中に使用する場合は、使用前にかかりつけの医師へ相談してください。
安全性・相互作用
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
ラズベリーリーフの主な使い方
- 葉、果実
ラズベリー(リーフ)は主にハーブティー、料理に使用されています。
ハーブティー
出産の1~2ヶ月前(妊娠7カ月以上)から葉を使ったティーを飲むと、出産時の痛みが緩和されるといわれます。ペパーミントなどと組み合わせるとつわりによる不快感を軽くすることができます。
※服用前にかかりつけの医師に相談してください。
料理
果実をタルトやケーキ、パイなどの洋菓子に使いますが、甘酸っぱい味はスムージー、ゼリー、アイスなど冷たい飲み物・スイーツとも相性抜群です。ジャムやピューレ、ベリーソースに加えたり、蒸留酒の原料にすることもできます。
生食もでき、甘い香り成分には脂肪燃焼作用もあります。消費期限が2~3日と日持ちしませんが、冷凍すると長期保存が可能です。国産ラズベリーの旬は初夏~夏頃です。
味・香り
甘い香りがあり、ほうじ茶のような味わい。
ラズベリーリーフの基本情報
学名 | Rubus idaeus |
英名 | European (Red) Raspberry |
和名・別名 | ヨーロッパキイチゴ(ヨーロッパ木苺)、ヨーロピアンラズベリー 、フランボワーズ |
科名 | バラ科キイチゴ属 |
分類 | 落葉性低木 |
原産地 | 小アジア |
使用部位 | 葉、果実 |
主要成分 | 葉:フラガリン、タンニン、精油 果実:エラグ酸、アントシアニン、ビタミンC、E |
作用 | 葉:収れん、強壮、子宮筋調整 果実:抗酸化、疲労回復、抗肥満など |
適応 | 葉:月経前症候群、月経痛、母乳分泌、陣痛、粘膜の炎症、下痢など 果実:美白、眼精疲労、ダイエット、育毛など |
語源・由来
属名のRubusは古いラテン語で「赤い」という意味があり、種小名のidaeusはクレタ島にある「イディ山」の意味があります。古代には、この山付近でラズベリーが多く繁殖していました。
歴史・エピソード他
ラズベリーは「神様の白いフルーツ」とも呼ばれて、ギリシャ神話にも登場するハーブです。伝説では、クレタ王の娘でゼウスの養母でもあるイーデーが、ラズベリーを摘もうとした際、指(胸とも)に傷を負ってしまい、その血でラズベリーが赤くなったと伝えられます。
いつ頃から食用されたかははっきりしませんが、ラズベリーの種子がイギリスのローマ要塞で発見されたため、古代ローマ人がヨーロッパ各地にラズベリーを広めたと考えられています。4世紀には栽培も始まり、中世には修道士が滋養強壮のため栽培したといわれます。
初期キリスト教美術では「優しさ」の象徴としてアトリビュートに使用されています。ラズベリーの赤い果汁が血に見立てられ、心臓から体に愛や優しさを運ぶイメージと結びつけられました。
古くから出産や産後の回復、母乳の出を良くするハーブとして知られ、家庭薬にされていたそうです。日本には明治初期の1873年にアメリカから渡来しました。