フラックスシードの特徴・形状
- 種子からは亜麻仁油が取れるなど用途の広いハーブ
- 抗酸化作用や抗炎症作用、便秘の解消などに活用できる
- 繊維がリネンとして布の原料になる
フラックスシードはカフカス地方から中東が原産地とされるアマ科アマ属の一年草で、メディカルハーブでは種子を主に利用しますが、茎は「亜麻」として繊維などによく使われます。
日本では涼しい気候の北海道で栽培されており、4月末~5月に種まき、7月末~8月に繊維用のものを抜き取った後、1~2週間後に種子用が収穫されます。
植物的な特徴
草丈60㎝~120㎝、茎・葉どちらも細くて、線形の葉は長さ2~3㎝で茎に互生します。葉は全縁で、やや灰色がかった緑色をしています。
花期は6~8月で、直径15〜25mmの青や白色をした花を円錐花序(茎を取り巻くように花が咲く)に咲かせます。花弁の数は通常5枚で、花が終わると丸みのある蒴果をつけます。
種子は黄褐色で、平たい楕円形です。油分やたんぱく質が豊富に含まれており、種子を圧搾した油は亜麻仁油になります。
効果・効能
フラックスシードのもつ効能としては緩下、抗炎症、抗酸化、粘膜保護、鎮痙、高血圧予防、ホルモンバランスの調整作用などが知られています。
食物繊維が豊富なため、腸内の働きを活発化させて便秘や過敏性腸症候群を解消する働きがあります。また、口腔や消化器の粘膜を保護する作用があるので、咳を伴う風邪やのどの痛み、粘膜の炎症などがあるときにも有効です。
亜麻仁油の成分かつ種子にも含まれるα-リノレン酸は不飽和脂肪酸の一つで、 血管を拡張させて血液の流れを良くする働きがあります。そのため、血栓を防ぎ血圧を下げたり、動脈硬化予防に役立ちます。さらに、α-リノレン酸にはアレルギー症状を予防する効果があるとされています。
その他、フラックスシードの成分には、女性ホルモンのような働きをするフィトエストロゲンとして働くものがあり、乳がんや大腸がんのリスクを低下させるのに有効というデータもあります。生理痛や生理不順、月経前症候群(PMS)などの症状を緩和するのに役立ちます。
高血圧・糖尿病などの生活習慣病予防、アレルギー症状、のどの痛み、腸炎、生理痛、便秘など
主な作用
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
- エストロゲン様作用
- 粘膜保護作用
- 緩下作用
禁忌・副作用
- 腸閉塞の症状がある人は使用を避けるようにします。
- 種子の多量摂取は控え、十分な量の水分と一緒に取るようにしてください。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
フラックスシードの主な使い方
- 種子(厳密には果実)
フラックスシードは主に料理、ハーブティー、オイル、繊維に使用されています。
料理
フラックスシードはパンやお菓子を作る際に入れたり、炒ってからサラダなどに振りかけることができます。トッピングに利用するほか、ミュースリ(シリアルの一種)に加えられることもあります。食物繊維を摂りたい時や消化不良の時に使うと良いでしょう。食物繊維の他にもβ-カロテン、ビタミンEなどが含まれます。
ハーブティー
種子はすりつぶした後に熱湯で抽出すれば、ハーブティーにすることもできます。風邪の時やのどの炎症がある時に飲むと症状が和らぎます。ブレンドは症状次第ですが、便秘の時であれは、食物繊維の豊富な野菜などと一緒に取るとより高い効果が期待できます。※食物繊維を摂りすぎるとおなかが緩くなります。
オイル
フラックスシードを圧搾して得る亜麻仁油は、オイル全体のうち、n-3系多価不飽和脂肪酸のα-リノレン酸を52~76%も含みます。魚っぽいといわれる独特の香りと苦みがあり、空気に触れると早く乾く特性があります。栄養サプリメントとしても販売されています。
キャリアオイルや美容目的でも利用されますが、亜麻仁油は酸化しやすいため、保存に注意する必要があります。
その他
茎は繊維の原料になり「リネン」として、古代から衣類や汎用布などに加工されてきました。大麻で作った布よりもなめらかで通気性が良く、水を良く吸い込みます。その他、空気に触れるとすぐに乾燥する性質を利用してペンキや絵具、インクなどに加えられることもあります。
味・香り
ティーにはほとんど味や香りがありません。亜麻仁油(フラックスシードオイル)は、独特の苦みとえぐみがあります。
フラックスシードの基本情報
学名 | Linum usitatissimum |
英名 | Flax, Linseed |
和名・別名 | アマ(亜麻)、アマニ(亜麻仁) |
科名 | アマ科アマ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 中央アジア |
使用部位 | 種子(果実) |
主要成分 | フィトステロール、粘液質、油脂、青酸配糖体、食物繊維、β-カロテン、ビタミンE、α-リノレン酸 |
作用 | 抗酸化、抗炎症、エストロゲン様、粘膜保護、緩下など |
適応 | 高血圧・糖尿病などの生活習慣病予防、アレルギー症状、のどの痛み、腸炎、生理痛、便秘など |
語源・由来
属名のLinumはフラックスのラテン名で、種小名のusitatissimumは「とても有用な」という意味があります。この植物が食用、薬用、繊維と幅広い使い方をされていたためについた名です。
歴史・エピソード他
人類が初めて栽培した植物の1つとされ、1万年前~紀元前8000年頃にメソポタミアのチグリス川、ユーフラテス川付近やエジプトで繊維としての利用が始まったといわれます。同時期に栽培もおこなわれており、衣類のほかミイラを包む布としても使われました。
古代エジプトでフラックスは「純粋」の象徴とされ、エジプトの神官は亜麻布だけを着用したそうです。フェニキア人の地中海貿易で各地に渡り、ローマでも種子が食用に利用され、古代ギリシャでは皮膚の疾患改善や緩下などの目的で用いられました。
古代ローマの衰退後にフラックスの生産量は落ちてしまったのですが、8世紀にカール大帝はフラックスは栄養価が高く人々の健康にとって重要であると考えたため、摂取を義務付ける法律を作りました。ここで栽培数が復活したといわれます。その後、中世ヨーロッパではフランスがリネン産業の一大産地になりました。
12世紀ドイツのハーブ療法家・聖ヒルデガルトはフラックスシードには痛みや火傷、脾臓のトラブルに外用で用いることを勧めています。
中国とインドには5000年前までに伝わっていたとされます。日本では、種子採取のため江戸時代元禄年間に薬草園(小石川御薬園)で栽培されていた記録があるものの、中国から割と簡単に入手できたため栽培は定着しなかったそうです。