バジルの特徴・形状
- イタリア料理で欠かせない人気のハーブ
- 消化機能を亢進させ、神経の緊張をほぐす働きがある
- 日本では「メボウキ」と呼ばれ、目の洗浄に使われた
バジルはシソ科メボウキ属の多年草(日本では1年草)で、熱帯アジア、アフリカを原産地とします。
バジルはイタリア語のバジリコの名で呼ばれることもあり、150種以上の品種がありますが、メディカルハーブとしては甘みのある「スイートバジル」が良く使われます。
また、バジルの種子を水に浸すとゼリー状の膜(ゲル化した物質)ができる性質があり、昔はこの種子を使って目の汚れを落としていました。そのため、和名でバジルは「メボウキ(目箒)」とよばれます。
植物的な特徴
バジルの草丈は通常40~60㎝ほどで、大きいものでは90cm以上に育つこともあります。茎は直立し、葉が縦・横の交互に生えてくるため、上から見るとひし形状に見えます。
葉の大きさは5~10cm、葉の形は先の尖った卵型~楕円形で、縁に小さな鋸歯(ギザギザ)があります。また、葉表面にやや光沢があり、ほとんど毛がありません。
花期は7月後半から8月頃で、茎先にピンクまたは白色の花を穂状に咲かせます。花の大きさは約1cmで2唇形、上部の花びらには切れ込みがあります。花後に黒~褐色の果実(種子)がつきます。
効果・効能
バジルには、胃腸の調子を整える消化促進作用、神経を鎮め心を落ち着ける鎮静作用などの働きがあります。
①胃の不調を整える
特に胃炎や胃の痙攣などといった胃の不調を抑えるため、食後の満腹感がある時や吐き気がある時にハーブティーを飲むと症状が緩和されます。さらにお腹の調子を整える働きにより、便秘解消への効果も期待できます。
②神経の緊張をほぐす
バジルに含まれる精油成分のリナロールやオイゲノールには鎮静作用があるため、神経性の腹痛・頭痛がある時や、気分がピリピリしている時、不眠の時にも有効です。
③その他の働き
バジルはビタミンやミネラルといった植物由来の栄養素が豊富です。一例として、バジルに多く含まれるβ-カロテンには活性酸素を抑える働きのほか、皮膚や細胞の調子を保つ働き、目の健康に役立つ働きなど、多くのうれしい効能があります。
さらに、β-カロテン、ビタミンC、Eなどの栄養素は抗酸化作用があるため、活性酸素を抑えて体の老化を防ぎます。動脈硬化などの生活習慣病やガンの予防にも役立つでしょう。その他、タンニンによる抗菌作用などが期待できます。
消化器系の機能向上、神経性の頭痛、片頭痛、不安、リウマチ、咳、口内炎など
主な作用
- 抗酸化作用
- 抗菌作用
- 食欲促進作用
- 鎮静作用
禁忌・副作用
妊娠中の多量摂取は避けること。
安全性・相互作用
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
バジルの主な使い方
- 地上部
バジルは主に料理・ハーブティーに使用されています。
香辛料・料理
独特の甘みがありイタリア料理では定番のハーブなので、スーパーなどでも良く見かけますね。バジルは料理ではパスタやピッツァ、ソースによく使われます。
ジェノバペースト
バジル料理(調味料)の有名なものでは「ジェノバ・ペースト(バジルペースト)」が知られています。新鮮なバジルに松の実、食用オリーブ油などの材料を加えて作る、香りが良く栄養価も高いソースです。
イタリアンピッツア
バジルとモツァレラチーズ・トマトを組み合わせて作るピッツァが「マルゲリータ」で、バジルが2つの食材を引き立てる役割を果たします。また、上記の食材で作るサラダは「カプリ風サラダ」と呼ばれます。その他、チキンなどの肉料理とも相性が良いので、組み合わせてみると料理が一層おいしくなります。
イタリア料理のイメージが強いですが熱帯アジアも原産地であるため、タイ料理やベトナム料理など、東南アジア各国の料理でも使用されます。
ハーブティー
料理用ハーブのイメージが強いバジルですが、ハーブティーにも利用できます。
食後の一杯に、ペパーミントやフェンネルなど、胃腸の調子を整えて消化を促すハーブと組み合わせると不快感が解消されるでしょう。便秘の際は、効能で考えればダンディライオンやローズヒップなどの緩下作用のあるハーブが組み合わせやすいです。
薬用
水分を含むとバジルの種子を覆う、ゼリー状の物質はグルコマンナンによるもので、昔の人はこのぷよぷよした種子を目の中に入れて種子に汚れを取りました。
味・香り
スーッとしたさわやかな香りと、コショウのような辛みがある味。
バジルの基本情報
学名 | Ocimum basilicum |
英名 | sweet basil |
和名・別名 | メボウキ(目箒)、バジリコ |
科名 | シソ科メボウキ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 熱帯アジア、アフリカ |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | β-カロテン、ビタミンC、サポニン、タンニン |
作用 | 抗酸化、抗菌、殺菌、食欲促進、鎮静 |
適応 | 消化器系の機能向上、神経性の頭痛、片頭痛、不安、リウマチ、咳、口内炎など |
語源・由来
属名Ocimumの由来は、ギリシャ語のokimon「唇の形」からとられたなど諸説あるようです。
種小名のbasilicumには、ラテン語やギリシャ語でbasilikon(バシリコン)「王室/王様の植物」という意味があります。これはバジルが、蛇の王・バジリスクの毒に対する解毒剤であると考えられていたことに由来します。
歴史・エピソード他
バジルは古代エジプトやペルシャなど古い時代から使われてきたハーブで、インドの伝統医学・アーユルヴェーダでも利用されてきました。
バジルの一種であるトゥルシー(ホーリーバジル)は、古代インドでは神聖な植物の1つとして、クリシュナ神やヴィシュヌ神など主要な神々に捧げられ、バジルを育てる者は天国への道が開かれると考えられていました。また、インドでは葬儀の際に死者のそばに若枝を備え、その人が無事に黄泉の国に旅立てるよう願ったそうです。
ヨーロッパにバジルが伝わったのは、アレキサンダー大王がインドから持ち帰ったのが始まりといわれており、古代ローマの医者・ディオスコリデスはバジルについて「消化不良を引き起こすが、種子から搾取した液は憂鬱な症状に良い」と述べました。
中世ヨーロッパでも香味として料理にバジルが利用され、スープなどに加えられていました。一方で、バジルはサソリが好むハーブといわれ、葉を粉末にしたものを吸い込むと頭にサソリが沸いてくると考えられていました。
また、イタリアでバジルの甘い香りが愛を引き寄せるとされ、恋人に求愛するときにバジルの枝を手渡したそうです。そのため、バジルは「愛のハーブ」「小さな愛」とも呼ばれます。
イタリアではローマ時代には食用されていましたが、イギリスには16世紀、アメリカには17世紀と欧米各地に広まるのは遅かったようです。バジルは日本には江戸時代に中国から漢方として渡来しており、目の洗浄に役立てられました。