タイムの特徴・形状
- 繁殖力が強く育てやすい
- 最も抗菌力の強いハーブといわれる
- スーッとした香りで気分をスッキリさせる
タイムは地中海沿岸、西アジア、北アフリカなどを原産地とする、シソ科イブキジャコウソウ属の常緑小低木です。高さ20~30㎝ほどで、全草にスーッとした爽やかな芳香があります。
タイムには多くの品種がありますが、ハーブとして活用されるのは主にコモンタイム(学名:Thymus vulgaris)で、それ以外にもシトラスタイム(レモンタイム)、ワイルドタイム(ヨウシュイブキジャコウソウ)などの品種があります。
植物的な特徴
茎は株本からよく枝分かれし、長さ5mmほどの葉はやや灰色がかった緑色で、楕円形または葉の先が尖った楕円形をしています。肉厚の葉は、単葉かつ全縁(葉の縁にギザギザがない)で、茎から対生。葉には小さな透明の腺点があります。
初夏から夏にかけて茎先に、淡い紅色、白色、藤色などの小さな花を咲かせます。花の形は2唇形で4~10mm、ハチが好む香りを持つことでも知られています。
効果・効能
タイムはハーブの中で最も抗菌力が強いハーブといわれています。これは主に精油成分のチモール、カルバクロールに由来するもので、口内や消化器の消毒、風邪や感染症の予防に効果を発揮します。
既に症状が現れ始めている場合でも、気管支を浄化し、痰を取り除く働きをしてくれます。この鎮咳・去痰作用はタイムに含まれるサポニンという成分によるもので、ぜんそくにも効果があるとされています。
また、鎮痙作用を持つアピゲニンなども含まれるため、末梢神経の痛みにも〇。リウマチなどの関節痛や痛風にも効果が期待できます。
さらに、唾液や胃液の分泌を促す作用があり、消化不良や胃もたれなどの症状にも良いとされています。
胃の不調時にタイムを服用すると、消化を助け気分をスッキリさせる効果も。タイム独特の爽やかな香りは、記憶力や集中力を高めるのにも役立ちます。
消化不良、気管支炎、感染症、喘息の発作、風邪、記憶力や集中力の向上、リウマチ、痛風、関節炎など
主な作用
- 抗菌作用
- 殺菌作用
- 鎮痙作用
- 鎮痛作用
- 消毒作用
- 防腐作用
- 鎮咳作用
禁忌・副作用
- 妊娠中は使用を避けるべきハーブです。
- 高血圧、てんかんなどの症状がある場合も使用に注意。
安全性・相互作用
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
タイムの主な使い方
- 地上部(主に葉・茎)
タイムは主に料理、ハーブティーに使用されています。
料理
タイムは地中海料理によく使われており、肉や魚介類の臭み消しや防腐、スープやシチューの香りづけなどに用いられます。
タイムは長時間煮込んでも風味を保つ特徴があり、フランス料理のブーケガルニやエルブ・ド・プロヴァンスにも利用されます。ソーセージやサラミなどの肉加工品の保存料、各食材の香辛料に役立てられています。
ハーブティー
風邪・感染症予防や、のどのイガイガ、咳止めなどにタイムのハーブティーがおすすめです。
清涼感のあるティーですが、飲みにくい場合はほかのハーブとブレンドしたりハチミツなどを入れて味をまろやかにすると飲みやすくなります。セージなど殺菌作用のあるハーブや、粘液を保護するウスベニアオイ、消炎作用のあるジャーマンカモミールなどとブレンドするとよさそうです。
その他
残ったティーなどでうがいをすると、風邪・感染症予防に役立ちます。ハーバルバスでタイムを入れると筋肉痛の緩和に効果が期待できます。
タイムから抽出されたエッセンシャルオイル(精油)は、希釈して消毒薬や、歯磨き粉に利用できます。※精油成分のチモールやカルバクロールは肝毒性があるため、多量に使用しないでください。
味・香り
鼻にツーンと来る清涼感のある香り、ほろ苦さのある味。
タイムの基本情報
学名 | Thymus vulgaris |
英名 | Thyme |
和名・別名 | タチジャコウソウ(立麝香草)、コモンタイム |
科名 | シソ科イブキジャコウソウ属 |
分類 | 常緑小低木 |
原産地 | 地中海沿岸、西アジア、北アフリカ |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | 苦味質、タンニン、フラボノイド(アピゲニン、ルテオリン)、サポニン、精油(チモール、カルバクロール) |
作用 | 抗菌、殺菌、鎮痙、鎮痛、防腐、消毒、去痰、利尿、鎮咳 |
適応 | 消化不良、気管支炎、感染症、喘息の発作、風邪、記憶力や集中力の向上、リウマチ、痛風、関節炎など |
語源・由来
属名のThymusはギリシャ語のthymos「香らせる」に由来し、種小名のvulgarisは「普通の、通常の」という意味があります。古くは寺院で薫香を浄化に使ったそうです。
歴史・エピソード他
タイムの歴史は古く、紀元前3500年頃のシュメールで既に使用されていました。メソポタミアの粘土板医学書には、タイムを薫香に用いたことが記されています。
古代エジプトではミイラを作る時の防腐剤に使い、空気の浄化や疫病を防ぐ目的でも活用されていたそうです。香料としても用いられており、葬儀の際に棺に入れられました。
古代ギリシャ時代以降は入浴に使い、ローマ時代以降に部屋の浄化に利用されて各地に広まったといわれています。抗菌力の強さが「勇敢さ」に結び付けられ、タイムの香りを嗅ぐだけで勇気と強さが得られると信じられるようになりました。
中世には恋人や夫の騎士にタイムと小枝を刺繍したスカーフや、タイムの葉を添えた贈り物をして栄誉を称えました。
タイムはハーブティーとしても古くから活用されており、17世紀のハーバリスト・ニコラス・カルペパーは「肺を強くし、子供の百日咳にこれ以上優れた薬はない。痰を排出し、息切れを劇的に治す。」と、その作用を評価しています。また、イギリスではミツバチがタイムを好むため、巣箱の近くにタイムが植えられたそうです。
日本には明治初年に渡来しましたが、当時は薬用ではなく観賞用園芸植物として利用されました。