サフラワーの特徴・形状
- 和名では「ベニバナ」、初夏になると黄色~オレンジ色の花が咲く。
- ベニバナ油、染料など様々な使い方ができる
- 血行促進作用で体を温めるので、冷え性対策に役立つ。
サフラワーは、アジア南西部~エジプト・ナイル川上流を原産地とするキク科ベニバナ属の多年草です。
和名の「ベニバナ」というとわかりやすいでしょうか。
油の原料として良く利用されるほか、観賞用としても人気の植物ですね。黄色~オレンジの花びらからは染料も採れます。
植物的な特徴
サフラワーの草丈は1mほどに育ち、よく枝分かれする直立性の茎に楕円形の葉が互生します。葉は長さ10〜15cm、茎よりも濃い緑色で硬く、縁にトゲ状の鋸歯(ギザギザ)があります。
6 ~7月になると枝の先端に頭花が咲きます。玉ねぎの上にタンポポが咲いているような独特の形で、20〜180個ほどの花びらで形作られています。
花弁はすべて筒状花(5枚の花弁がくっつき、筒状になって1個の小花を形成する)で、初めは黄色く次第に赤みを帯びてきます。花の下で膨らんでいる部分は総苞と呼ばれる部位で、外側の総苞片は葉の形をしています。
頭花には15〜50個の種子が含まれており、これを圧搾するとベニバナ油が取れます。
効果・効能
サフラワーの花は、主に血行を良くする作用、ホルモンバランスを整える作用が知られています。
サフラワーの主な働き
①血行を改善させる
血行促進作用により体が温められるため、体の冷えや関節の痛みが和らぎます。また、血流が良くなることで発汗作用が現れ熱が体外に出されるので、風邪をひいたときの解熱にも効果が期待できます。
②ホルモンに働きかけて、女性特有の症状を和らげる
また、生理痛、生理不順や更年期障害など女性特有の症状を緩和する働きがあります。これは植物エストロゲンの一種であるリグナンによる作用と考えられ、特に通経作用が強く出ます。
③血管系の疾患予防
さらに、植物ステロールは血中のコレステロール値を下げる働きをするため、動脈硬化を防ぎ、高血圧や心筋梗塞など血管系の疾患から体を守る働きがあるとされます。
その他の作用
また、あざ、傷、痛みといった皮膚のトラブルや、関節痛に外用で使用されることがあるそう。その他、穏やかな緩下作用があるとされ、過去には下剤としても利用されてきました。
サフラワーの種子には必須脂肪酸のオレイン酸・リノール酸が含まれており、血中のコレステロールを上げない効果があるとされます。
血行不良、冷え性、動脈硬化・高血圧・脳血栓などの予防、月経不順、更年期障害など
主な作用
- 免疫系強壮作用
- 血行促進作用
- 発汗作用
- 通経作用
- 緩下作用
- 抗酸化作用
禁忌・副作用
- 妊娠中、キク科アレルギーがある場合は注意が必要です。
- 出血障害や出血性疾患、消化性潰瘍などがある場合は使用を控えるべきハーブです。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスB…相互作用が起こりうるハーブ。抗凝固薬との併用は医療従事者の監督のもと行うこと |
安全性 | クラス2b…妊娠中に使用しない クラス2d…定められた分量以上に使用しない。長期連用不可 |
サフラワーの主な使い方
- 若芽
- 花
- 種子
サフラワーは主にハーブティー、薬用、オイル、染料に使用されています。
ハーブティー
ティーは血行を良くし発汗を促すので、解熱に役立ちます。便秘が気になるときや月経不順の時にも有効です。
血行を良くしたい時はローズマリー、風邪の初期症状にエルダーフラワーを使用するなど、用途によってブレンドを変えると効果を強められます。
薬用
乾燥させた花は生薬名で「紅花(こうか)」と呼ばれます。日本薬局方にも収録されており、血行促進効果があるとされ養命酒の材料になるほか、葛根紅花湯などの漢方方剤に用いられます。
また、オイルを頭皮や爪に擦り込むと、髪と爪の成長を刺激します。
オイル
サフラワーの種子を絞った油はサフラワー油(紅花油)と呼ばれ、食用油、マーガリンやショートニングなどの材料に使います。成分は不飽和脂肪酸のリノール酸が70%を占めており、主に、コレステロール値の降下、生活習慣病予防に効果があるとされます。
食用油としては、抗酸化力の強いオレイン酸を多く含有する「ハイオレックタイプ」とリノール酸を多く含む「ハイリノールタイプ」の2種類があります。ハイリノールタイプは酸化に弱く、現在では改良されたハイオレックタイプが多く販売されています。
その他
サフラワーの花は摘んだ後、発酵・乾燥させて染料または着色料として利用できます。媒染剤によって黄色~赤色に染まります。オイルは書画用に使う墨の原料になります。
味・香り
花はやや独特の苦みがありますが、フローラル系の香りがありまろやかです。
サフラワーの基本情報
学名 | Carthamus tinctorius |
英名 | Safflower |
和名・別名 | ベニバナ(紅花)、スエムツハナ(末摘花) |
科名 | キク科ベニバナ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | アジア南西部~エジプト・ナイル川上流 |
使用部位 | 若芽、花、種子 |
主要成分 | 花:脂肪酸、リグナン、フラボノイド、ステロール 種子:オレイン酸、リノール酸 |
作用 | 免疫系強壮、血行促進、発汗、通経、緩下、抗酸化 |
適応 | 血行不良、冷え性、動脈硬化・高血圧・脳血栓などの予防、月経不順、更年期障害など |
語源・由来
学名のうち属名のCarthamusはヘブライ語の「染める」、種小名のtinctoriusは「染料の」という意味があります。
和名のベニバナ(紅花)は、『源氏物語』に登場する女性・末摘花(こちらもサフラワーの別名)の鼻が赤かったことで、これを紅鼻と見立て、漢字を変えて紅花になったという説があります。
歴史・エピソード他
サフラワー利用の痕跡は紀元前2500年前頃のものが最も古く、古代エジプトの織物にはサフラワーの染料が作られていたことが特定されています。
また、ツタンカーメンの墓からも、ベニバナから作られた花輪が発見されています。サフラワーの染料で染めた布は、宗教的な儀式の際にも用いられました。
スペイン南部にイスラム教が入ってきた頃に、乾燥した花びらが本物のサフランに似ているため、安価な代用品として使われました。ヨーロッパ各地に伝わったのは意外と遅く1551年頃とされています。
中国・日本での歴史
中国で栽培が始まったのは2~3世紀頃で、紀元前2世紀に中国の外交官張騫が西域から戻った際、サフラワーの種を持ち帰って紹介したという伝承があります。
また、北方の遊牧民族匈奴の土地(現在の甘粛省付近)でサフラワーが栽培されており、漢の武帝がこの地を占領したことで中国に広まったとも言います。
日本には3世紀または5世紀に伝来したといわれており、平安時代には千葉県の千葉県長南町で栽培がおこなわれていました。
安土桃山時代~江戸時代には京染めに欠かせない染料植物として重宝され、江戸時代に山形藩が栽培を奨励すると、最上地方が一大産地となり京や大阪で人気を博したそうです。