クランベリーの特徴・形状
- 果実は酸味が強く、ジャムやジュースに加工される
- 泌尿器系の感染症や尿路結石に良い効果があるとされる
- ビタミンが豊富なので美肌効果もある
クランベリーはツツジ科スノキ属の高山性常緑樹で、「ツルコケモモ」とも呼ばれるつる植物の一種です。
北ヨーロッパ、北アジア、北アメリカ北部など寒冷地を原産とする果樹で、現在ではマサチューセッツ州やウィスコンシン州などで多く栽培されています。
北海道などで自生することがあるそうですが、国産のクランベリーは流通しておらず、ドライのものやジャムなどが輸入されています。
植物的な特徴
樹高20cmほどの小さな低い木で、細い枝に先の尖った楕円形の小さな葉をつけます。葉の大きさは直径1~1.5㎝でつやがあり、茎から互生します。6~7月になると枝の先に、白~ピンク色で花冠が反り返った花を咲かせます。
クランベリーの果実がなるのは9月~11月上旬で、実が熟し赤く色づいたころに収穫を行います。特に果実の表面に傷がついても問題ない加工品用の実は、クランベリー畑に水を張った後に木をゆすって果実を枝から外し、それをすくって収穫します。
効果・効能
クランベリーの実は、膀胱炎や尿道炎など泌尿器系の感染症や、尿路結石に良いハーブとして使われてきました。
この効果は、クランベリーに含まれるキナ酸という成分が関係していると考えられています。キナ酸は肝臓で馬尿酸に変化し、尿中に排出されると尿の水素イオン指数(ph)が酸性化します。その結果、感染症を引き起こす大腸菌の増加を抑えられます。
また、クランベリーは美容・健康にも優れた効能を示します。ビタミンCが豊富に含まれているため、ビタミンCの不足が気になるとき、肌の調子を整えたい時におすすめです。
さらに、ポリフェノールによる優れた抗酸化作用があり、体の老化を抑えて動脈硬化などを防ぎます。デトックスを行う利尿作用などの働きもあり、体の内部から美しさを作ります。
色素成分のプロアントシアニジンが含まれるため、眼精疲労にも役立ちます。その他、抗菌効果があるので、口内の除菌などにもよいでしょう。
膀胱炎・尿道炎・尿臭・歯周病予防・むくみ・美肌・ビタミンC欠乏症など
主な作用
- 尿路への細菌の付着抑制作用
- 強壮作用
- 抗炎症作用
- 殺菌作用
- 利尿作用
禁忌・副作用
- 妊娠中の人や授乳中の人は使用に注意が必要です。
- クランベリーのジュースを飲みすぎると、胃腸障害や下痢を引き起こします。
安全性・相互作用
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
クランベリーの主な使い方
- 果実
クランベリーは主に料理、ハーブティーに使用されています。
料理
果実は非常に酸味が強いのが特徴で、生のクランベリーは酸味に加えてえぐみがあるため、ほとんどがクランベリージュースやソース、ジャムに加工されます。
甘味料を加える場合もありますが、薬効を期待する場合は果汁100%のジュースが良いといわれています。カクテルの原料になることもあり、果実酒をつくる時にも使えます。
そのほか乾燥した果実はパウンドケーキ、マフィンなどの菓子などに加えてもOK。
生のものを使用して食べる時は、加熱した後に甘味料を加えて加工します。冷凍すれば約9ヶ月保存できます。
ハーブティー
クランベリーの乾燥したものは、お湯で成分を抽出すればハーブティーとして飲むことができます。
直で食べる時ほど酸っぱくないですが、酸味が気になるときはブレンドしてから飲むと良いでしょう。手軽にビタミンCの補給ができます。
その他
ビタミンC ポリフェノールの補給用に、サプリメントが販売されています。
味・香り
お茶は少し甘酸っぱさがあり、フルーティーな味・香りを持つ。
クランベリーの基本情報
学名 | Vaccinium oxycoccos (ヨーロッパ) Vaccinium macrocarponAiton (北米) |
英名 | Cranberry |
和名・別名 | ツルコケモモ(蔓苔桃)、オオミツルコケモモ(大実蔓苔桃)、マウンテンクランベリー、リンゴンベリーなど |
科名 | ツツジ科スノキ属 |
分類 | 常緑低木 |
原産地 | 北ヨーロッパ、北アジア、北アメリカ北部 |
使用部位 | 果実 |
主要成分 | 植物酸、プロアントシアニジン、果糖、ビタミンC、フラボノイド、タンニン |
作用 | 尿の酸性化・尿路への細菌の付着抑制、強壮、利尿、抗炎症、殺菌 |
適応 | 膀胱炎・尿道炎・尿臭・歯周病予防・むくみ・美肌・ビタミンC欠乏症など |
語源・由来
属名のVacciniumは「牡牛の」「ベリー」「濃い色の花」など複数の説があり、種小名のoxycoccosは「酸っぱい液果」、macrocarponは「大きい果実」という意味があります。
英名のクランベリー(Cranberry)はcrane「鶴」とberry「食用果実」の組み合わせでできた名前です。由来については、下を向く花の形が鶴に似るためとも、クランベリーが鶴の好物であるからともいわれています。
歴史・エピソード他
古くはアメリカ先住民によって食料や染料、薬用に用いられていました。食用では、生食の他、ぺミカン(アメリカインディアンの伝統保存食でベリーや干し肉を利用する)にして利用されました。
クランベリーについて言及した初期の記録として、16世紀の探検家ジェームズ・ホワイト・ノーウッドの日記や、ジェームズ・ロジャー(1573–1609)の著書『The Land of Virginia』があり、「クランベリーをたくさん入れた樹皮のカップを持つインディアンと出会った」という記述があります。
当初はクランベリーの酸っぱさが敬遠されていましたが、蜂蜜や砂糖を入れることでおいしくなることがわかると、入植者たちはインディアンから活用方法を学び、アメリカでは広く利用されるようになりました。
アメリカの船乗りたちは、壊血病予防のためビタミンCの豊富なクランベリーを食料に加えたそうです。
アメリカ合衆国とカナダの感謝祭「Thanksgiving」では、七面鳥の丸焼きにグレービーソース・クランベリーソースを添えて食べます。