カイエンペッパーの特徴・形状
- 世界中で多くの品種が栽培されている人気のスパイス
- 辛味が体温を上昇させ、新陳代謝を促す
- 世界に広まったのは大航海時代、初めは胡椒と思われていた
カイエンペッパーは日本でいう「トウガラシ」のことで、熟成したトウガラシの実を乾燥させたものや粉末状にしたもののことを指します。
ピリッとした刺激的な辛さで人気のスパイスですね。
カイエンペッパーはナス科の多年草(温帯では一年草)で、もともとは中南米アメリカの熱帯地域が原産の植物です。
温帯の幅広い地域で育つため、現在では世界中で数多くの品種が栽培されています。
植物の特徴
草丈は60~80㎝ほどで、一つの茎からたくさんの実がなります。葉は披針形(葉の先がとがっていてもとの方がやや広い形)でやや波打っており、6月~10月になると白い花が咲きます。
特徴的な形の実は、長さが10~25cmで形は細長く、ほとんどは赤い色をしていますが、品種によって黄、橙、紫、緑などの色に分かれます。
効果・効能
カイエンペッパーには辛味成分のカプサイシンが豊富に含まれており、このカプサイシンには体温上昇、発汗、脂肪の燃焼、等様々な効果があります。
食欲不振を防ぐビタミンCを含むため、カプサイシンと合わせて胃粘膜の刺激による食欲増進効果が期待できます。
カプサイシンには末梢神経で痛みを引き起こす伝達物質(サブスタンスP)を抑える働きがあるため鎮痛効果があり、関節炎や神経痛、糖尿病性の痛みなどに、軟膏剤・クリーム・チンキ剤として用いられます。
また、体温を上げ発汗を促すため体内の新陳代謝・ダイエットにも有効。血行をよくし疲労回復に役立つほか、血中コレステロール値の低下にも効果があるとされています。脂肪を分解し肥満防止にも活用できます。
そのほか、カプサイシンの成分はローションに加えて育毛や養毛に活用されることもあるようです。
疲労回復、風邪予防、食欲増進、筋肉痛、神経痛など
主な作用
- 血行促進作用
- 胃液分泌促進作用
- 脂肪分解促進作用
- 発汗作用
- 消化促進作用
- 殺菌作用
禁忌・副作用
- 多量摂取は避けること。
- 刺激が強いため皮膚への使用は注意し、傷ついた部分には塗らないようにします。
- カイエンペッパーにアレルギーがある場合も使用を控えます。
安全性・相互作用
安全性 | (内用)クラスⅠ…適切な使用において安全 (外用)クラス2d…皮膚に傷口がある時や目の近くで使用しないこと |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
カイエンペッパーの主な使い方
- 葉
- 果実
カイエンペッパーは主に香辛料・料理、薬用に使用されています。
香辛料・料理
辛味成分のカプサイシンは熱に強いため、煮込み料理や焼きもの、炒め物などに使いやすい食材。
生は醤油や酢、泡盛と漬け込んだり、ソース、たれ、ドレッシングなどに加工でき、乾燥したものは輪切りや粉末にして味つけ、飾り付けに使えます。
カイエンペッパーはカレー、タコス、ケイジャンチキン、チリコンカンなど、熱帯地域の料理で見かける機会が多いスパイスですね。辛味づけ目的で用いられるほか、肉の臭み消しにも活用されています。
薬用
カイエンペッパーは生薬名を蕃椒(ばんしょう)と呼び、辛味性健胃薬として食欲増進、消化促進、強壮などに効果があるといわれます。
7月~10月に、熟した果実を採取して天日干ししたものを使用。民間療法的には温湿布などにして患部にあてたり、靴の中に入れてしもやけを防ぐ目的で使われてきました。
また、寒い地域では体を温めるために用いられることが多く、凍瘡・凍傷の治療に使われることがあるそうです。
その他
果実を鑑賞する目的のトウガラシ品種もあります。カイエンペッパーには防虫効果もあり、他の作物と一緒に植えて虫や害獣による被害を減らす目的で栽培されることがあります。
味・香り
ピリピリと刺激のある辛味。加熱すると少し甘みが出る。
カイエンペッパーの基本情報
学名 | Capsicum annuum |
英名 | cayenne pepper |
和名・別名 | トウガラシ(唐辛子、唐芥子、蕃椒)、チリ |
科名 | ナス科トウガラシ属 |
分類 | 多年草または低木 |
原産地 | 熱帯アメリカ |
使用部位 | 葉、果実 |
主要成分 | ビタミンC、E、β-カロテン、ルテン、クリプトキサンチン、カプサイシン |
作用 | 血行促進、胃液分泌促進、脂肪分解促進、発汗、消化促進、殺菌 |
適応 | 疲労回復、風邪予防、食欲増進、筋肉痛、神経痛など |
語源・由来
属名のCapsicumはギリシャ語のcapsa「袋」の意味で、果実の形状を説明しています。 種小名のannuumは「一年生の」という意味です。
カイエンペッパーの「カイエン」は、この植物がフランス領ギアナの首都カイエンヌで栽培されていたことが由来となっています。
歴史・エピソード他
カイエンペッパーは原産地メキシコでの歴史は古く、紀元前6000年前頃から食用されていたといいます。
世界に広まったのは比較的遅く、正確なルートは不明ですがコロンブスが1492年の航海時に西インド諸島でカイエンペッパーを発見し、胡椒と間違えて持ち帰ったのが始まりとされています。
スペインに持ち帰られると、当時高価だった黒コショウの代用として広まりました。
カイエンペッパーは1542年に「カリカット・コショウ」と記述されており、英語でカイエンペッパー(red pepper)と胡椒(pepper)が混同されているのは、上記のコロンブスによる勘違いが発端となっているようです。
16世紀にはインドにも伝来し、現地の料理に溶け込んでいきました。
日本には室町時代ごろにポルトガル人が伝えたといわれていますが、刺激が強いため食用としては普及せず観賞用や薬用に使用されたそうです。
その後、江戸時代初期の1625年(寛永2年)に漢方薬研究家の中島徳右衛門がトウガラシに様々な香辛料を加えた「七味唐辛子」を開発すると大ブームになり、日本でも一般化しました。