ガーリックの特徴
- 食卓でおなじみ、辛みと刺激で料理に味付けができる
- 抗菌作用が強く、抗酸化作用もある
- アーユルヴェーダや中国伝統医学でも活用される強壮ハーブ
ガーリックは日本ではニンニクと呼ばれる、ヒガンバナ科ネギ属の多年草。
強壮効果があり、疲労回復に役立つ野菜としてよく知られていますよね。ピリッとした辛み付けや、香りづけにも活躍してくれる料理の強い味方でもあります。
このガーリック、食用の歴史も古く、4000年以上前の古代エジプト時代には既に食用されていたそう。原産地ははっきりしませんが、西アジア~中央アジアと考えられています。
植物の特徴
草丈30㎝~60㎝ほどで葉は細長くやや白みがあり、直立する茎に5枚ほどの葉が互生します。通常、5月~7月ごろに茎先に散形花序(細い枝がたくさん出て、その先に花が咲く)の白い花が咲きます。
野菜として収穫するのは地下にある鱗茎(地下茎が肥大した部分)で、6片~8片の鱗片が白または薄紫色の薄い膜につつまれています。
ガーリックは5月中旬~6月下旬頃が最も収穫に適した時期。雨の日や雨の日が続いた後に収穫すると品質が落ちるとされています。
鱗茎を収穫する場合、花茎は栄養が奪われてしまうため摘み取ってしまいますが、花茎や若葉も食べられます。茎は「ニンニクの芽」として野菜扱いされていますね。
効果・効能
ガーリックの主な薬効は血液などの循環器系に関わる病気の予防、抗菌、抗酸化などが挙げられます。
ガーリックの主な効果・効能
①血行促進効果
毛細血管を拡張し血流の流れを良くするとともに、コレステロール値を下げるため、高血圧・動脈硬化・糖尿病などの生活習慣病予防や冷え性などに効果的です。
さらに、血液を浄化する働きもあります。
②抗菌・防腐効果
強力な抗菌・防腐作用のあるアリシン(含硫アミノ酸アリインが、酵素・アリナーゼの刺激を受けて変化したもの)が豊富に含まれているため「生物学的なペニシリン」とも呼ばれることも。
風邪や各種感染症から、体を守るのに役立つ働きがあるとされます。
③疲労回復を助ける
また、アリシンはビタミンB₁の吸収・保持力を高める働きもあり、疲れやすさやだるさを緩和してくれます。
④その他の働き
アリシンを加熱してできるアホエンには強い抗酸化作用や抗血小板凝集作用があり、記憶力の向上効果も期待できます。
その他肝臓や胆のう、胃などの消化器系の強壮や、大腸内の環境改善に用いられます。
肉体疲労・高血圧・動脈硬化などの生活習慣病の予防・上気道感染症
主な作用
- 強壮作用
- 抗酸化作用
- 抗菌作用
- コレステロール低下作用
- 小血小板凝集抑制作用
禁忌・副作用
- 妊娠中・授乳中の人、子供は多量摂取や連用を避けます。
- ワルファリンなどの血液凝固剤との併用はしないでください。
- 過剰摂取により胃腸障害が起こることがあります。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスC…相互作用が起こることが知られているハーブ。サクイナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)との薬物相互作用発現の可能性がある。 |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
主な使い方
- 鱗茎
- 若葉
- 花茎
ガーリックは主に料理、スパイス、薬用に使用されています。
料理
ガーリックは世界各国の料理に用いられており、料理に味付けをしてくれる香味野菜として重宝されてきました。
基本的には特徴的な形の鱗茎を利用しますが、葉や茎(ニンニクの芽)は炒め物やスープに活用できます。鱗茎はスライスしたものを味噌漬けや醤油漬けにするほか、油への香りづけも可能です。
一般的なガーリックの他、高温多湿な環境で熟成させた「黒ニンニク」も販売されています。
スパイス
肉や魚の臭み消しやに、スライスまたはすりおろしのガーリックが使われます。抗菌・防腐効果もあるので、料理の鮮度を保つのに一役買ってくれます。
また、ガーリックは乾燥させると、生よりもガーリック特有の臭みを抑えられます。
皮をむいたニンニクの球根を粉末状にしたものは「ガーリックパウダー」と呼ばれ、トーストの味付け(ガーリックトースト)や、他の香辛料とブレンドして調味料に使うことができます。
薬用
鱗茎を乾燥させたものは漢方や民間療法でも「大蒜(だいさん)」として用いられます。
健胃、利尿、発汗風邪の予防、冷え性予防などの作用があるとされ、食用したり、毛の生えていない部分にすりつぶした汁を塗って育毛剤にします。
その他ニンニクを薄くスライスし、その上に級を据える「ニンニク灸」も知られています。
味・香り
生だとスパイシーかつやや苦みのある味で、加熱すると辛みが抑えられる。
ガーリックの基本情報
学名 | Allium sativum |
英名 | garlic |
和名・別名 | ニンニク、蒜、大蒜、葫、忍辱 |
科名 | ヒガンバナ科ネギ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 西アジア~中央アジアと考えられている |
使用部位 | 鱗茎、若葉、花茎 |
主要成分 | アリイン、ビタミンB群、フラボノイド、α-アミノアクリン酸など |
作用 | 強壮・抗酸化・抗菌・コレステロール低下・小血小板凝集抑制 |
適応 | 肉体疲労・高血圧・動脈硬化などの生活習慣病の予防・上気道感染症など |
語源・由来
属名の Allium はニンニクの古いラテン名で「臭い」、 種小名の sativum は「栽培された」という意味です。
歴史・エピソード他
ガーリックの栽培は古代エジプト時代には既に始まっており、紀元前2500年ごろにピラミッドを建設した際、労働者たちには玉ねぎとガーリックが食料として供給されました。
ガーリックは神聖視されており、「我を助けたまえ」とガーリックの名にかけて宣誓が行われ、神にも捧げられました。
紀元前1500年以前に書かれたとされる薬物治療書『エーベルス・パピルス』には「疲労や衰弱、手足の震えを伴う神経系疾患、月経不順や堕胎、心臓・循環系疾患に効く」としてガーリックを含む22の処方が記載されています。
その後古代ギリシャ・ローマを経てヨーロッパ全土に広がった後、イスラム、中国、インドへ伝えられアーユルヴェーダや中国・漢代の『神農本草経』にもガーリックのことが記されました。
日本には朝鮮半島経由で、奈良時代以前(8世紀頃)には伝わっていたと考えられています。
ガーリックの活用方法 薬用・強壮・魔除けetc
ギリシャの医師ディオスコリデスは、ガーリックを称賛し「寄生虫を体外に出し、発汗作用がある」として蛇に噛まれた時の傷にも用いました。
ガーリックはギリシャの数学者・哲学者ピタゴラスが「スパイスの王」とみなすなど、その薬効は高く評価されていました。
当時は基本的に民衆のための食材であったようで、古代ギリシャ・ローマ時代、兵士たちの強壮に使われていたそうです。
また、ガーリックの持つ抗菌作用は、魔女や悪霊などの恐ろしい闇の力から守ってくれる魔除けとして、様々な風習を生み出しました。日本でも邪気を払うため門口に吊るすなどの文化があったようです。
一方、精進料理で使用を避けるべき食材「五葷(ごくん:辛味や臭みのある5つの野菜)」の1つとされ、仏教では使用が禁じられていました。現在でどこでも販売されているガーリックですが、普及したのは意外と遅く戦後だそうです。