イチョウの特徴
- 生命力が強く、雌雄の区別がある植物
- 記憶力の低下を防ぎ、認知症に効果があるといわれる
- 中国最古の本草書『神農本草経』にも登場
イチョウは別名ギンコウ、銀杏、公孫樹、鴨脚樹とも呼ばれる樹木の一種。
日本でも街路樹として植えられているものや、紅葉して葉が黄色くなった木を見かけますよね。
中国原産とされるイチョウは世界で最古の現生樹種とされており、ペルム紀(2億年~3億年前)に登場したといわれています。珍しい木ではないように感じますが、「生きている化石」としてレッドリストの絶滅危惧種に指定されています。
植物の特徴
イチョウは落葉高木で、育つと高さ20~30mほどになります。先が二つに割れた形を持つ葉は、秋になると黄色く色づきます。
花粉から精子を生じて受精するなど、古代植物の形質とともに雄・雌の区別があり、雌株にだけ銀杏の実が付くのが特徴です。生命力が強いことでも知られており、樹齢3000年を超えるものが現存しているそう。
銀杏の実は「イチョウの“実”」と呼ばれ食用にされていますが、中毒が起きることもあるため注意が必要です。
効果・効能
イチョウの葉には、血液をサラサラにし血行を良くする働きがあり、ドイツのコミッションEでは記憶力・集中力の低下を抑える効果が認められています。
そのためヨーロッパではイチョウの葉エキスが、認知症(アルツハイマー病)の治療にも用いられています。
ギンコライドやビロバリドなどの成分がPAF(血小板因子)を抑制し、血液循環を促します。そのため、末端神経の循環促進にも役立ち、耳鳴り、めまい、冷えからくる痛み、肩こりなどの症状や、脳卒中など血管障害からくる病気にも効果があるといわれます。
イチョウは毛細血管を保護し、活性酸素を除去する効果もあるため、体の老化防止や抗酸化による美容効果が期待できます。
PAF(血小板活性因子)阻害、血管拡張、抗酸化・刺激・発汗・収れん
主な作用
- 種子:鎮咳作用、去痰作用
- 葉:老化防止作用、抗炎症作用、抗酸化作用、コレステロール値低下作用
禁忌・副作用
- 血液凝固剤のワルファリンを使用している場合の使用は避けます。
- 過剰摂取にも注意が必要で、副作用としてはまれな軽度の胃腸障害、頭痛、アレルギー性皮膚炎などが報告されています。(アレルギー性皮膚炎を起こす可能性があるのは、イチョウ種子の外皮部分です。)
- 血液に関する薬との相互作用が認められるため、手術の7日前には使用が禁止されます。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスB…相互作用が起こりうるハーブ(葉部) |
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
主な使い方
- 葉
- 種子
- 木部
イチョウは主にハーブティー、食用に使用されています。
ハーブティー
ドライの葉や実を煎じ、成分を抽出することでティーとして飲用できます。滋養強壮などの目的で飲まれています。※ギンコール酸の副作用が起こるため、自分で採った葉や種子は使用しないようにします。
料理
日本料理や中国料理では、銀杏の実を茹でたり煎るなどして炒め物、蒸し物に調理されます。イチョウは健康な成人であれば、適切な量(1、2粒程度)の使用に限り食用として安全であるとされます。
味・香り
胃薬のような香りで、味はほとんど感じられない
イチョウの基本情報
学名 | Ginkgo biloba |
英名 | Ginkgo, Maidenhair Tree |
和名・別名 | 銀杏、公孫樹、鴨脚樹 |
科名 | イチョウ科、イチョウ属 |
原産地 | 中国原産といわれている |
分類 | 裸子植物、落葉性高木 |
使用部位 | 葉部 |
主要成分 | フラボノイド配糖体、二重フラボノイド、テルペンラクトン、ギンコール酸、バイフラボン |
作用 | PAF(血小板活性因子)阻害、血管拡張、抗酸化 |
適応 | 認知症・耳鳴り・めまい・脳血管神経障害・冷え性 |
語源・由来
学名のうち属名のGinkgoは銀杏(ギンナン)の音読みが起源で、種小名のbilobaはラテン語による造語で「2つの裂片」の意味があります。イチョウの葉が2つに割れた形をしていることから名づけられました。
日本で呼ばれるイチョウの名は、鴨足の中国名ヤーチャオが胃腸になったとされる説と、一葉(いちよう)が訛ったという説があります。
歴史・エピソード他
イチョウの葉や種子は古くから薬用に利用され、記録は中国最古の本草書『神農本草経』や『本草綱目』に遡ります。
栽培については原産地とされる中国でも10世紀以前の記録がなく、中国から日本にいつ渡来したかは不明ですが、室町時代には栽培されていたことが知られています。
日本では神社や寺院に植えられていた為、イチョウの葉や樹皮を肌につけると子宝が授かるという「子授け銀杏」、勘当された僧が泣きながらイチョウの周りを読経したという「泣き銀杏」など神社やお寺にまつわる伝説が多いです。
イチョウは戦前の関東大震災や空襲からいち早く復活したため「復興のシンボル」とされることもあります。
イチョウの葉を象った紋所も多く、これらは一般に「銀杏(いちょう)」と呼ばれます。「丸に三つ引両」「三つ銀杏」「銀杏の二葉」といったバリエーションがあり、江戸歌舞伎座の1つ中村座の定紋はイチョウとつるを組み合わせた「銀杏鶴(いちょうづる)」です。
その他、ドイツの文豪ゲーテが「銀杏の葉」Gingo biloba(1815)という題の恋愛詩を書いています。