アニスシードの特徴・形状
- キャラウェイやフェンネルの仲間で、白く小さな花が咲く
- 強くて甘い香りを持ち、カレーやお菓子の香り付けに使われる
- 胃腸の調子を整えて痛みを和らげる
アニスはエジプトなどの地中海沿岸東部地域を原産とするセリ科の一・二年草で、高さ40㎝~60㎝ほどに育つ植物です。
ハーブとして使う種に似た果実は「アニスシードまたはアニシード(aniseed)」と呼ばれ、スパイス・薬用に活用されてきました。強い香りを持つのが特徴で、主にカレーや菓子類の香りづけに用いられます。
香りの主成分はアネトールで、甘い香りがします。漢方薬として使われる八角(スターアニス)もアネトールを含むものの、植物学上では異なった分類の植物です。
果実以外の地上部は野菜として食用できますが、香りは弱いため野菜として用いられています。
植物の特徴
初夏に白く小さな花を咲かせるのが特徴で、葉は根出葉と茎から互生する葉の2種類があります。
根出葉は長さ1~5㎝、茎の葉は羽状複葉で細かく切れ込みが入ります。6月~8月、温かくなると、一つの茎から複数の方向に分かれた枝の先に、白~クリーム色の小さな花が20個ほど咲きます。
効果・効能
アニスシードには、主に健胃、駆風(腸内ガスの排除)、鎮痛、去痰(痰を切る)といった作用があります。
粘液質が含まれるため、風邪の症状や気管支炎、のどの痛みや喘息の咳を鎮めるのに効果的です。
食事を食べ過ぎてしまった時や胃腸の不調を感じる時は、アニスシードのハーブティーを飲むことで、消化が促されて症状の改善が見込めます。腸を刺激して、腸内のガスを排出しお腹の膨満感を解消してくれます。
また、精油に多く含まれるアネトールは女性ホルモンに似た働きを持つため、生理不順、月経痛、更年期障害などの症状改善や、ホルモン分泌の調整にも効果が期待できます。
胃の不調・胃もたれ・気管支炎・口臭・腸内ガス・咳・痰 消化不良・憂鬱感の回復など
主な作用
- 消化促進作用
- 消臭作用
- 去痰作用
- 鎮痙作用
- 利尿作用
- 駆風作用
禁忌・副作用
- 妊娠中の多量摂取は注意が必要です。
- 乳がん、子宮がん、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣がんの症状がある人も控えます。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
アニスシードの主な使い方
- 種子
- 根
- 根茎
アニスシードは主にハーブティー、料理、ドリンク、精油などに使用されています。
料理
アニスシードは甘い香りが強く、特に苦味もないため、ケーキやクッキーなどの菓子類やパン・ソーセージなどに香味として使われてきました。スパイスとしてカレーやソースに、臭み消し目的で魚介類、鶏料理などに加えられます。
葉も香りがあるため、サラダやスープなどに使われています。茎の方はセロリと食感が似ています。
飲み物
アニスシードはハーブティーとして飲まれるほか、リキュールや蒸留酒といったアルコール飲料の香りづけにも使われます。
アニス酒とも呼ばれるアニゼット、アブサン、ウーゾ、イエーガーマイスターなどが有名で、いずれもアニスの香りを活用し作られる薬草系リキュールです。蒸留酒にはトルコのラキ(ラク)などがあります。
精油
アニスシードを水蒸気蒸留すると、植物成分を含んだ精油が得られます。これはアニス油と呼ばれ、香料として使用する以外に、膨張感のある腹部や子供の疝痛(発作性の腹痛)に用いられることがあるそうです。
その他
食用以外ではその香りを生かして、ポプリや入浴剤に活用できます。
味・香り
爽やかな香りに、苦みと甘みが含まれた独特な味
アニスシードの基本情報
学名 | Pimpinella anisum |
英名 | anise |
和名・別名 | 西洋茴香(セイヨウウイキョウ)、コモンアニス |
科名 | セリ科、ミツバグサ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 地中海東部(アナトリア半島、ギリシア、エジプトなど) |
使用部位 | 種子 |
主要成分 | 精油、アネトール、糖類、粘液質、クマリン |
作用 | 消化促進・消臭・去痰・刺激・防腐・利尿・抗痙攣・駆風 |
適応 | 胃の不調・胃もたれ・口臭・腸内ガス・咳・痰 |
語源・由来
学名属名のPimpinellaは、ラテン語の「2つの小さな翼」という意味で、葉が2回切れているという特徴から漬けられました。anisumは「アニスのにおいがある」という意味を持ちます。
アニスの名の由来は、ギリシャ語で「アニス」と「ディル」の両方をさす「anison(アニソン)」とされていますが、anisonの語源はわかっていません。anisonが英語に転じて「anise」になりました。
歴史・エピソード他
アニスは最も古くから利用されてきたハーブの一つです。古代エジプトの医学書『エーベルス・パピルス』にも記載があり、紀元前4000年頃からミイラを作る際の臭い消し、利尿剤、胃腸薬として用いられました。
古代ギリシャ時代以降も薬草として活用されていましたが、次第に母乳の分泌を良くするハーブとみなされるようになり、中世では授乳期の女性に使用されたそうです。
ローマ時代に料理に多彩なハーブが用いられるようになると、アニスもパンやケーキに香りづけ目的で使用さるようにれました。胃もたれの解消のため、アニスケーキが食されていたそうです。そのほか健胃剤、駆虫剤、去痰剤、歯磨き粉などの用途でも使われました。
ヨーロッパでアニスが広まったきっかけは、フランスのカール大帝(シャルルマーニュ)が各地に建てた香料植物園で、9世紀頃から栽培が始まったといわれています。
植民地時代のアメリカでは、リウマチの痛みを抑えるため、タバコにアニス油とローズマリー油を混ぜてパイプでふかすという民間療法がありました。日本には明治初めに渡来しています。