アルニカの特徴
- 色鮮やかな黄色い花が特徴
- 山岳地帯で育ち、「山のタバコ」と呼ばれる
- ケガや打撲など皮膚の痛みに効果的なハーブ
アルニカはヨーロッパ原産のキク科多年草で、ヨーロッパ南西部~北欧地域の山地や牧草地、東部のウクライナまで広く分布する植物です。
和名を「西洋ウサギギク」といい、日本に自生する「ウサギギク」(花弁がウサギの耳に似ていることから名づけられた)の仲間でもあります。
ヨーロッパでは古くからの民間薬としてアルニカの頭花や根が利用され、万能薬として親しまれてきました。別名「山のタバコ」「アルプスのキンセンカ」といい、今でも打撲や捻挫、関節痛などの外部的ダメージに対し、アルニカの軟膏やクリーム、チンキ剤などが用いられます。
植物の特徴
草丈20㎝~40㎝ほどに育ち、葉は小さめで先の尖ったやや楕円形の形をしています。
6~8月にかけて、直立した茎の上に、ロゼットの形をした鮮黄色の花が咲きます。
効果・効能
アルニカは150種類以上もの薬学的に有用な成分が含まれており、消炎・鎮痛・抗菌・創傷治癒などの効果を持ちます。
特にアルニカに含まれるケイ酸(シリカ)は、打撲傷や打ち身、捻挫などによる皮膚のダメージを抑え、皮膚組織の修復に有効とされています。鎮痛作用があることから、外用でリウマチや関節炎などの関節痛・筋肉痛にも役立ちます。
主に皮膚の再生に関わるハーブですが、潜在的な毒性があるため、傷口が開いている場合や内服での使用は避けましょう。また、現在はハーブティーでの飲用も禁止されています。
保湿作用や収れん作用があり、肌トラブルや頭皮の引き締めにも活用されています。サポニンやタンニン、トリテルペンなどによる抗酸化作用も期待できます。その他、抗菌作用を利用して口内のリフレッシュにも用いられています。
打撲、捻挫、リウマチ、関節炎、口腔粘膜の炎症
主な作用
- 消炎作用
- 鎮痛作用
- 創傷治癒作用
- 抗菌作用
禁忌・副作用
- 皮膚刺激によって湿疹など現れる場合があるため、長期連用は控えます。
- 傷口の周辺に外用剤を塗ったり、内服での使用は避けること。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | (内用)クラス3…資格のある専門家の監督下でのみ使用することができるハーブ (外用)クラス2d…外傷(切り傷など)がある場合は使用しないこと |
主な使い方
- 花
- 根
薬用
ヨーロッパでは、アルニカの花や根から抽出されたアルニカのエキスが軟膏やクリーム、ジェル、外用チンキ剤に加工されてきました。花をアルコールに浸したもの瓶詰して約2週間ほど熟成させたものを、湿布やうがい薬に使うことができます。
ホメオパシー製剤としても人気で、レメディーとしては身体的、精神的な怪我やトラウマを緩和し、穏やかに自然治癒を促すとされています。「家庭の薬箱」の定番製品でもあります。
化粧品
アルニカの成分を抽出した「アルニカ花エキス」は保湿・収れん作用に加え、消炎・鎮静・血行促進・脱毛予防などの効果を持つとされています。むくみやコリを解消し、血行を良くすることからボディマッサージにも活用でき、日々の疲れにも有効です。
皮膚に潤いをもたらすのでスキンケアだけでなく、頭皮のケアにも活用できます。
味・香り
強い苦味がある。※ハーブティーとしては利用しません。
アルニカの基本情報
学名 | Arnica Montana |
英名 | arnica 、European arnica、 mountain arnica、mountain-tobacco |
和名・別名 | 西洋ウサギギク、マウンテンタバコ |
科名 | キク科ウサギギク属 |
原産地 | ヨーロッパ南西部~北欧、東欧 |
分類 | 多年草 |
使用部位 | 花、根 |
主要成分 | カロチノイド、サポニン、タンニン、トリテノイド、トリテルペン、セスキテルペンラクトン類、フラボノイド類、クマリン類、精油など |
作用 | 消炎、鎮痛、創傷治癒、抗菌 |
適応 | 打撲、捻挫、リウマチ、関節炎、口腔粘膜の炎症 |
起源・由来
学名のうち属名のArnicaは「羊の皮」という意味のギリシア語arnakis(アルナキス)に由来し、アルニカの柔らかい葉にちなんで名づけられたと考えられています。Montanaはラテン語の「山の多い」から派生したものです。
歴史・エピソード他
アルニカについて初めに言及したのは、12世紀ドイツの聖人ヒルデガルト・ビンゲンとされ、昔からアルニカは外傷によく効くハーブとして知られていました。
アルニカはヨーロッパ原産ですが、アメリカに伝わった後は先住民もあざの改善、筋肉痛、そして腰痛などに用いました。
18世紀には医学論文のテーマとして人気になり、「アルニカの使用には注意が必要であり、アルニカの治療法は少量ですぐに効果があり、その使用には常に細心の注意を払う必要がある」といった内容が記されました。この頃には既に、現在と同じく痛風、リウマチ、静脈瘤といった疾患の治療にアルニカが用いられていたようです。
ドイツの文豪ゲーテはアルニカを高く評価し、老年期になってから冠状動脈硬化症による圧迫感や痛みを感じるたび、アルニカティーを作って痛みをしのいだそうです。
また、ドイツではアルニカの安全性と有効性が評価され、100種類以上の医療用ハーブに調合されているといわれます。皮膚組織の再生に優れたアルニカは、「筋肉と打撲の守り神」と称されることもあります。