料理で香辛料を使っていると、ハーブとスパイスの違いが気になったりしませんか?
おおざっぱに「ハーブは葉っぱ的な感じ」「スパイスは辛い・刺激がある」という印象の人が多いのではないかと思います。
同じく料理に使われる調味料ですが、ハーブとスパイスはそれぞれ歴史が異なるため、別々の名称で呼ばれるようになったようです。そんなハーブとスパイスの違いや区別の仕方をまとめてみました。
ハーブとは?
ハーブは薬草を意味する
ハーブ(herb:英語)とは、生活に役立つ性質や香りのある植物のことを言います。
ラテン語で「薬草」を意味するヘルバ(herba)が語源になっていることから、英語でも薬草や薬用植物、香料植物などの意味があります。
ヨーロッパでは古くからハーブ療法が盛んだったため、薬草としての意味合いが強いようです。
種類が多い
ハーブと呼ばれる植物の数は多く、代表的なハーブ・近縁種で合わせて数万以上の種類があるといわれています。
一例として、ハーブの中でも良く知られているミント類は、現在600種以上が確認されています。
薬効が利用できる
ハーブの中でも特に健康管理や美容に活用され、薬効の有効性が認められるものは「メディカルハーブ」と呼ばれ、伝統医学をベースとした代替療法に用いられています。
ハーブの種類ごとに様々な薬効があり、心身の不調に有用な働きをもたらすほか、香りを利用してリラックス効果を与えてくれます。
薬の原料になっている
ハーブ療法の歴史は古く、前史時代から食用されるほか、ギリシャ時代には原始的な医学に使われ、それ以降も長い年月をかけて発展してきました。
ハーブは近代以降、薬の開発にも役立てられており、メドウスイートなど特定のハーブから有効成分を取り出し科学的な合成薬が作られるようになりました。
現在でも薬学の発展には欠かせない存在です。
- ハーブとは古くから薬用や香料利用されてきた植物のこと
- 生活にも役立てられてきた種類
- ヨーロッパ周辺が原産である場合が多い
ジャーマンカモミール、セージ、ディル、スペアミント、ペパーミント、タイム、ローズマリー、マジョラム、レモングラス、レモンバーム、チャイブなど
スパイスとは?
スパイスは植物性の調味料
スパイスとは植物性の調味料、香辛料、薬味という意味があり、料理に香りや風味を加えるのに使われる植物のことを言います。
スパイスは種類ごとに特有の香りを持つものが多く、古代から料理の味付けや肉や魚の臭み消し、防腐といった目的で使われてきました。
食欲を増進させる働きもあり、調理時には欠かせないものとなっています。
スパイスの定義ははっきりしていない
大航海時代以降、世界各国でスパイスが大々的に流通するようになりましたが、各国によってスパイスの定義は異なっています。
日本では、「香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものの総称(全日本スパイス協会)」などの基準が挙げられます。
砕くと香りが強くなる
スパイスは粒子の大きさごとに区分があり、植物の原形をとどめたものを「ホール」といい、粉末にしたものを「パウダー」、その中間を「粗びき」と呼んで分類します。
ホールのスパイスには、香りのもととなる精油成分などが含まれているため、砕いたり、ちぎったりすることで独自の香りが得られます。
そのため、スパイスは細かくすればするほど香りが強くなるという特徴があります。
大航海時代が始まるきっかけになった
ヨーロッパでは古くからスパイスは味付けだけでなく、肉や魚の防腐剤として食料の保存にも活用されていました。
お香の原料にもなるため需要が高かったのですが、ペッパーやクローブ、ナツメグなどのスパイスは遠く離れたインド~東南アジア地域でしか産出されず、長年イスラム地域から高い価格で購入していました。
通説では、この香辛料貿易独占状態を打ち破るために様々な海路が探索され、大航海時代が始まったとされています。
- スパイスとは香辛料として、料理に香りや風味を加えるのに使われる植物のこと
- 砕くと香りのよいものが多い
- ヨーロッパ以外のアジアや南北アメリカ原産の種類が多い
シナモン、ナツメグ、クローブ、スターアニス、コリアンダー、カルダモン、唐辛子、ペッパー、ケシの実、麻の実、オールスパイス、ガーリックなど
ハーブとスパイスを区別する定義
ハーブ・スパイスは同じく料理の風味づけに使われるため、区別に関するはっきりした定義は行われていません。
海外でも「ハーブ・スパイスの違いは何か?」という記事・トピックが多く見かけられるため、ハーブ・スパイスの定義は曖昧な場合が多いようです。
ミカンの皮を干して作る「陳皮」は漢方で使われる生薬の1つで、スパイスとしてブレンドに加えられることがありますが、ハーブとしても「オレンジピール」という名で活用されます。
このようにスパイス・ハーブ両方で活用される種類もあるため、区分が難しくなっています。
ハーブ・スパイスを区別する方法
明確な定義がないとされるハーブ・スパイスですが、区別する方法もあります。簡単に書くと、
- 自家栽培できるかどうか
- フレッシュかドライか
- 風味が強いか弱いか
- どの部位を利用するか
といった区別の仕方があります。
特に難しい判別方法ではないので、この下でひとつひとつ具体的に解説していきます。
①自家栽培できるかどうか
ヨーロッパの基準では自家栽培できる香辛料をハーブ、できないものをスパイスと分類しています。
例えばローズマリーやバジル、オレガノなどヨーロッパ地域を原産地とする植物は自家栽培できるため「ハーブ」と呼ばれます。ハーブという響きに西洋的なイメージがあるのはそのためです。
一方シナモン、クローブ、ナツメグなど東南アジアを原産地とする熱帯性の植物は、涼しい気候のヨーロッパでは栽培できません。
そのため、遠方から取り寄せる必要があり、ヨーロッパに届くまでに腐らないよう乾燥させたものが流通していました。
現在スパイスと呼ばれる種類は、乾燥した根や茎、樹の皮、果実、種子などの部位などを使用するものが多いです。
現在では当てはまらないことも
「自家栽培で育てられるかどうか」という区分は、ハーブとスパイスどちらか判断するときに役立ちそうですよね。
しかし、今日では世界各地の植物が輸入でき、本来なら南米原産である唐辛子のように家庭で栽培できるケースもあります。
一般的に「唐辛子はハーブよりもスパイスだと感じる」人が多いと思うので、ハーブ・スパイスの分類はややイメージが先行している部分があるといえます。
②フレッシュかドライか
ハーブは新鮮(フレッシュ)なもの、スパイスは乾燥(ドライ)したものという分け方もできます。
新鮮なハーブはそのまま料理に添えることができ、視覚的にも楽しめる特徴があります。
また、「自家栽培できるかどうか」で書いた通りですが、スパイスは乾燥品が多いため料理の味付けや仕上げでの使い方がメインになります。
③風味が強いか弱いか
風味はハーブの方が繊細かつ穏やかとされ、スパイスの方がストレートな強い香りを持つことが多いようです。
歴史的には、新鮮さが活用できるハーブは薬草や野菜として利用されることが多く、スパイスは料理に深みを与えるために求められてきた側面があります。
④どの部位を利用するか
主に葉の部分を利用するときにハーブと呼び、木や植物の根、茎、果実、花、種子、樹皮の部分を利用するときにスパイスと呼ぶ見方もあります。
ただし、ハーブと呼ばれる植物には、葉だけでなく根や果実、花など全草が使用できる種類もあります。
使用部位によって薬効や成分が異なることもあるので、部位によるハーブ・スパイスの区分は参考程度に見た方がよいでしょう。
まとめ
バジルやチャービル、パセリなどはハーブと呼ばれますが、スパイスとして扱われることもありますね。このような場合は、スパイス・ハーブどちらで呼んでも大きな間違いではないと考えられます。
気になったので調べてみましたが、正直なところ分類の問題なので、スパイス・ハーブを使う分には知らなくてもあまり困らないですよね。
個人的には「ハーブは薬効効果があり、主に葉や茎の部分を使う」「スパイスは香りが強くて料理に役立つ」というイメージです。