メドウスイート|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

メドウスイート|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて
目次

メドウスイートの特徴・形状

  • 白いレースのような繊細な形の花が咲く
  • 胃の炎症など消化器系の不調を鎮める
  • 医薬品アスピリンの原料になったハーブ

メドウスイートはモンゴル原産、バラ科シモツケソウ属の多年草で、日本では和名のセイヨウナツユキソウ(西洋夏雪草)の名で知られています。

また、世界で初めて化学的に合成された薬剤・アスピリンの原料となったハーブとして有名。

白い花をつけたメドウスイートはレースのように美しく、草地の女王(queen of meadow)と呼ばれることもあります。

植物的な特徴

草丈1~2mに育ち、茎には赤紫色のしわができます。葉はやや暗めの色で光沢があり、小葉が複数枚で構成される羽状複葉です。葉の形はメープル葉のように3~5つに切れ込んだ掌状で、縁には鋸歯(ギザギザ)があります。

花期は6月~9月初めごろで、小さな花の房が密集する集散花序です。花の色は白~淡いクリーム色、花弁は5~6枚ほどでアーモンドのような芳香を持ちます。

効果・効能

メドウスイートは胃の炎症や胃酸過多、風邪や膀胱炎、尿道炎などに効能のあるハーブです。

花の蕾にはサリチル酸が含まれます。サリチル酸は鎮痛・解熱剤であるアスピリンの原料として利用されており、抗炎症作用や鎮痛作用、角質を和らげる働きなどがあります。

さらに、サリチル酸には抗真菌作用があることが知られており、水虫の菌(白癬菌)が増えるのを抑える働きがあります。

胃酸の分泌を減らして胸やけなどを鎮める働きがあるので、消化器系の不調がある時にも効果的。

利尿や発汗に役立つフラボノイド類も含まれるので、デトックスやむくみ、風邪、膀胱炎、尿道炎などの症状に効果があると考えられます。特に膀胱炎の感染症に対しては、尿中の細菌を殺すために利用されることがあります。

その他、抗菌・収れん作用などを持つタンニンなどが含まれます。肌を引き締めるので、美容品の成分として使われることもあるようです。

適応

胸やけ、胃潰瘍、胃炎、風邪、膀胱炎、尿道炎、リウマチなど

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 制酸作用
  • 消化促進作用
  • 抗炎症作用
  • 抗リウマチ作用
  • 解熱作用
  • 殺菌作用
  • 発汗作用
  • 収れん作用

禁忌・副作用

  • アスピリン成分にアレルギーのある人は使用しないでください。
  • 子供への使用は避けるようにします。

安全性・相互作用

安全性クラスⅠ…適切な使用において安全
相互作用クラスA…相互作用が予測されない
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

メドウスイートの主な使い方

使用部位
  • 葉、花

メドウスイートは主にハーブティー、料理に使用されています。

ハーブティー

胃の痛みがある時や、消化不良の時などにハーブティーを飲むと症状が和らぎます。ブレンドは消炎・鎮痙作用のあるジャーマンカモミール、吐き気を抑えるペパーミントなどがおすすめです。

泌尿器形の感染症には殺菌効果のあるジュニパーベリーや、免疫力を上げるエキナセアなどが組み合わせられます。

料理

花はフルーツの煮込みやジャムなどに加えることができ、アーモンドのような香りを与えてくれます。ワイン、ビール、酢などに漬けこんで風味を移すこともできます。

その他

根からは黒色染料が取れ、草木染の染料に利用できます。媒染材や素材によって色は異なりますが、銅媒染剤などを使用すると赤褐色や黒色が現れます。そのほか、乾燥させた花はポプリに使われます。

味・香り

ハーブティーは、やや苦みがありますが飲みやすい味です。爽やかさのあるヨモギ茶に似ているともいわれます。

メドウスイートの基本情報

学名Filipendula ulmaria
英名Meadowsweet
和名・別名セイヨウナツユキソウ(西洋夏雪草)
科名バラ科シモツケソウ属
分類多年草
原産地モンゴル
使用部位葉、花
主要成分サリチル酸塩、フラボノイド、粘液質、タンニン、ビタミン類、糖類、精油
作用制酸、消化促進、抗炎症、収れん、抗リウマチ、解熱、殺菌、発汗など
適応胸やけ、胃潰瘍、胃炎、風邪、膀胱炎、尿道炎、リウマチなど

語源・由来

学名のうち属名のFilipendulaはラテン語で、「糸」を意味するFilumと「垂れ下がる」という意味のPendulusが組み合わさった言葉です。種小名のulmariaは「ニレのような」という意味で、新緑の葉がニレによく似ていることからこの名が付きました。

歴史・エピソード他

メドウスイートはMeadow「草原」、Sweet「甘い香り」といい、モンゴルなどの草原に群生する植物ですが、イギリスのウェールズにある青銅器時代の遺跡からもメドウスイートが発見されています。

ウェールズの神話では、オークの花とほうき、メドウスイートから女性が作られ、その女性には「花の顔(Blodeuwedd)」という名が与えられました。

また、ケルトでは最も神聖な3つのハーブの1つとされ、ドルイド僧たちから尊重されていたそうです。

16世紀にはストローイングハーブとして人気があり、イギリスのエリザベス1世はこのハーブの香りを好んだそうです。17世紀のハーバリストであるニコラス・カルペパーは、出血、嘔吐、下痢、過度の月経を止めることができると考えていました。

1897年に世界ではじめて合成された医薬品アスピリンは、メドウスイートのサリチル酸を利用したものです。

古代ギリシャ時代から医師のヒポクラテスらによって痛風、神経痛などの効能が知られていましたが、1838年にサリシンを分解してサリチル酸が単離できるようになると研究が進み、ドイツの化学者フェリックス・ホフマンがアセチルサリチル酸(アスピリン)の合成を成功させました。

メドウスイートは人類最古のお酒といわれる蜂蜜酒「ミード」の原料になることから、「ミードワート」とも呼ばれます。

参考文献

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