コリアンダーの特徴・形状
- 種子と葉・茎が食用でき、好き嫌いの分かれる独特の香りを持つ
- 中華料理やタイ料理でよく見かけるハーブ・スパイス
- 葉は抗酸化・美肌に良く、種子は消化促進作用がある
コリアンダーは、地中海東部沿岸を原産地とするセリ科コエンドロ属の1・2年草です。
独特の香りを持つ葉や茎は「パクチー」や「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれて、タイ料理や中華料理の香味付けによく使われています。
葉・茎・根・果実などすべての部位が使えるハーブで、特にコリアンダーシードと呼ばれる果実(種子(シード)ではなく正確には果実)の部分は球状の形を持ち、スパイスとしてカレーでは人気のスパイス。
こちらは葉とは異なり、レモンのようなクセのない爽やかな香りを放ちます。
植物的な特徴
草丈40~60cmほどに育つハーブで、明るめの緑色を持つ葉は、成長するにつれて羽状葉(小葉が葉軸の左右に羽状に並ぶ)に変化します。
花期は初夏~夏頃で、5月~7月になると散形花序(茎から複数の茎が生え、その先に花が咲く)の白い花が咲きます。繁殖力が強く丈夫なハーブで、収穫のためにカットしてもまたすぐに新しい葉が出てきます。
効果・効能
コリアンダーの葉(パクチー)
コリアンダーの葉には、抗酸化作用を持つビタミンC・Eやβ-カロテンが含まれています。血管を酸化から守り、活性酸素を抑えるため、動脈硬化・心筋梗塞・糖尿病などの生活習慣病予防や免疫力UPに役立ちます。
ビタミンC・Eは美容にも欠かせないもので、しわやたるみなどを改善するため美肌効果も得られます。
また、生の葉や茎には、L-アスコルビン酸という成分が含まれており、水銀やアルミニウム、鉛などの重金属類を体内から排出する働きがあるため、デトックスにも有効といわれています。
コリアンダーシード
コリアンダーシードには様々な精油が含まれており、消化促進作用による消化不良の解消、駆風作用による体内のガス排出、抗菌作用によある口臭予防などの効果をもたらします。
また、精油成分のピネンなどの効果で、鎮静作用と鎮痛作用によるリラックス効果があるとされています。そのため、胃もたれや食べ過ぎた時などに、コリアンダーシードのハーブティーを飲むと症状が落ち着くでしょう。その他、粘液の分泌を良くして痰を切る作用もあるといわれています。
食欲不振、腸内ガス、痰、殺菌、防腐、不安など
主な作用
- 健胃作用
- 駆風作用
- 去痰作用
- 解毒作用
- 抗菌作用
- 鎮静作用
禁忌・副作用
セリ科植物のアレルギーがある場合は注意が必要です。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
主な使い方
- 全草(葉・茎・根・種子)
コリアンダーは主にスパイス・料理、薬用に使用されています。
スパイス・料理
コリアンダーシードは完熟した果実を使用し、カレーやマリネ、お菓子、リキュールの香りづけなどに用いられます。粉末状のものが使われることが多く、相性の良いシナモン、クローブ、ナツメグ、などとブレンドし香辛料として各種料理に利用されています。
葉は野菜として活用
葉の部分は香草または野菜として活用し、生の葉を刻んで食べるほか、トウガラシやニンニクと合わせて味付けを行います。根の部分は一番香りが強く、料理の下味付け、肉や魚の臭み消しや煮込み料理に使われます。
コリアンダーは中国、タイ、インド、ベトナム、メキシコなど各国の伝統料理に使用されていますが、コリアンダーの葉を主体とした料理はなく、あくまでも香りづけに活用されます。ビタミンCが含まれるので、クエン酸などを含むレモンなどと組み合わせれば相乗効果が得られます。
薬用
漢方では果実を採取して陰干ししたものを胡荽子(こすいし)と呼び、湿疹や消化不良、歯痛の症状があるときなどに有用とされています。
民間療法としては、胃腸の調子が悪いときや咳が出る時に、紅茶にコリアンダーを数粒入れて成分を抽出した後(数分後)に飲用する方法があります。
そのほかパウダーを湿布剤にして関節痛などに外用で用いることができます。
味・香り
- 葉:独特の青臭い香りで、よくカメムシのような匂いといわれる。味はあまり特徴がない。
- 果実:柑橘類のような爽やかな香りで、ややスパイシーな味。
コリアンダーの基本情報
学名 | Coriandrum sativum |
英名 | coriander |
和名・別名 | コエンドロ、パクチー、シャンツァイ(香菜) |
科名 | セリ科コエンドロ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 地中海東部沿岸 |
使用部位 | 全草(種、葉、茎、根) |
主要成分 | β-カロテン、ビタミンC、ビタミンB1、B2、E、K、精油(ピネン、デカナール、ノナナール、リナロール)など |
作用 | 健胃、駆風、去痰、解毒、抗菌、鎮静 |
適応 | 食欲不振、腸内ガス、痰、殺菌、防腐、不安など |
語源・由来
学名のうち属名のCoriandrumは、ギリシャ語のkoris「カメムシの」とannon「アニスの実」が組み合わさった言葉で『博物誌』の著者・大プリニウス(23年 – 79年)が名づけたといわれています。
sativumはラテン語で「栽培種の」という意味があります。
英名コリアンダー(coriander)は、属名のラテン語コリアンドラム(coriandrum)から変化した仏名コリアンドル(coriandre)に由来します。
歴史・エピソード他
コリアンダーは最も古くから栽培されていた薬草の1つで、古代インド語のサンスクリット語で書かれた書物や、古代エジプトの医学書『エーベルス・パピルス』にも登場します。
エジプトでは、ツタンカーメンの墓からも発見されており、紀元前1000年ごろから、「幸福のハーブ」としてコリアンダーを死者と一緒に埋葬する習慣があったようです。
古代エジプトでは、主に調理や医療に用いられていたようで、『博物誌』には、「最も良い品質のコリアンダーはエジプト産」という記述がみられます。
古代ギリシャやローマでも同じように用いられており、医学の父ヒポクラテスは「胸焼けを防ぎ催眠薬にもなる」ハーブとしてコリアンダーを勧めました。
中国へは紀元前126年に西域に渡った張騫が持ち帰ったとされ、ここから「胡荽」の名が付きました。中国の薬学書『本草綱目』でも「生・熟したものどちらも食べられる」植物として、古代から栽培されていたことが記載されています。
そのほか中東の物語集『千夜一夜物語』にも描かれており、当時は媚薬として使われていたようです。日本では900年頃に書かれた『延喜式』に「胡荽」として記載がありますが、独特な匂いのせいかあまり普及しなかったようです。