レモングラスの特徴・形状
- レモンの香りを持ち、タイ料理で人気の食材
- 消化不良の改善やリラックス効果が得られる
- 香りには抗菌・抗真菌作用だけでなく虫よけ効果もある
レモングラスはイネ科オガルカヤ属の多年草で、インド~東南アジア原産のハーブです。
その名の通り葉はレモンの香りを持ち、トムヤムクンなどタイ料理の香り付けにも使われています。
稲の仲間なので、レモングラスの姿はお米がとれる稲の姿によく似ています。
植物的な特徴
草丈は1.5~2mほどで、地面のすぐそばから長さ約90㎝、幅1.5~2㎝ほどの細長い線形の葉が生えてきます。また、葉の中心には太い葉脈があります。
夏7月頃になると、茎先に長さ60cmの小穂状(円錐花序)の花が咲きます。
米粒のような小さな白い花で、花が付いた茎は稲のようにやや垂れ下がる特徴があります。熱帯性の植物なので、日本で栽培する場合、沖縄以外では花が咲きません。
西インド種と東インド種
オガルカヤ属には50種類以上がありますが、一般にレモングラスと呼ばれるハーブには西インド種(C. citratus)と、東インド種(C. flexuosus)があります。
西インド種は東南アジア(マレーシア)原産、東アジア種はインド周辺が原産地といわれます。
西インド種 | レモンの香りが強く、料理やハーブティーに適しているのはこちらです。 |
東インド種 | 西インド種よりも茎が赤くて、レモンの香りに加えてローズのようなやや甘い芳香があります。 |
効果・効能
レモングラスは健胃、駆風、抗菌・抗真菌、殺菌、鎮静、防虫作用など様々な薬効を持つハーブで、主に食欲不振・消化不良や、風邪や感染症の予防、虫よけなどに用いられます。
レモンの香りのもとになる精油成分・シトラールには優れた抗菌・殺菌作用があり、ウイルス性の腹痛や下痢、頭痛、インフルエンザによる症状などを和らげる働きがあります。また、この成分は腸内の細胞を刺激して、ガスを体外に排出させる駆風作用を持ちます。
食後に胃が重いときや満腹感がつらいときは、レモングラスのハーブティーを飲むとよいでしょう。
さらに、シトラールやリナロールには神経の興奮を抑えて、心を落ち着かせる鎮静作用もあります。そのため安眠に良く、不安がある時や気分の落ち込みがある時にもおすすめです。
そのほか、レモングラスの香りは虫が嫌う匂いのため防虫に役立ち、抗真菌作用を水虫の治療に利用します。
食欲不振、消化不良、風邪
主な作用
- 健胃作用
- 駆風作用
- 抗菌・抗真菌作用
- 殺菌作用
- 鎮静作用
- 矯味・矯臭作用
- 防虫作用
禁忌・副作用
妊娠中の人は使用を避けてください。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
レモングラスの主な使い方
- 地上部(主に葉・茎)
レモングラスは主にハーブティー、料理、精油に使用されています。
料理
食材の臭みを取る効果があり、魚や肉に加えるとレモンの香りが移って香ばしくなります。
ドライでもフレッシュでも利用できますが、フレッシュ(特に若葉)の方が香りは豊かになります。タイ料理のトムヤムクンのほか、スープやカレー、ソースの材料にも合います。
ハーブティー
胃腸の不調がある時や、食後、夜寝る前などに飲むと良い効果をもたらします。
食べ過ぎによる不快感がある場合は、制吐作用・駆風作用のあるペパーミント、胃の不調を整えるジャーマンカモミール、不眠であれば、バレリアンやパッションフラワーと一緒にブレンドすると、寝つきが良くなります。
精油
レモングラスの葉からは精油が採れます。リナロール、シトラール、シトロネラールなどレモングラスの香り成分には多くの効能があり、レモンの香りで気分をリフレッシュさせてくれます。
アロマテラピーとして芳香浴に使えるだけでなく、化粧品や石鹸、香水、虫よけスプレー、消臭剤の材料に幅広く活用できます。汗や体臭を抑えるでデオドラント作用もあるといわれます。
その他
ドライのレモングラスを玄関に置くと効果を発揮します。香りが良いのでポプリやサシェにも使えます。染料にもなります。
味・香り
レモンのような香りで、さわやかな酸味が感じられる味。
レモングラスの基本情報
学名 | Cymbopogon citratus |
英名 | Lemon grass |
和名・別名 | レモンガヤ、ウエストインディアン・レモングラス、 |
科名 | イネ科オガルカヤ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | インド |
使用部位 | 地上部 |
主要成分 | フラボノイド、精油(リナロール、シトロネラールなど) |
作用 | 健胃、駆風、抗菌、抗真菌、殺菌、鎮静、矯味、矯臭、防虫 |
適応 | 食欲不振、消化不良、風邪 |
語源・由来
属名のCymbopogonはギリシャ語のkymbe「小舟」とpogon「ひげ」に由来する語で、イネ科らしいイネによく似た小穂をつけ、それが髭の生えた小舟に見えることからこの名が付きました。
種小名のcitratusは「レモンのような」という意味です。
歴史・エピソード他
レモングラスはインドの伝統医学アーユルヴェーダで数千年前から利用されてきたハーブで、伝染病や熱病、鎮静などに用いられてきました。
ブータンでは竜神がレモングラスをくわえているという神話があり、昔から大切に育てられていたといわれます。
香水産業の発展と共に広まる
料理の香りづけに使われるレモングラスですが、歴史的には香料利用の方が重要視されたようで、17世紀にヨーロッパで香水産業が盛んになると、フィリピンで蒸留したものが出荷されるようになりました。
当時は高価で、エキゾチックな香りが上流階級の人々を魅了したそうです。
体に香りつけるためレモングラスのオイルが利用されたほか、関節痛や筋肉痛などを和らげるためにも用いられました。
日本での歴史
日本での導入は、明治時代の宗教家・探検家である大谷光瑞(1876年~1948年)が、六甲山を少し上った場所にある温室でレモングラスを栽培したのが始まりといわれます。日本で栽培されるのはほとんど西インド種のレモングラスで、沖縄地方のみ東インド種が多く栽培されているそうです。