「ハーブの女王」ラベンダー。香水や消臭剤、ポプリなど、その強い香りを生かした商品が数多く販売されていますよね。
そんなラベンダーの故郷(原産地)はヨーロッパの地中海沿岸。乾燥していて暖かい気候を好む植物です。
ヨーロッパからラベンダーが日本に輸入されたのは、比較的遅い時期で1800年代初頭。明治時代とされています。
ラベンダー自体は古い時代から活用されており、古代エジプト時代から使われていたという記録が残っているそう(!)。
日本に伝わるまでどのように使われてきたのか気になりませんか?
ヨーロッパでの歴史を中心に、エピソードをサクッと読める程度にまとめてみました。
古代
古代エジプト時代
ラベンダーは歴史の古いハーブの1つで、古代エジプト時代にはミイラづくりに使われる香料として、聖なる庭で栽培がおこなわれました。
古代ギリシャ時代
古代ギリシャ時代になると、怒りや執着を鎮めるハーブとして知られるようになり、大プリニウスは著書『博物誌』で、ラベンダーのティーは胸部の痛み、生理不順を緩和するほか、解毒薬にも良いとしています。
古代ギリシャ時代、ラベンダーはシリアの都市ナールダにちなんで「ナルド」と呼ばれていました。当時は高価な香料の1つ、スパイクナルド(甘松香)と混同されていたそうです。
そのため、新約聖書でキリストが注がれた「ナルドの香油」は、甘松香ではなくラベンダー原料とも考えられています。
古代ローマ時代
古代ローマ時代、ラベンダーを人々は洗濯に用いるほか、浴用香料として疲労回復や関節の痛みを和らげるために利用したといいます。
この習慣が、「洗う」という意味を持つラベンダーの属名Lavandulaの由来になったと言われています。
しかし、ギリシャ人・ローマ人は入浴にラベンダーを利用した記録がなく、作り話という説も。
真偽ははっきりしませんが、ローマの領土が拡大するとラベンダーはヨーロッパ各地に持ち込まれ、薬・香料・化粧品用に使われるようになったそうです。
中世
中世には芳香とその虫よけ効果が高く評価されました。貴族や裕福な人は、こぞって衣類にラベンダーの香りを付けたそう。
1485年に書かれた本草書『健康の園』によれば、ラベンダーは「衣類を虫食いから守る効果があり、貞節を守る作用がある」ため、聖母マリアが好んだといわれます。
修道院や薬草園で栽培される
また、中世ドイツの薬物療法家ヒルデガルトは、ラベンダーのワインが肺の疾患と肝臓の疾患に良いと述べ、ヨーロッパ全土に広まるきっかけを作ったといわれます。
主に修道院の庭や、薬草園などでラベンダーが栽培されました。
近代
ラベンダーの良い香りが上流階級で人気を集めており、肉料理や砂糖菓子、薬味など様々な料理にラベンダーが使われました。
イギリスのエリザベス1世はラベンダーのジャムを好んだといわれます。
14世紀以降香水の原料に使われる
また、14世紀にアルコールと水の分離が可能になると、香水が積極的に作られるようになりました。
早い時期からラベンダーは香水の原料に使われ、ラベンダーを配合した香水は「ラベンダー水」と呼ばれていました。アルコールを使用した香水の中では最も古いものの1つです。
1709年にドイツのケルンで販売され人気を集めた薬用酒「アクア・アドミラビリス(ケルンの水)」、のちの「ケルンの水(フランス語でオーデコロン)」にもラベンダーが少量ブレンドされました。
日本
江戸時代
江戸時代に西洋医学(蘭学)が伝わると、日本でもヨーロッパの薬草や精油や蒸留法、薬用法などの知識が集められるようになりました。
ラベンダーはオランダ語由来の「ラーヘンデル」と呼ばれ、西洋薬物書『遠西医方名物考』(1822年)など、西洋で出版された本の翻訳書や蘭学書に登場します。
明治時代以降
別の呼び方には「ヒロハラワンデル」などがあり、1819年にラベンダーの花と精油が輸入が行われ、昭和時代の1937年に、曽田政治が初めて香料目的での大規模栽培を始めたとされます。
さらに、フランス・マルセイユにあるアントワン・ヴィアル社から、5㎏のラバンデュラ・オフィキナリス(Lavandu la officinalis )の種を入荷。
1942年に、日本で初めてラベンダーの精油が完成したと伝わっています。
まとめ
「ハーブ」を一つ思い浮かべて、といわれた時にまず思い浮かびそうな種類の1つがラベンダー。
富良野のラベンダー畑が北海道の人気スポットのひとつとなっていたり、ラベンダーの香りを使ったフレグランスが数多く販売されていることからもわかるように、日本でもある意味身近なハーブの1つですよね。
人気の植物だけあって、品種改良された種類も多く見かけます。地域名が付くだけでも
- イングリッシュラベンダー
- フレンチラベンダー
- イタリアン・ラベンダー
- スパニッシュ・ラベンダー
などの分類が行われており、見た目や色も様々です。
ちなみに、古代ローマ時代に知られていたのは、イタリアンラベンダーやスパニッシュラベンダー。最も原種に近いといわれているのは「真正ラベンダー」と呼ばれるラバンディン種です。
古代や中世に厳密な植物学上の分類が行われていたわけではないので、ここで紹介したエピソードにすべて同じ種類のラベンダーが当てはまるとは限らないわけですね。
ちなみに日本では、雨が良く降る日本の気候でも育てやすいラバンディン種系が多いようです。