フェンネルの特徴・形状
- 魚料理と相性の良い「魚のハーブ」
- 甘みのある独特な香りがある
- 胃の不調や消化不良を改善し、腸内ガスを排出する
フェンネルは地中海沿岸を原産とする、セリ科ウイキョウ属の多年草で、フェンネルシードと呼ばれる果実はとしてスパイスによく利用されています。
フェンネルの株全体からは、芳香成分・アネトール由来の甘味のあるスパイシーな香りが漂います。日本や中国ではウイキョウ(茴香)という名でも呼ばれます。
植物的な特徴
草丈1~2mに達し、根元の茎は太いのですが茎全体がよく枝分かれする特徴があります。
葉は長さ30cmほど、3回~4回避けた形の羽状複葉で、細かく枝分かれした茎にレースのような細い葉がついてるように見えます。
5月~7月頃になると、複散形花序(茎先が細かく枝分かれしてその先に花が咲く)の小さな黄色い花が開花。花弁は5つで、1つの茎先に10~40個ほどの花が付きます。
花が終わった後、7月から10月頃に約7 mmの長楕円形をした茶褐色の果実が付くので、これを収穫してスパイスにします。
効果・効能
フェンネルの種子(果実)は胃の不調や消化不良、腸内ガスの排出に役立ちます。
フェンネルに含まれる特有の精油成分フェンコンが、脂肪分解や胆汁の分泌、肝臓の強化、中枢神経の鎮静などの作用をもたらします。
食べ過ぎ・飲みすぎの時にティーなどを飲むほか、料理に少量加えることで胃腸の不調防止に役立てることができるでしょう。同時に、お腹の膨満感があるときは胃腸を刺激してガスを出す働きをします。
また、フラボノイドも含まれており、発汗・利尿作用があります。むくみの解消やダイエットにもよい効果をもたらすかもしれません。
フェンネルの精油には、トランスアネトールやエストラゴールといったホルモン様作用のある物質が含まれます。そのため、女性特有の疾患や催乳、生理痛を和らげたりするのにも役立ちます。
そのほか鎮痙作用や去痰作用があり、胃痛・腹痛や風邪の時の痰切りなどにも良いといわれています。
消化不良、腹部の不快感、デトックス、便秘、生理不順、更年期障害など
主な作用
- 利尿作用
- 発汗作用
- 駆風作用
- 女性ホルモン様作用
- 催乳作用
- 健胃作用
- 解毒作用
禁忌・副作用
- 妊娠中、授乳中、セリ科アレルギーの方は使用に注意。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
フェンネルの主な使い方
- 葉、花、果実(種子)
フェンネルは主に料理、ハーブティーに使用されています。
料理
魚のハーブと呼ばれる
フェンネルにはプロビタミンA、ビタミンB、C、カルシウム、リンなどが含まれます。魚との相性が良いため、「魚のハーブ」と呼ばれており、甘い香りがあるので子供にも使いやすいハーブです。
種子はスパイス利用でき、口臭除去作用がある
果実(種子)が熟した頃に、果実の付いたまま茎を切り取って天日干しをした後、手でもみこむと収穫できます。種子はパン、カレーのスパイス、スープ、お菓子、ピクルス、リキュールなど様々な料理に加えられます。中国では五香粉の原料の1つとしても用いられます。また、種子には口臭を取り除く効果があるとされ、インドでは食後の口直しに提供されることがあるそうです。
種子以外もおいしく食べられる
葉や花は生のものをサラダやスープに用いられます。さらに、ウイキョウの鱗茎(養分を蓄えた葉が茎の付け根で重なって肥大した部分)も食用でき、この鱗茎はフィノッキオ (finocchio) と呼ばれます。野菜として玉ねぎのような使い方ができます。
ハーブティー
ハーブティーでは主に果実(種子)を使用します。消化不良や咳止めによく、シングルでも飲めますが、健胃・消炎作用のあるハーブなどと組み合わせると効果を発揮します。
一例として、肝機能の働きを良くしたい時はアーティーチョークやミルクシスル、胃腸の不調ならジャーマンカモミールやメドウスイートなどが利用できます。
フェンネルは同じセリ科のアニスやキャラウェイと共通する成分が含まれるため、この3つを使ったティーは”AFC tea”とも呼ばれます。
精油
フェンネルにはアニスやスターアニスのような独特の甘い香りがあります。精油の主成分はアネトールで健胃・去痰に効能を持つほか、フィトエストロゲンによる女性ホルモン様作用があるため、生理痛や生理不順、更年期障害に有効といわれます。
薬用
生薬としては「茴香」の名で販売されており、夏~初秋にかけて収穫した果実を干したものを利用します。フェンネルの茎や葉は入浴料としても使うことができます。
味・香り
さわやかな香りに、甘みと苦みが含まれる独特の味。
フェンネルの基本情報
学名 | Foeniculum vulgare |
英名 | Fennel |
和名・別名 | ウイキョウ(茴香) |
科名 | セリ科ウイキョウ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 地中海沿岸 |
使用部位 | 葉、花、果実(種子) |
主要成分 | 油脂、フラボノイド(ケンフェロール、クエルセチン)、フラボノイド配糖体(ルチン)、タンパク質、精油(トランスアネトール、フェンコン、エストラゴール) |
作用 | 利尿、発汗、駆風、女性ホルモン様、口臭除去、健胃、催乳、解毒など |
適応 | 消化不良、腹部の不快感、デトックス、便秘、生理不順、更年期障害など |
語源・由来
属名のFoeniculumはラテン語のfoenum「干し草」とculum「小さい」という意味があります。
由来には、フェンネルの葉が細かく枝分かれしていて、全体でみると干し草のように見えるため、フェンネルの葉や果実を乾燥させて使うため、などの説があります。 種小名のvulgareは「普通の」という意味です。
中国・日本名のウイキョウ(茴香)は、香りが腐った肉や魚の香りを回復させるため「回香」と呼ばれていたことに由来します。
歴史・エピソード他
4000年以上前からエジプトで栽培されており、紀元前1550年ごろの医学書『エーベルス・パピルス』などによれば、当時からフェンネルシードが利尿・消化促進・鎮痛・腸内ガス解消の薬用目的で利用されていました。
古代ギリシャ人はダイエットに利用したといわれ、文化的には「マラトン」と呼ばれて成功のシンボルとされました。起源は諸説ありますが、これは紀元前490年のマラトンの戦いのときに、フェンネルが茂っている場所で戦闘があったためといわれます。
中世には胃を強くする働きが高く評価され、12世紀ドイツのハーブ療法家・聖ヒルデガルトは胃腸のトラブル、肝臓や肺の疾患、消化不良、うつ病などに勧めています。その他にも「毎日フェンネルを食べれば、衰えた目が再びはっきり見えるようになる」と述べています。また、中世以降は魔力を持つ植物とされ、魔除けや呪術にも利用されました。
日本には平安時代に中国から伝わりました。平安時代中期の927年に記された書物『延喜式』に「呉母(くれのおも)」という植物名があり、これがフェンネルといわれています。