ヤロウ(ヤロー)|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

ヤロウ(ヤロー)|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて
目次

ヤロウの特徴・形状

  • ギザギザの葉っぱが特徴的
  • 消化器の不調や食欲不振などを改善させる
  • 傷の治療薬として活用されていた

ヤロウはキク科ノコギリソウ属の多年草で、ヨーロッパ、アジア、北米など幅広い地域に分布します。原産地では道端、畑などで見かけることのできる身近なハーブの1つです。

葉の形がノコギリに見えることから、和名では「西洋ノコギリソウ」、英語では”たくさんの鋸歯がある葉を持つ草”という意味の「サウザンド・ウィード(Thousand weed)」などの名前で呼ばれます。

植物的な特徴

草丈20~50㎝くらいに育ち、直立性の茎には、細かな切れ込みがあるように見える羽状複葉(複数枚の小葉で1枚の葉が構成される)が互生します。葉の長さは5~20㎝ほどで、葉の縁には鋸歯(ギザギザ)があります。

開花時期は 5~8月ごろで、茎先に白またはやや薄いピンク色の小さな花が密集します。一つの頭花(茎の頂上に複数の花が集まって1つの花に見える)に5個の舌状花がつく特徴があります。

繁殖力が強く、地下茎が這うように伸びて周囲に広がっていきます。

効果・効能

ヤロウは伝統的に、風邪や胃腸の機能障害、傷の治療薬として用いられてきました。

ヤロウに含まれる成分のうち、フラボノイドの一種アピゲニンには抗炎症作用があります。

そのため、胃炎、胃もたれ、胸焼けなどを改善し、消化不良や食欲不振の解消に役立つとされます。さらに、胃腸の痙攣を抑えて痛みを和らげます。

また、アピゲニンには神経の興奮を鎮める鎮静作用があります。心身のリラックス状態をもたらすので、不安・緊張、神経性の腹痛や頭痛などにも効果的です。

膀胱炎や尿道炎など泌尿器形の炎症にも有効とされ、利尿作用もあるため毒素や余分な水分の排出に役立ちます。発汗作用もあるので風邪の時にも良いかもしれません。

他にも、ヤロウには女性ホルモンに似た作用を持つ成分・ステロールが含まれており、生理不順や生理痛、月経前症候群(PMS)などホルモンが影響する症状にも働きかけます。創傷や重い生理の時に役立つ止血効果もあるとされます。

渋味成分のタンニンによる抗菌・殺菌作用、収れん作用なども、上記の様々な症状に同時に働きかけます。

適応

食欲不振、消化不良、胃炎、生理痛(痙れん性疼痛)、難治性外傷など

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 消炎作用
  • 鎮静作用
  • 鎮痙作用
  • 健胃作用
  • 収れん作用
  • 利胆作用
  • 止血作用
  • 創傷治癒作用

禁忌・副作用

  • 頭痛などが起きることがあるため、多量摂取は避けるようにします。
  • 妊娠中の方、日光過敏症、キク科アレルギーの人は使用に注意。

安全性・相互作用

安全性クラス1…適切な使用において安全
相互作用クラスA…相互作用が予測されない
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

 

ヤロウの主な使い方

使用部位
  • 葉、花、根

 

ヤロウは主にハーブティー、薬用酒、料理、観賞用に使用されています。

料理

ヤロウの若葉は生食でき、刻んでサラダに加えることができます。茹でてお浸しにするほか、イギリスでは湯がいて(アク抜きのため、熱湯に短時間だけさらす)から、バター炒めにされました。

リキュールやのど飴の香りづけにも利用でき、スウェーデンではビールを作る際に利用されることがあるそうです。

ハーブティー

食後に胃の調子が良くないときや、風邪の時、生理がつらいときなどに飲みたいハーブティーです。

熱さましとして飲用されてきたティーで、症状に応じてセージやタイム(殺菌、のどの痛みなど)、マーシュマロウ(のどが渇いて痛い時)、エルダーフラワー(発汗・解熱に〇)などがブレンドできます。

薬用

外用では葉の浸出液(ティー)で冷湿布を作ると、傷口の消毒に使えます。軟膏などに加工しても同様の効果が現れます。また、古くは葉をそのまま患部に当てて、止血の特効薬に使われていました。

髪の毛の成長を促す働きがあり、コンディショナーなどのヘアケア用品に含まれることもあります。

その他

ヤロウは弱った植物のそばに植えると回復をサポートするコンパニオンプランツの1つで、根から出る分泌液が植物の病気を治して虫の食害を防ぎます。 草木染の染料にもなり、媒染材によって黄色や緑色の染料が抽出できます。

味・香り

ピリッとした香りで、やや苦みがある味。

ヤロウの基本情報

学名Achillea millefolium
英名yarrow
和名・別名セイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)
科名キク科ノコギリソウ属
分類多年草
原産地ヨーロッパ、アジア、北米
使用部位葉、花、根
主要成分ビタミン、ミネラル類、フラボノイド、タンニン、アスパラギン
作用消炎、鎮静、鎮痙、健胃、利胆、抗菌、収れん、止血、創傷治癒
適応食欲不振、消化不良、胃炎、月経痛(痙れん性疼痛)、難治性外傷

語源・由来

属名のAchilleaは、古代ギリシャの医師アキレス(Achilles)にちなんだため、ギリシャ神話の英雄アキレスがトロイ戦争でヤロウを利用して兵士の傷を癒したからなど、由来については諸説あります。種小名のmillefoliumは「たくさんの葉を持つ」という意味です。

ヤロウは種小名のmillefolium(ミルフォリウム)を省略した、「milfoil(ミルフォイル)」の名で呼ばれることもあります。

英名のヤロウ(yarrow)は、古英語の名前であるgearweと、オランダ語のyerwが訛ったものです。

歴史・エピソード他

ヤロウは古くから薬用されてきたハーブで、先史時代の洞窟から大量の花粉が見つかっています。

もともとヨーロッパ原産のハーブですが、アメリカに渡った開拓者たちもヤロウ栽培して薬用しました。ネイティブアメリカンはヤロウを煎剤や浸剤にして、風邪や胃腸の不調に使ったといわれます。

日本には観賞用として1887年に伝わり、小石川植物園で栽培されましたが、丈夫で繁殖力が強いため、野生化もしています。

古代から止血薬として活用されていた

ギリシャ時代には止血剤・傷薬として多用されていました。

ギリシャ神話では、アキレスがトロイ攻撃の際にパリスの毒矢でかかとを負傷したとき、愛の女神アフロディーテがアキレスにヤロウを勧めて、治療を促しています。また、アキレスがミュシア王テレフォスの傷を治すのにヤロウが利用されたと伝えられます。

鉄製の道具による負傷に良いとされ、「戦士の傷薬」「大工の草」と呼ばれて、親しまれていました。

中世ヨーロッパでは修道院の庭などで栽培され、12世紀ドイツの薬物療法家であるヒルデガルトはヤロウを「ヤロウには傷に対して特別な良質の力がある」ハーブとして重要視したそうです。

神秘的な効果も信じられていた

また、中世のころになると、ヤロウは神秘的な力を持ち、悪魔を払い予言を与えると考えられました。

ケルトのドルイド教では、茎や葉を天候を占うために使ったといわれます。

一方で愛情を与えるハーブとされ、ヤロウのブーケを結婚式の飾りつけに使うと、「結婚後の7年」は幸せな生活が続くとされています。

 

参考文献

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