マジョラムの特徴・形状
- 香りが強く、魚や肉の臭み消しに活躍する
- 自律神経の乱れを整える働きがあるとされる
- 抗菌作用や抗ウイルス作用も期待できる
マジョラムはシソ科ハナハッカ属の多年草で、地中海沿岸が原産地です。
和名ではマヨラナとも呼ばれ、ワイルドマジョラムと呼ばれるオレガノに対して、スイートマジョラムと呼んで区別します。
オレガノに次ぐ香りの強いハーブですが、繊細な風味で尊ばれてきました。
植物的な特徴
日本では季候の関係で一年草になることがあり、草丈20~50cmほどに育ちます。茎の基部は木質で、断面はほぼ四角形です。葉は長さ1~2.5cmくらいの卵形で、縁は鋸歯(ギザギザ)がなくつるりとしています。葉が茎に対生するので、植物を上から見るとひし形に見えます。
6~7月になると花茎の先に、白、桃、紫色などの小さな唇形の花が密集して咲きます(円錐~総状花序)。花の大きさは1.5~2㎝ほどで、花序がこぶ状になっていることから「ノッテッドマジョラム(結び目のあるマジョラム)」とも呼ばれています。
効果・効能
マジョラムの主な作用には鎮静、抗炎症、血行促進、肝機能亢進などの作用があり、古くから強壮剤として利用されてきました。
マジョラムにはテルピネン-4-オールや酢酸リナリルなど、鎮静系の精油が複数含まれています。自律神経の乱れを整えて気分をリラックスさせる働きがあるので、神経性の頭痛・腹痛がある時や、不眠の際にハーブティーなどを飲むと心が落ち着きます。
さらに、精油成分には抗炎症作用や抗菌・抗ウイルス作用を持つものもあるので、風邪や消化器系疾患の各症状を改善させるのにも役立ちます。体を温めるハーブとしても知られており、血行促進作用により冷えや、関節痛、リウマチの痛みなどを緩和してくれます。
また、マジョラムの苦味は胆汁の分泌を促して肝臓を強化するので、毒素排出にも有効です。そのほか、精油成分のテルピネオールには老化防止などの効果があるといわれています。
頭痛、不眠、リウマチ痛、関節炎、風邪、呼吸器疾患など
主な作用
- 抗炎症作用
- 鎮痙作用
- 鎮静作用
- 強壮作用
- 利尿作用
- 肝機能亢進作用
禁忌・副作用
- 妊娠中は精油の使用を避けます。
- 使用すると眠気がでてくることがあります。(車の運転前などは注意)
- 通常量の使用であれば副作用などの心配はほぼありませんが、心臓に疾患のある人は注意が必要です。
安全性・相互作用
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
マジョラムの主な使い方
- 葉、花
マジョラムは主にハーブティー、料理、精油に使用されています。
料理
香りが強いので、香辛料として魚料理や肉料理などの臭い消し、卵料理や豆料理の味付けなどに使うことができます。長時間加熱すると香りが失われるので、出来上がる5分~10分前に加えます。
特に肉料理と相性が良く、パテやローストのほか、ドイツではソーセージハーブと呼ばれ、肉料理の加工では一般的なハーブの1つです。
ハーブティー
夜寝る前にティーを飲むと不眠に効果的です。不眠や緊張がある時、イライラする時は鎮静系ハーブのパッションフラワーやバレリアン、血行を良くしたい時はローズマリーなどが組み合わせられます。
精油
マジョラムの葉からは精油も採れます。鎮静作用、血行促進作用、血圧降下作用などがあり、筋肉痛やリウマチ痛、神経性の頭痛や腹痛に効果があるといわれます。ハーバルバスなどで利用することもできます。
その他
抗菌効果があるので、ティーでうがいをすると、口内炎やのどの痛みを抑えて、風邪・感染症予防に役立ちます。香りがあるのでサシェやハーブピロ―にも使えます。
味・香り
味はほろ苦さとスパイシーさがあり、香りは上品な甘い香りがする。
マジョラムの基本情報
学名 | Origanum majorana |
英名 | Marjoram、Sweet marjoram、Knotted marjoram |
和名・別名 | スイートマジョラム、マヨラナ |
科名 | シソ科ハナハッカ属 |
分類 | 多年草 |
原産地 | 地中海東部沿岸 |
使用部位 | 葉、花 |
主要成分 | 粘液物質、苦味質、タンニン、精油(テルピネオール、テルピネン、テルピネン-4-オールや酢酸リナリルなど) |
作用 | 抗炎症、鎮痙、鎮静、強壮、利尿、肝機能亢進、抗菌、抗ウイルスなど |
適応 | 頭痛、不眠、リウマチ痛、関節炎、風邪、呼吸器疾患 |
語源・由来
属名のOriganumはギリシャ語のoros「山」とgnos「喜ぶ」が組み合わさったもので、「山の喜び」という意味があります。種小名のmajoranaは「大きい」という意味のmajorからつけられました。
歴史・エピソード他
マジョラムの歴史は古く、紀元前2000年ごろの古代エジプト時代には既に栽培が始まっていました。ミイラづくりをする際の香料に利用され、冥界の神オシリスに捧げられたといわれます。
古代ギリシャ時代には薬用や料理にも活用されており、ギリシャ神話にてマジョラムの甘くてスパイシーな香りは、愛と美の女神アフロディーテから与えられたものと伝わります。
この伝説から、古代ギリシャ・ローマでは「幸せ」「愛」「多産」を象徴するハーブとして好まれ、結婚式の際に新郎新婦がマジョラムで作った冠を載せる習慣がありました。スピリチュアル的にも愛情や幸福、健康や金運などのパワーがあるとされています。
また、ギリシャ時代は墓地に植えられたハーブの1つで、植えたマジョラムが良く育つと黄泉の国から使いが来て、かの地で死者は幸福に暮らしていると信じられました。
中世の修道院では、性欲抑制や精神的な症状の治療に用いられており、イギリスでは中世、ホップが使われるまではマジョラムがビールの苦み成分でした。
日本には明治初めに渡来しています。