ジャーマンカモミールの特徴・形状
- 定番ハーブの1つで、花からは甘いリンゴの香りがする
- 精神を落ち着かせ胃の不調を助ける
- 女性特有のトラブルに効果のある「マザーハーブ」
ジャーマンカモミールは、ヨーロッパ全域~アジア西部を原産地とするキク科シカギク属の1年草で、秋まきに限り2年草になります。
ジャーマンカモミールには、弱った植物をよみがえらせる「コンパニオンプランツ」としての性質があります。
カモミールの仲間は種類が多くおよそ50種類が確認されていますが、もっともよく知られるのがこのジャーマンカモミールで、日本でも定番ハーブとしてハーブティーなどに人気の高い植物です。
植物的な特徴
草丈は60㎝ほどで、葉の長さは10~15cmほどで、切れ込みのある葉は2~3回羽状複葉(小葉が葉軸の左右に生えて、鳥の羽のような形をしている)の形をしています。春4~6月になると、2~3cmの白い花をロゼット状に咲かせます。
花は舌状花が白で、盛り上がった筒状花(花の中心)が黄色をしており、リンゴのような芳香があります。開花期になったら午前中に花を摘んで収穫します。
効果・効能
ジャーマンカモミールはアレルギー、不眠、頭痛、便秘、月経前症候群(PMS)など様々なシーンで利用されるハーブですが、特に炎症を抑える作用と、痙攣を鎮める作用に優れています。
ジャーマンカモミールの主な働き
炎症を抑える働きがある
ジャーマンカモミールにはカマズレンという精油成分が含まれており、カマズレンの色素成分には腫れを鎮める消炎作用があります。
同じく精油成分のα-ビサボロールは抗炎症作用、胃粘膜保護作用、抗菌作用を持ちます。この2つの精油成分とマトリシンが、炎症を鎮めるよう働きかけ、胃炎や胸やけなどの消化器トラブルの改善を促します。
カマズレンにはほかの作用もあり、かゆみを抑える働きがあります。
胃腸の痙攣を抑えたり、心をリラックスさせる働きがある
含有成分のアピゲニンには強い鎮痙作用があり、胃腸の痙攣や胆石痛などに効果が期待できます。
また、アピゲニンには神経の興奮を鎮める作用があるため、不眠の時や神経性の頭痛がある時に、ジャーマンカモミールのハーブティーを飲むと落ち着きます。
女性疾患に役立つ働きがあるといわれる
女性ホルモンのエストロゲン様作用が含まれるため、女性特有のトラブルにも有効で「マザーハーブ(母の薬草)」とも呼ばれます。
その他の働き
ジャーマンカモミールの作用はまだまだあって、フラボノイド類による利尿作用や発汗作用、タンニンによる抗菌作用、収れん作用や、粘液質による粘膜保護作用などがあります。
血行を良くし発汗させるので風邪の症状改善に、肌をひきしめて美肌にetc、様々な活用ができます。
ストレス性の不安、不眠、風邪、頭痛、消化器の不調、月経前症候群、胃もたれなど
主な作用
- 抗炎症作用
- 消炎作用
- 抗アレルギー作用
- 鎮静作用
- 鎮痙作用
- 抗菌・抗真菌作用
- 抗酸化作用
- 抗腫瘍作用
- ホルモン様作用
禁忌・副作用
キク科アレルギーのある人は使用しないようにします。
安全性・相互作用
安全性 | クラス1…適切な使用において安全 |
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
ジャーマンカモミールの主な使い方
- 花
ジャーマンカモミールは主にハーブティー、精油、薬用、観賞用に使用されています。
ハーブティー
スーパーでも販売されている定番のハーブティーです。体を温めるので、風邪の症状や冷え性の改善に役立ちます。
食べ過ぎた後に飲めば胃の調子を整え、不快感を鎮めてくれます。牛乳と相性が良いため、ミルクティーとして飲むのもおすすめです。
リンゴの香りはテルペンアルコールという成分によるもので、味や香りに特徴のないハーブも、ジャーマンカモミールとブレンドすると調和されておいしく飲めるようになります。
薬用
開花期に花を摘み取り、陰干ししたものは、漢方で生薬「カミツレ花」として利用されることがあります。
民間療法では風邪の初期症状、下痢、胃腸炎などの疾患に、煎じたお茶を食間3回に分けて服用します。
その他
ハーバルバスでジャーマンカモミールを利用すると、疲労回復に加えてリウマチ、神経痛が和らぎます。
ハーブティー・入浴剤で使用した花を土に埋めると、「コンパニオンプランツ」としての効果が発揮され、植物の健康や害虫予防などに役立ちます。園芸療法でよく使われるハーブです。
味・香り
リンゴのような香りでフルーティーな味。
ジャーマンカモミールの基本情報
学名 | Matricaria recutita |
英名 | chamomile |
和名・別名 | カミツレ(加密列) |
科名 | キク科シカギク属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | ヨーロッパ全域~アジア西部 |
使用部位 | 花 |
主要成分 | フラボノイド(アピゲニン、カマズレン、クエルセチン)、タンニン、粘液質、セスキテルペンラクトン類(マトリシン)クマリン類、精油(α-ビザボロール)など |
作用 | 抗炎症、消炎、抗アレルギー、鎮静、抗菌、抗真菌、抗酸化、抗腫瘍、抗ヒスタミン、ホルモン様など |
適応 | ストレス性の不安、不眠、風邪、頭痛、消化器の不調、月経前症候群、胃もたれなど |
語源・由来
学名のMatricariaはmatrix「子宮」とmather「母」から派生し、 種小名のrecutitaは「丈の低いリリンゴ」の意味があります。
1世紀頃のギリシャの薬種書に記されている「地面のリンゴ」が由来の基になりました。
和名のカミツレはオランダ語名の「カーミレ(kamille )」に、漢字で「加密列」「加密爾列」と表現したことが発端です。
歴史・エピソード他
かなり昔からカモミールの薬効が知られており、4000年前の古代バビロニアの頃には既に薬用されていました。
ヨーロッパやアラビアで安全な薬として重宝され、特にヨーロッパでは最も歴史のある民間薬とされています。
古代エジプトでは高く評価され太陽神ラーに捧げられました。また、貴族の間では美容にも活用され、クレオパトラは美肌やリラックス効果のため、入浴時にジャーマンカモミールを入れたといわれています。
古代ギリシャ人はその特徴的な芳香から、ジャーマンカモミールを「大地のリンゴ」と名付け、ローマ人はカモミールを飲み物やお香の風味づけに用いました。
ドイツ中世の聖ヒルデガルトは疝痛に対する外用を勧め、軟膏にして利用しました。また、ホップが使用される前は、ビールの風味付けに利用されていたそうです。
1525年に書かれた『バンクスの本草書』には「肝臓の痛みや頭痛、偏頭痛などに効能があり、ワインと共に飲むと良い」と記載があり、17世紀のハーバリストであるニコラス・カルペパーは「花から作った油を患部に塗ると汗をかく。粘液・憂鬱・腸の炎症などの悪寒に効果があり、わき腹や肝臓・膵臓の以上にこれ以上有効な薬はない」と述べています。
日本には江戸時代にオランダやポルトガルから伝わり、鳥取県や岡山県で栽培が始められました。植物図鑑『草木図説』にもジャーマンカモミールが記されています。
児童文学のピーターラビットのお話に登場することでも有名です。