オートの特徴
- オートミールの原料になる植物
- 栄養価が高く、ビタミン類やミネラル類が豊富
- 「神経のビタミン」と呼ばれ、心の疲労回復に良い
オートムギ(オーツ麦、オート、燕麦)はイネ科カラスムギ属の一年草。
原産地はチグリス川とユーフラテス川流域の中央アジア、アルメニア地域といわれており、4000年以上前から食用されてきた植物のひとつです。
「オート麦」はオートミールの原料になることで有名ですが、有用な植物・ハーブとして扱われることもあります。オートミールとして食用できるのは種子の部分。ミネラルやタンパク質、食物繊維が豊富に含まれています。
和名では燕麦または円麦(読みはどちらもエンバク)といい、穂の形が燕に見えることが由来となっているそうです。
植物の特徴
植物としては草丈約60~150㎝、形はイネに似ており細長い葉が特徴。穂の長さは20~25㎝ほどに育ち、春または秋に収穫を行います。
効果・効能
オートムギはビタミン類やミネラル類、食物繊維が豊富に含まれており、栄養価そのものが高いのが特徴ですが、ハーブとしては心身の疲労回復に役立てられています。
オートムギには、脳や中枢神経系の鎮静、鎮痛、興奮に良い効果を持つアベニンというたんぱく質が含まれているため、神経系を強化(強壮作用)し抑うつ状態にも良いといわれています。
また、「神経のビタミン」と呼ばれるほどビタミンB₁が豊富なのも特徴。脳のエネルギー切れはビタミンB群の不足が原因となることがあるため、オートムギは集中力を高め、ストレスが起こる状況を回避するのに役立ちます。
その他、コレステロール値を下げるリノール酸が含まれているため、心臓病や循環器系の病気予防にも活用できます。鉄、マグネシウム、亜鉛、銅、マンガンといったミネラル類の不足を補うほか、利尿作用で毒素の排出も目指せます。
不安、神経衰弱、虚弱、眠気、だるさ、貧血、便秘
主な作用
- 滋養強壮作用
- 鎮静作用
- 利尿作用
- 緩下作用
- 抗ストレス作用
禁忌・副作用
特に知られていません。食物繊維が豊富なので食べ過ぎるとおなかが緩くなります。
安全性・相互作用
相互作用 | クラスA…相互作用が予測されない |
安全性 | クラスⅠ…適切な使用において安全 |
味・香り
ほのかに草の香りがあり、クセのない味
オートムギの主な使い方
- 地上部(根以外)
オートムギは主に料理、ハーブティーに使用されています。
料理
オートミールとして小穂(種子)を押しつぶして乾燥させたものは食用として利用できます。オートミールはグラノーラやミューズリー、ヨーグルトのお供として、ドライフルーツやナッツと組み合わせると朝食・間食時においしく食べれます。
食物繊維はなんと小麦の約5倍、米の約10倍の量が含まれているそうです。
ハーブティー
ハーブティー用のオートムギも販売されています。こちらは小穂だけでなく茎や葉などの部分を使用することもあり、草の香りがするのが特徴です。シングルでも普通に飲めますが、香りが欲しいときはジャーマンカモミールやレモン系のハーブをブレンドすると飲みやすくなります。
その他
オートムギは海外輸入ものも多いですが、日本では北海道で生産が行われており、オートミール用の出荷もされています。日本では食用オートムギの栽培があまり普及しなかった歴史があり、主に飼料や緑肥用、牧草に用いられます。
オートの基本情報
学名 | Avena sativa |
英名 | Oat |
和名・別名 | エンバク(燕麦)、オートムギ、オーツ麦、マカラス麦 |
科名 | イネ科、カラスムギ属 |
分類 | 一年草 |
原産地 | 地中海沿岸、三日月地帯(ペルシア湾~チグリス川・ユーフラテス川、シリア、パレスチナ、エジプト)、中央アジア |
使用部位 | 地上部(根以外) |
主要成分 | アルカロイド(グラミン)、サポニン、多糖類(β-グルカン)、クロロフィル、ミネラル(ケイ素、鉄、マンガン、亜鉛)など |
作用 | 滋養強壮、鎮静、利尿、抗ストレス、緩下 |
適応 | 不安、神経衰弱、虚弱、タバコ中毒、眠気、だるさ、貧血、便秘 |
語源・由来
属名のAvenaの由来はよくわからなかったのですが、スペイン語ではオートミールを指す言葉です。 種小名のsativaは「栽培されている」という意味で、古代からオートムギが栽培されていたことに由来します。
和名の「燕麦」は熟した小穂の先が2つに割れており、それがツバメの尾に見えることからこの名が付きました。カラス麦と呼ばれることもありますが、「人間の食用には向かない」という意味で動物の名がつけられたものです。
歴史・エピソード他
アマやオオムギが紀元前9500年前ごろから栽培されていた反面、オートムギの栽培は比較的遅く約 2000年ほど前に家畜の飼料用として栽培が始まったと考えられています。食用としての栽培はさらに遅く紀元前600年頃とされています。
原産地については諸説ありますが、オートムギはローマ帝国の中央アジア進出によってローマにも伝わったといわれています。寒冷地でも育つため北欧やスコットランドなど機構の厳しい土地では主要穀物とされ、スコットランドでは5世紀ごろから食されていた記録が残っています。
薬効については古くから知られており、ドイツ修道院のヒルデガルトもオートムギを「幸福で健康にする」食材として紹介しました。
オートミール(押し麦のフレーク)が誕生したのは1870年代のアメリカで、一般に普及したのは19世紀末以降です。また、19世紀にオートムギは阿片(モルヒネ)の中毒患者の治療に用いられ、1970年代にはタバコ中毒の依存症解消のために使用された歴史があります。
日本には明治時代にヨーロッパからもたらされ、イギリスのライト卿によって北海道での試作が行われました。