エルダーフラワー|ハーブの特徴・効能/効果・主な使い方・歴史 学名の由来や味・香りについて

エルダーフラワー|植物の特徴・効能/効果・主な使い方・歴史
目次

エルダーフラワーの特徴

  • クリーム色の花が咲く落葉小高木
  • 風邪やアレルギー症状に効く「インフルエンザの特効薬」
  • 神話や伝説に登場し、魔術にもかかわりが深いハーブ

ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ周辺の地中海沿岸部に自生する、ニワトコ属の落葉小高木~低木です。

別名をセイヨウニワトコといい、日本やアジアに自生するニワトコとは別の種類。

効能の多さから、ヨーロッパでは「田舎の薬箱」「万能の薬箱」と呼ばれ、風邪予防や花粉症などのアレルギー対策に用いられています。

植物の特徴

エルダーフラワーは高さ3m~10mに育つ木で、茎には太い随があり、幹にはひび割れが入る特徴があります。

葉は1~3の対生で、鳥の羽根のような形です。毎年6~7月になると、白~クリーム色小さな花が放射状に咲き(散房花序)、秋になると黒味のある実がなります。

花はマスカットのような強い香りを持っているため、精油が採れます。

効果・効能

エルダーフラワーはフラボノイド成分が豊富なハーブの代表格で、優れた発汗作用、利尿作用を持ちます。

2つの働きの内、発汗作用はクロロゲン酸などのフェノール酸、利尿作用はカリウムによるものと考えられています。

主にのどの痛み、鼻水・鼻づまりなどのカタル症状、関節リウマチ、坐骨神経症の治療に用いられており、体内の毒素を排出してむくみを解消したい時にも効果的です。

エルダーフラワーの抗アレルギー作用は特に花粉症の緩和に良く、エルダーに含まれる粘液質が、粘膜を浄化・保護してのどの痛みを解消します。これらの効能からエルダーは「インフルエンザの特効薬」と呼ばれています。

その他フラボノイドには、抗酸化作用、デトックス作用、ストレス緩和作用などがあります。神経を鎮め不安を和らげる働きを持つので、抑うつや不眠にも有効とされています。

適応

かぜやインフルエンザの初期症状・花粉症・鼻づまり・関節炎・坐骨神経症・抑うつなど

効果については人によって感じ方が少しずつ異なります。ハーブの使用について、妊娠中・授乳中、持病がある、薬を常用しているなどの場合、注意が必要になることがあります。

主な作用

  • 発汗作用
  • 利尿作用
  • 解熱作用
  • 鎮静作用
  • 去痰作用
  • 消炎作用
  • 抗アレルギー作用

禁忌・副作用

エルダーの種子には毒性があるため使用を避けます。熟す前の青い果実や葉も食べないようにします。

安全性・相互作用

相互作用クラスA…相互作用が予測されない
安全性クラスⅠ…適切な使用において安全
『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』より

エルダーフラワーの主な使い方

使用部位
  • 果実

 

エルダーフラワーは主にハーブティーやコーディアル、料理、薬用、魔除けなどに使用されています。

飲み物

エルダーはハーブティーで飲むのが最も手軽です。花と果実どちらも使用できますが、基本的には風邪やアレルギー対策に花の方を用います。

ティーは感染症予防のためのうがい薬にも使用できます。その他、薬用にエルダーをビネガーやワインに漬け込むこともあります。

すっきりとした香りで鼻詰まりを緩和させるペパーミントや、風邪の改善に効果的なリンデンなどがブレンドしやすいです。

エルダーフラワー・コーディアル

エルダーフラワーを用いたハーブドリンクとして有名なものに、イギリスの「エルダーフラワー・コーディアル」があります。

エルダーフラワーと砂糖、レモンなどを混ぜて作るコーディアルは、家庭の味として親しまれています。

料理

熟した果実(エルダーベリー)にはビタミンA、ビタミンC、アントシアニン、クエン酸などの栄養素が含まれており、美肌や美白効果に効果があります。

ジャムやソース、シロップ、ゼリーなどに加工することがでおいしくいただけます。

ちなみに、未熟の果実には毒性があり下痢などの症状が現れる可能性があるため、完熟したもののみを使用しましょう。エルダーベリーに、はちみつやレモンを加えるとフルーティーになります。

薬用

抗炎症作用があるため、葉の煎じたものは皮膚の炎症や湿疹、火傷などに効果のある外用薬になります。

花の抽出液を使った化粧水は、ニキビや吹き出物といったアレルギー症状の改善に役立つといわれます。

その他

粘液質が含まれるので、保湿を目的とした化粧品の材料や、パック剤に使われることがあります。

味・香り

花はレモンとマスカットが混ざったような風味で、やさしい味わい。木部と葉はジャコウの香りがある。

エルダーフラワーの基本情報

学名Sambucus nigra
英名elder、black elder
和名・別名セイヨウニワトコ
科名レンプクソウ科、ニワトコ属
分類落葉低木または小高木
原産地ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ
使用部位
主要成分精油、フェノール酸(クロロゲン酸)、フラボノイド配糖体(ルチン・クエルシトリン)、粘液質、青酸配糖体、ミネラル(特にカリウム)
作用発汗・利尿・抗アレルギー・抗炎症・抗ウイルス・去痰・収れん・粘液の浄化
適応風邪やインフルエンザの初期症状・花粉症などのカタル症状

語源・由来

学名のうちSambucusは、ギリシャ語のsambuce「古代の楽器」に由来し、ラッパの一種の楽器がこの木で造られました。種小名の nigraは「黒の」という意味で、エルダーの熟した果実が黒っぽい色になるため名づけられました。

エルダーフラワーの「エルダー」は、アングロ・サクソン語で「炎」を意味する「エルド」が基になっています。日本名のニワトコは「接骨木」とも書き、枝や幹を煎じたものを骨折の治療の際に、湿布剤に用いたためこのような名が付いたそうです。

歴史・エピソード他

古代エジプトの頃から薬草としての効能が知られており、食用としては石器時代から利用されてきたハーブです。ヨーロッパの伝統医学だけでなく、アメリカ先住民の間でも用いられてきました。

古代ギリシャ時代に活躍した医学の祖・ヒポクラテスや、ガレノス製剤で知られる医者のガレノスが処方したという記録が残されています。その後の古代ローマでは、エルダーの果実を使って髪を染めたり乾燥させて食べたそうです。

イギリスでは、エルダーフラワーは初夏の訪れを告げる花として知られ、エルダーベリーは秋の訪れを知らせます。

スピリチュアル・魔術とのかかわり

また、エルダーは魔術やスピリチュアル方面でも活用されてきたハーブです。

魔女が好む木とされる一方、魔除け効果のために家の近くに植えられました。そのため、イギリスなどの古家の近くにはエルダーの木が植えられていることがあります。

枝を切ると赤い樹脂が流れるため魔女や精霊が住んでいるといわれ、エルダーの木を切ることは忌避されていました。

ヨーロッパ各地にこのような伝説が数多く残されており、イギリスの児童文学『ハリー・ポッター』シリーズで、主人公のハリーが持っている魔法の杖は、エルダーの木から作られています。

参考文献

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